勝ち残る企業のWebプロモーション

「売り方」の構造が変わる――WebPRの台頭WebPRの仕掛け方(2/2 ページ)

» 2009年09月01日 08時00分 公開
[太田滋(ビルコム),ITmedia]
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なぜWebにこだわるのか

 企業が質の高い情報を発信するための仕掛けを作るには、マスメディアを含むさまざまなメディアを使って包括的に情報を発信すべきだ。しかしここではWebをより効果的に活用するために、Web上のメディアを介して戦略的に情報を伝えるWebPRの活動に取り組むことをお勧めする。それには3つの理由がある。

マスメディアでリーチできない消費者の増加

 1つ目は、インターネットの浸透により、マスメディアでは情報を届けられない消費者が増えてきたことがある。「テレビや新聞は見ないが、インターネットで情報を収集する」という消費者が多くなり、若年層になればなるほどその傾向が強い。

 博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が発表している「2008年メディア定点調査」によると、2006年から2008年の3年間で、消費者の1週間当たりのメディア接触時間は335.2分(2006年)から319.3分(2008年)に減少している。

 だが、内訳を見ると、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4マス媒体への合計接触時間が267.7分(2006年)から242.2分(2008年)に減っているのに対し、PCおよび携帯電話からインターネットに接続する時間は、67.6分(2006年)から77.1分(2008年)と増えている。性別、年齢別の調査結果を見ると、20代の男性はPCおよびケータイからのインターネット接続時間が、週に113分にも上り、テレビ(107.7分)の接触時間を追い抜いている。PCや携帯電話から接続するインターネットが、メディアとしての影響力を高めていることが確認できる。

能動的にWebに接する消費者

 2つめの理由は、消費者が能動的にWebに接していることにある。消費者はテレビや新聞に対してあまり積極的な姿勢で接触しないことが多い。特に見たい番組や読みたい記事はないものの、何となくテレビを付けたり雑誌を読み流したりするといった受動的な態度を取ることは、誰もが経験したことがあるはずだ。

 しかしWebでは、消費者自身が検索窓にキーワードを入力して検索し、リンクをクリックして情報を取得する。Webは、何らかの目的を持った消費者が積極的に接するメディアである。

 この違いは、情報に接触した後の購買行動にも表れる。例えばレストランの情報について、ぼんやりと見ていたテレビで紹介されていたものと、いい店がないかとWeb上を調べて発見したものであれば、消費者は後者の情報に強い興味を抱く。「情報を能動的に取りにいくか受動的に受け取るか」で、その後の行動に違いが生じる。

消費者の購買プロセスを網羅できる

 3つ目は、WebPRが消費者の購買プロセスを網羅できる点だ。PCを購入するときのことを思い浮かべてほしい。まず用途を考え、PCを利用する場面を想像する。そして、PCを生産しているブランドを思い浮かべ、自分が知っている情報を元に国内外のメーカーを頭の中で確認する。次に、各メーカーが販売している機種のスペックや価格、デザインなどを比較、検討し、時には消費者のブログ記事や口コミサイトのレビューを読んで、企業サイトが伝えきれない生の声を知ろうとする。最終的にどのメーカーのどの機種を購入するかを決め、実際に購入する。

 こうした購買のプロセスは、以下に挙げる4つのステップに基づいている。 

気付く→分かる→比べる→買う


 Webは、このステップをすべて包括している。PCについて調べるうちに、海外のメーカーが新しい低価格PCを発売したことに気付き、専門サイトなどでその機能や使い勝手を理解し、口コミサイトやすでに購入して使用している消費者からの評判で比較する。その後はEC(電子商取引)サイトで購入する。こうした一連の購買プロセスはWebだけで完結する。すなわち企業はWebを中心に商品戦略を立てることで、消費者の購買行動のあらゆる場面にかかわることができる。ただ商品を認知させるだけで終わらず、モノを実際に売ることまでを網羅できるのが、WebPRの特徴である。


 メディアの構造が変化し、消費者が成熟した今、企業と消費者の双方にとって便益がある情報を生み出し、一連のストーリーとして社会にメッセージを発信する必要がある。WebPRは、Web上のニュースやブログ、SNS、レビューサイトを通じて、それを可能にする新しい概念だ。企業と消費者をインターネット上でつなぐ新たな広告モデルとなるだろう。

 ただし、Webだけですべてのプロモーションが完結できるわけではない。業種・目的・目標によって、効果的なメッセージや情報を伝えるメディアは異なる。企業は、マスメディアとWebを有機的に組み合わせる設計力を求められているといえるだろう。

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著者プロフィール:太田滋(おおた しげる)

ビルコム 代表取締役兼CEO。PRの戦略構築から企画実行までを手掛けるPR会社としてビルコムを2003年に設立。2008年にはWebPR関連のサービスを提供しており、相模ゴム工業のWebキャンペーン「LOVEDISTANCE」なども仕掛けた。著作にはWebPRの実践手法をまとめた書籍「WebPRのしかけ方」がある。


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