富士通の社長交代にみる事業継続性とガバナンスWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年09月28日 08時45分 公開
[松岡功ITmedia]
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「FUJITSU Way」を基軸にした富士通のガバナンス

 「野副氏はずっと元気にやっておられたので、病気で辞任するような事態になるとは思ってもみなかった。リスク管理がなっていないといわれても仕方ないが、後任社長のことなどまったく考えていなかった」

 会見でこう語った間塚氏は、野副氏の突然の辞任に戸惑いもうかがわせた。間塚氏の言う通り、リスク管理という点では今後の課題となるだろうが、今回の出来事が富士通のガバナンスにおける手続き上でとくに問題があったわけではない。

 後任社長の選任についても、間塚氏が語ったように、まずは早期に任意の指名委員会を設ける方針だ。この指名委員会も、「経営の透明性を確保する目的で従来設置を検討していた」(藤田正美 人事担当執行役員常務)としており、同社のガバナンス強化の一環だ。

 さらに、突然の出来事だったことから、社内に動揺が広がらないようにするのも、ガバナンスの大事な取り組みだ。これについては、間塚氏自ら「全員でこの難局を乗り切っていこう」というメッセージを発信したという。

 社長を兼務することになった間塚氏は、野副氏の前任社長だった黒川博昭氏に「FUJITSU Wayに基づいてしっかり務めてほしい」とアドバイスを受けたという。

 富士通グループの企業理念、企業指針、行動指針、行動規範を定めたFUJITSU Wayは、すなわち同社のガバナンスに向けた取り組みの基本的な考え方である。黒川氏がアドバイスとしてFUJITSU Wayを語ったことにも、事態の緊急ぶりがうかがえる。

 その黒川氏は昨年3月、野副氏を後任に決めた社長交代会見で、こんなコメントを残している。

 「経営は駅伝競走のように、タイミングを図って次の人にたすきを渡していくもの。課題は常に出てくるが、それはその時のリーダーが解決し、また新たな課題に立ち向かっていけばよい」

 野副氏に後任を託した黒川氏にとっても、今回のような事態になるとはまったくの予想外だっただろう。とはいえ、間塚氏も代表取締役会長として、野副氏とともに黒川氏が同社の経営を託した人物である。

 25日の会見では、野副氏の病気の詳細がプライバシーにかかわることから一切明らかにされなかったこともあって、「一体何があったのか」と疑う記者たちの厳しい質問が相次いだ。ところどころ戸惑いは見せたものの、物腰柔らかく沈着冷静に受け答えをしていた間塚氏の姿が印象的だった。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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