銀行、組立製造、通信・メディアなど国内におけるIT投資をけん引してきた業界がIT投資を抑制し、IT市場全体の投資成長率が対前年比で6年ぶりにマイナス成長に陥りそうだ。
銀行、組立製造、通信/メディアなど国内におけるIT投資をけん引してきた業界が、前年よりもIT投資を抑制し、IT市場全体の投資成長率がマイナスになりそうだ。2010年は景気の回復や政府の公共事業対策などでIT投資が活性化し、プラス成長に転じる見通しという。
調査会社のIDC Japanが3月10日に発表した産業分野別のIT市場の予測によると、2009年の国内のIT市場規模は12兆3788億円で、前年比成長率はマイナス1.7%になる見通し。前年比の成長率がマイナスになったのは2003年以来の6年ぶりとなる。
産業分野別に見ると、特に銀行、組立製造、通信/メディアといったIT投資の盛んな産業の減衰が目立った。銀行は世界的な金融危機による業績の悪化や、三菱東京UFJ銀行による大型プロジェクトの完了、組立製造は市場の需要低迷、通信/メディアは次世代高速ネットワークインフラの需要低迷による成長の鈍化――などが響き、投資の抑制傾向が他業種に比べて強い。証券や卸売、建設/土木産業もマイナス成長になった。
一方で、運輸、医療、一般サービスなどの業種では業務の効率化や情報基盤の整備などが奏功し、プラス成長になる見通し。
2010年のIT投資は、前年比でプラス成長に転じる見通し。景気の回復や政府の公共事業対策などが関連する業界のIT投資を活性化させる。業界別で見ると、銀行は保険業界の不払い問題など業界特有の課題に対処するためのIT投資が進む。組立製造業は景気の回復を引き金にIT投資が増えるとIDC Japanは見る。
IDC Japan、ITスペンディング シニアマーケットアナリストの内海美徳氏は「国内景気の低迷が企業の業績に直撃しており、今後企業のIT投資に対する見直しが増える。ITベンダーは、IT投資が期待できる産業に対し、商品やサービス、体制などを再構築する必要がある」と発表文内でコメントしている。
同調査は、2008年11月に発表した国内における産業分野別のIT投資の予測を、2008年7〜9月までの実績と12月までの経済状況に基づいて見直したもの。
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