WiMAXは主導権を失わずに提携を進める――アッカの木村社長

アッカ・ネットクースの木村社長は、WiMAXの事業免許獲得に向けて他社との提携を推進する一方、事業の主導権を確保する考えを示した。

» 2007年08月15日 20時20分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 アッカ・ネットワークスは8月15日、2007年12月期の中期連結業績を発表した。下期はWiMAXの事業化を推進するとともに、企業向けでは、回線サービスでの新メニュー投入とソリューションサービスの強化に取り組む。

8月に代表取締役社長兼CEOに就任した木村正治氏

 中期連結業績は、売上高181億4200万円(前年同期比8.4%減)、営業利益11億6100万円(同9.9%増)、経常利益11億6300万円(同10.4%)、当期純利益は11億5200万円(同406.1%増)となった。

 主力のDSLサービスは、個人を中心に加入者の減少が続くものの、IPSとの共同キャンペーン実施などの施策で、解約率が前年同期比0.1%改善された。また光ファイバサービスは企業と個人の加入件数が大幅に増加し、主力事業へ成長しつつあるという。

 このほか、NTTへ支払う中継回線使用料や設備費用、カスタマーサービスの外部委託化などのコスト削減を図ったことにより、売上原価率は前年同期比3%改善された。この結果、中期連結業績は減収増益となった。

広く提携するも主導権は確保する

 2.5GHz帯を利用した次世代高速無線サービスでは、総務省が9月10日から免許申請の受け付けを開始する。WiMAXでの参入を目指す同社は、6月21日に事業企画の子会社「アッカ・ワイヤレス」を設立(関連記事)しており、免許申請の準備を進めている。

 木村正治代表取締役社長兼CEOは、進捗状況について説明を行い、事業初期に必要な資金の調達状況とサービス展開の基本方針を明らかにした。資金面では6月末時点で約65億円の流動性資金を確保しているが、さらにネットワーク資産の売却などで約43億円、銀行借入枠で約100億円を調達する見込みで、「単独での事業展開に必要な初期予算は確保できた」(木村社長)という。

WiMAXの開始当初は個人の無線データ通信ニーズを取り込む

 サービス展開では、開始当初から2010年ごろまでは個人を中心としたデータ通信サービスに注力し、WiMAX対応のPC機器やデータ通信端末の直販も行う。また、2011年以降にMVNO(仮想移動体通信事業者)などとの連携で、車載向けやVoIP、コンテンツ配信などのサービスを開始する計画だとしている。

 今回の次世代高速無線サービスの事業免許は、総務省が第3世代サービスを行う既存の携帯電話事業者からの単独申請を認めず、認定された企業への出資比率も3分の1以下にするよう求めている。

 このため、NTTドコモやKDDIでは他社との提携で参入を目指しており、ソフトバンクモバイルとイー・アクセスはWiMAX事業化の共同研究に着手する(関連記事)など、免許申請に向けて連携を模索する動きが加速している。

 木村社長は、「われわれはDSLと光の回線、それに課金・決済のノウハウを持っているが無線は経験が足りない。また、WiMAXは新しい社会インフラとして通信業界以外からも非常に注目されている」と話し、複数の企業との提携を検討していることを明らかにした。

 一方で、「WiMAXは(さまざまなレイヤで複数の企業がサービスを提供する)オープンなビジネスモデルが求められ、われわれの計画もオープン型を目指している。それが失われては本末転倒だ」とも述べ、他社からの出資を得られた場合でも経営権を確保していく考えを示した。

下期は企業向けに注力

 WiMAX以外では、下期は企業向けの回線サービスとソリューション事業に注力する。特に光ファイバサービスは、DSLサービスよりもARPU(ユーザー単価)が2倍以上の2万3926円となり、下期は上期比5割増の新規の企業ユーザー獲得を狙う。

 このため、回線サービスではDSLと光ファイバを効率的に組み合わせたバックアップ回線サービスを推進するほか、通信速度と料金を抑えた光ファイバサービスも投入。「DSLと光ファイバでは通信速度と料金に開きがあるが、その間を埋めるために7〜8Mbps程度ながらリーズナブルに利用できる光ファイバサービスを導入する」(木村社長)。

企業向けソリューションサービスの注力分野

 ソリューション事業では、課金・決済とコンテンツ配信、設備の保守・点検などでのリモートメンテナンス分野に集中して、他社とともにサービスを提供していく。すでに決済・課金分野では、中小の小売業向けに販売管理支援サービスを提供するNTTドコモとカシオ計算機の合弁会社「CXDネクスト」(関連記事)に対し、店舗のPOS端末とCXDネクストのサーバをつなぐネットワークサービスを提供する。

 ソリューション事業のパートナー数は6月末時点で15社となり、「通信を用いるソリューションを広げるために、さらに拡大させていく」(木村社長)としている。

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