知らぬ間に築いていた「セルフイメージ」を疑おうビジネスマンの不死身力(1/2 ページ)

エンジニアとしてのキャリアアップを不安に感じる人が少なくない。これは誤った「セルフイメージ」の理解から生じるものだ。思い込みに左右されない働き方を目指そう。

» 2009年07月25日 08時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]

 わたしはかつてIT業界で働いていたが、現在はコーチという職種に就き、外側からIT業界を眺める立場になった。内側から見ていた景色と外側から見る景色はずいぶんと違う。外側から見ることで新たな気付きがたくさん得られる。

 気付きの1つに、エンジニアのキャリア形成に関するものがある。一般的にエンジニアのキャリアはプログラマーを出発点とし、その後システムエンジニア、マネジメント、コンサルタントといったステップを踏んでいく。

 エンジニアの多くは、職種が変わるタイミングで将来のキャリア形成に悩む。この時「プログラマーは軽視されている」「システムエンジニアやマネジメントはコードが書けないからなりたくない」といった意見をよく耳にする。

 職種が変わることはその人にとって大きな変化だ。やりがいを持って取り組んでいる仕事を離れることに対する抵抗感や、職種が変わることへの不安などが生じるのも不思議ではない。

 もしあなたがプログラマーなら、主な仕事はモニタの前でプログラムを組むことだろう。だが職種が変わると、顧客と対話をして課題を聞き出したり、プレゼンテーションで意見を主張したりしなければいけなくなる……。多くの人はこうした変化が起こると、ストレスを感じてしまう。

 だが、このような不安を抱えてしまうのは、多くの場合その人の「思い込み」が原因の1つに考えられる。思い込みは、その人がキャリアを形成するに当たり、自分自身に制限をかけることにつながる。これでは、幸せに働くことはできない。

 本稿では、エンジニアの皆さまが希望する仕事を選び、業務に取り組むための思考法をテーマに取り上げ、キャリア形成におけるセルフイメージの大切さについて言及する。すべてのエンジニアの方が、充実感を持って働くためのきっかけになればと切に願っている。

「新たなステップに行きたくない」と思わせるのは何か?

 「新たなステップに行きたくない」――。エンジニアの多くが新たな職種に就くときに、思わず漏らしてしまう声だ。彼らはなぜキャリアアップをマイナスに考えてしまうのか。それは、仕事や職種に対するセルフイメージが少なからず影響しているからだ。セルフイメージは「自分で考えている自分」のことを指す。この影響力は、実は計り知れないほど大きなものだ。

 例えば、今後のキャリアの方向性について悩んでいるプログラマーから、次のような相談を受けたとしよう。

A:「最近、何か困っていることがあるとお聞きしました」

B:「プログラマーの仕事をずっと続けたいのですが、周りの人からはプログラマーの仕事で終わっていいのか、と聞かれます。業界ではプログラマーの評価は低いですからね」

A:「なるほど。ところでプログラマーはどういう仕事をするのですか」

B:「プログラマーは、システムエンジニアが作った仕様書を基に、プログラムを作っていきます」

A:「プログラムを作る仕事が好きなのですね」

B:「そうです。でも、プログラマーは肉体的にも精神的にも大変な仕事ですし、仕事の幅を広げる限界は35歳ぐらいだといわれているので不安になっています」

A:「スキルには自信がありますか」

B:「はい。でも社内で評価を受けると、システムエンジニアやマネジメントなどの職種に移らなければいけません。プログラミング以外の仕事をするのは嫌です」

A:「プログラマーとして評価を受けると、本当にそれらの職種に就かないといけないのですか」

B:「そりゃそうです。ITスキル標準ではそう定められていますし、会社からもそうしたキャリアを歩むことを求められています」

 プログラマーがほかの職種に就く際に、上記のように考える人が多く存在する。これは「プログラマーは大体このような職種だ」という思い込みから生じたものではないだろうか。さらに言えば、「プログラマーであるわたしはこの程度だ」というセルフイメージを作り、その枠に収まっている可能性もある。

 このようなイメージが他者から伝達されると、その人は「プログラマーの評価は低い」と考えてしまい、自分自身のセルフイメージも低く見てしまう。一般的なプログラマーのイメージしか想像できないなら、仕事での進歩は見込めない。次のステージに立とうとした時に不安が生じ、新しい挑戦ができなくなるからだ。

 世の中には年齢に関係なく活躍しているプログラマーがいることを考えてみてほしい。彼らは評価が低いプログラマーだろうか。システムエンジニアが作った仕様書の通りにプログラムを作ることだけに没頭し、35歳で限界を迎えているだろうか。ITスキル標準に従ってキャリアを形成していったのだろうか。彼らは一般的な考え方にとらわれず、独力でプログラマーとしての地位をつかんだはずだ。

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