ウィルコムが推進する新しいPHS(通称XGP)の国際展開を推進する「XGPフォーラム」が設立された。日中台などの通信機器ベンダー39社が参加する。
新型のPHSシステム(通称XGP)の国際展開を推進する「XGPフォーラム」が設立された。同フォーラムが4月2日、都内で記者会見を開き、技術優位性や活動方針などについて説明した。
XGPは、これまで「次世代PHS」の名称でウィルコムを中心に技術開発が進められてきた高速のワイヤレスデータ通信技術。ウィルコムは2007年12月に総務省から2.5GHz帯の電波免許を受け、年内に試験サービスを始める計画。最高100Mbps超の大容量データ通信や時速300キロメートルの高速移動下でも安定した通信ができるのが特徴で、2.5GHz帯を利用するワイヤレスデータ通信サービスでは、WiMAX技術を利用するUQコミュニケーションズなどがすでに試験サービスを始めている。
XGPフォーラムは、特にPHSが導入されている中国やタイでの導入の可能性について検討を進める。参加企業はウィルコムや日立製作所、NEC、三菱電機、東芝、京セラなどのほか、海外系企業ではAlcatel-Lucentの中国法人、日本HP、Nokia、ZTEなど合計39社。議長には情報通信技術委員会の井上友二理事長が就任した。ビジネスモデルや技術の標準化、プロモーション、通信網の最適化を検討する4つのワーキンググループを組織する。
会見では冒頭、総務省電波部長の吉田靖氏が「ワイヤレス通信技術の普及に国際化は必然的であり、国産技術のXGPの海外展開を政府として支援する」と表明した。
XGPの特徴について、副議長の近義起氏(ウィルコム副社長)は「マイクロセル」と呼ばれる小型基地局をきめ細かく配置するネットワーク設計手法や、「TDD(Time Division Duplex:時分割多重)」という時間単位で基地局と端末間の通信を効率的に行う電波技術などにより、ユーザーが周辺環境に左右されることなく安定した通信サービスを利用できると説明した。
一方、WiMAXや次世代の携帯電話技術としてNTTドコモなどが推進する「LTE(Long Term Evolution)」は、マクロセル方式という1つの基地局で広範囲をカバーするネットワーク設計手法を採用しているため、多数のユーザーが1つの基地局を利用すると実際の通信速度が低下する。また、国内外の大半の携帯電話会社は電波技術に「FDD(Frequency Division Duplex:周波数分割多重)」を利用。FDDは、送信用と受信用に使用する周波数帯域を分けることで、基地局と端末間の通信を同時に行えるメリットがあるものの、使用できる帯域に制約を伴う。
近氏は、XGPがほかのワイヤレスデータ通信が抱える技術的な制約をクリアできるメリットがあると強調。XGPではマクロセル方式にも対応でき、都市部では既存のPHS基地局を改修し、地方部ではマクロセル方式を採用することでネットワーク整備を必要最低限の投資で行えるとしている。
「モバイルブロードバンドでは、基地局が受け持たなければならない通信容量が音声通話の1000倍になる。マイクロセルとTDDの活用でこの課題をクリアでき、装置の基本技術はWiMAXやLTEと共通化できるのでコストがかからない」(近氏)
国内のXGPサービスは、ウィルコムが「WILLCOM CORE」の名称で夏〜秋にも都区内で試験サービスを始め、来春から商用化と全国展開を始めるとみられる。国内では、既存のPHS基地局の大部分を利用することでサービス拡大が容易にできるというものの、国際化の流れは不透明だ。
同社によれば、中国では中国網通や中国電信のサービス展開で最盛期に約1億ユーザーを獲得した。しかし、近年は政府主導による業界再編や独自の第3世代携帯電話規格「TD-SCDMA」によるサービス拡大が急速に進められており、XGPへの関心は不透明となっている。同フォーラムでは近日中にも中国とXGP技術の意見交換を始め、認知向上に向けた活動を推進していくという。
近氏は、「モバイルブロードバンドではXGPが技術的に最も優れていると確信しており、世界各国の通信事業者にメリットをアピールしていきたい」と話した。
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