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» 2009年08月05日 08時00分 公開

プライベートクラウド構築を盤石に――先進事例が示す道システム構築の新標準(3/3 ページ)

[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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 1つ目は、パブリッククラウド内にプライベートな専用領域を作り出すというものだ。パブリッククラウド内に仮想的な占有領域を作成し、ユーザー企業内の情報システムをVPNで接続する。プライベートクラウドと同様の環境をパブリッククラウド内に作り出すことで、パブリッククラウドの資産を生かしつつ、プライベートクラウドの実現に必要なガバナンスも確保できる。サーバやストレージだけでなく、企業とデータセンターを結ぶネットワーク環境も論理的に分割し、互いに影響を与えないようにしておく必要がある。この手法は「バーチャルプライベートクラウド」と呼ばれている。

(編注)バーチャルプライベートクラウドは新しい用語であり、仮想化環境管理ツールベンダーのEnomalyの創業者Reuven Cohenが2008年10月時点で自身のブログの中でバーチャルプライベートクラウドの概念を語っている。バーチャルプライベートクラウドの商用事例はまだなく、現在は研究開発の段階である。具体例として、マサチューセッツ大学アムハースト校とAT&T Labsとの共同研究である「CloudNet」が挙げられる。

 この手法を実現するには、クラウド関連のサービスを提供する事業者とプロバイダーの協力体制が欠かせない。国内でも、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)と社内の情報システムをVPNでつなげるサービスにおいて、複数の事業者が協業を進めている。こうした動きが活性化すれば、パブリッククラウドの一部を切り分け、プライベートクラウドとして活用する道が開けてくる。

バーチャルプライベートクラウドと似た言葉に「ハイブリッドクラウド」がある。これは企業が用途によって、パブリック/プライベートクラウドを使い分ける状態を指す。双方を活用するには、パブリック/プライベートのシステム連携に伴うサービスレベル契約やビジネス面での調整が発生する。双方を個別に活用する場合に比べて、難易度も高くなる。ハイブリッドクラウドは、パブリック/プライベートの間を仮想化されたITリソースが自由に行き来できるようになって、普及が進むと予想される。


 2つ目は、安価に提供されているプライベートクラウドの構築基盤サービスを活用するというものだ。具体例としては、日立ソフトウェアエンジニアリングが今秋に提供を開始する「SecureOnline 出前クラウドサービス」などが挙がる。プライベートクラウドの構築に必要なサーバ、ストレージ、スイッチなどをラックに収容し、基本設定を済ませた状態で企業に貸し出すサービスだ。プライベートクラウド構築の最初のステップである「ITリソースの統合と共有」の部分でコスト削減ができる。

 同社は、データセンターにある仮想化されたサーバ環境を、VPN経由で提供するサービスを展開していた。だがこの場合、秘匿性の高いデータを格納し、社外への配置が難しいシステムの用途としては利用しにくい。そこで、従来のサービスで利用している環境をラック単位で貸し出すことになった。同サービスで構築したシステムを日立ソフトウェアエンジニアリングのデータセンターに移管することも原理的には可能だ。最初は社内運用で小規模な統合/共有から始め、規模が拡大すればデータセンターに移行するというステップも踏める。こうした点において、中堅企業にとって現実的なサービスといえよう。

中堅企業にとってのプライベートクラウド活用の可能性 中堅企業にとってのプライベートクラウド活用の可能性(出典:ノークリサーチ)

 4回にわたりプライベートクラウドと企業がどのようにかかわり合うのかを解説してきた。プライベートクラウドはまだ黎明(れいめい)期であるがゆえ、具体的な活用事例を通じて、クラウドサービスを提供する側、それを利用する側の双方がノウハウを蓄積していく必要がある。

 1つ言えることは、どんな形態のクラウドにせよ、それは情報システムを構築、運用する1つの手段にすぎないということだ。企業がビジネスを展開する上で必要となるIT活用のすべてを実現してくれるものではない。特にプライベートクラウドでは、企業が情報システムに対してガバナンスを効かせ、複数の部署やグループ企業にわたる業務プロセスを整備することが必要だ。プライベートクラウドの成否を左右する最も大きな要素は、ビジネス面での活用のノウハウを蓄積し、業務に生かすことである。

著者紹介:岩上 由高(いわかみ ゆたか)

ノークリサーチ

ノークリサーチのシニアアナリスト。早稲田大学理工学部大学院数理科学専攻卒。ジャストシステム、ソニー・システム・デザイン、フィードパスなどを経て現職を務める。豊富な知識と技術的な実績を生かし、各種リサーチ、執筆、コンサルティング業務に従事。著書は「クラウド大全」など。


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