施主を主役にするプロジェクト管理ツール導入事例(2/2 ページ)

» 2008年05月27日 09時30分 公開
[ITmedia]
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施主・建築家・施工店の3者が集う「会議室」

 ウィークエンドホームズ社の事業は年々拡大を続けている。しかし拡大にともなうCSの低下は避けたい。そこで同社は早くから社内および顧客・関連業者の情報共有に取り組んできた。共有する情報量をさらに増やし、施工過程における不透明性を払拭したのが、今回紹介するプロジェクト管理ツールだ。このツールは約1年半をかけて同社と協力会社が協同製作したオリジナルツールである。このツールは2006年度のCRMベストプラクティス賞(CRM協議会主催)を受賞している。

 注文住宅の場合、施主は夢のマイホームを完成させるため、微に入り細にわたる要求をする。人生最大の支出になるのだから当然の心理だ。しかしいざ建設が始まると、施主は地鎮祭、上棟式程度しか家づくりをじっくり見る機会はない。いわば蚊帳の外に置かれてしまうのだ。

 また、現場では建築家の思惑と施主の要望を実際の作業と刷り合わせる必要がしばしば生ずるものの、難しいのが現実だ。

「結局、コミュニケーションなのです」とシステムを構築した関連企業のウィークエンド・エンジニアリングの取締役・西谷麻央氏は話した。「品質を維持しながらコストパフォーマンスを高めるには施主であるお客様・建築家・施工店すべての了解が必須です。そこで、設計段階から施工店も一緒に考えていただき、ともにつくる体制を強固にしようというのが、今回のツールを開発した目的です」

 家づくりの工程は建築法に基づく審査により監理される。しかし、何がいつまでに行われ、どう仕上がるのか、施主には理解できないことが多い。「そこで、法律で定められたタイミングの写真撮影だけでなく、弊社独自のマニュアルによるタイミングの写真撮影を施工店に依頼してアップロードしています。お客様はこれを見て、自分の家が今、どうなっているのかを確認でき、施主としてチェックしなければならない項目も速やかに回答できます」(西谷取締役)

 今回のプロジェクト管理ツールはASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)を利用しているため、各自のインターネット環境はパソコンと起動ソフトと回線さえあればいい。アクセス権は関係者のみにあるので他者に閲覧されることもない。不透明なものを透明にしようという同社の姿勢はコスト面にも反映されている。また最近では、工事進行を閲覧するウェブページ上に住宅部材などのバナー広告を掲載することもあるという。

 一般に住宅メーカーの建築費は工事費のほかに営業担当者の人件費、住宅展示場の建築・維持運営費、広告宣伝費なども含まれる。また最近は、わざわざ別予算を支払って第三者に現場をチェックしてもらう「インスペクション業務」の利用者も増えている。

 そんな状況に対してウィークエンドホームズ社は資材費・工事費・利益も開示する原価公開体制を原則にしている。こうした同社の取り組みにより、注文住宅はもはや高嶺の花ではなくなりつつある。

住宅建築プロジェクト管理ツールを使った情報共有

導入効果を聞く 作り手の利便だけでなく、施主の側に立ったシステムを

ITmedia 注文住宅の分野で情報を公開する利点は施主以外にもありますか。

西谷 まず建築家は設計コンペの段階で多数の事例を学ぶことができます。また今回のプロジェクト管理ツールの導入により施工店が施主様の声をダイレクトに知ることができるようになったことも大きいでしょう。

ITmedia 施工店から「手間が増えた」との声はあがりませんでしたか。

西谷 実際に活用すると、施主様の決済をあおぐ場面などで、すみやかに回答が得られるため効率がよくなったようです。今では施工店も積極的にこのツールを使っています。「一度見てみたい」という施工店からの問い合わせも増えています。

ITmedia 施主や建築家に見られていることが現場の良い刺激になったのですね。

西谷 そうです。施主が見ていると、現場のやる気がこんなに高まるのかと私たち自身も驚きました。また建築家と施工店から施主になされるべき説明責任が、どの時点で、どのように行われるのかという問題も整理されました。

ITmedia 家づくりは一生に一度の買い物ですから、説明責任は重要ですね。

西谷 家をつくることはお客様のご家族の生活をつくり、人生をつくること。家族の数だけ家のスタイルや暮らし方がありますので、これからも夢を分かち合いながらお手伝いしたいと思います。



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