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» 2009年10月08日 08時00分 公開

クラウド普及のカギアナリストの視点(2/4 ページ)

[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

SaaSの担い手は「GUIを持たないSaaS」

 図1から一見して分かるのが、SaaS区分の割合の高さだ。この市場規模試算では、IaaS、PaaS、SaaSを、「ユーザー企業から見たサービスの提供形態」に基づいて分類している。つまり、ソフトウェアパッケージベンダーがPaaSを活用して自社製のアプリケーションをSaaSとして提供する場合は、SaaSの区分に含まれる。

 ではこの結果は、多くの業務アプリケーションベンダーが、大手ベンダーやキャリアが提供するSaaS基盤(つまりPaaS)を活用し、自社のパッケージ製品をSaaSとして提供していることを示しているのだろうか? 残念ながら、現時点でその動きは活発ではない。

 業務アプリケーションを提供するベンダーは、導入後の運用保守をパートナーである販社やシステムインテグレーターに任せることが多い。そのため、自社で運用、保守までを手掛けるサービス形態へのシフトは、専門の人材育成やサービスに対する投資金額が膨大になるという点で、ハードルが高い。

 また、PaaSの多くは開発言語やフレームワークなどに何らかの制約があるため、自社製アプリケーションをそのまま動かせるわけではない。そのため、システムインテグレーターやホスティング事業者に自社製アプリケーションのライセンスを提供し、SaaSへの具体的な対応はパートナー企業に任せるという施策を取る業務アプリケーションベンダーが多い。

 それではクラウド関連市場で多くを占めるSaaS区分の中身は何なのか。実はここを担うのは、以下の特徴を持った業務を遂行するSaaSである。

市場規模の多くを占めるSaaSの中身

(1)管理や運用の難易度が高く、それを他者に任せることで負担が軽減されるもの

(2)第三者に管理を委ねることで、安全性の向上や法的観点のメリットが得られるもの

(3)他者とシステムを共有することによってメリットが得られるもの


 (1)は、クライアントPCの運用管理やセキュリティ対策のSaaSだ。自社でこれらのシステムを運用管理する場合、負担が大きい。それをインターネット越しのサービスとして提供するわけだ。

 (2)は、メールアーカイブや監査証跡機能を持つファイル送信サービスなどだ。外部に委託することによって、自社内でデータを保持する際に発生する内部不正の危険を回避できる。

 (3)は、廃棄物削減への取り組みや資材の共同購入などマーケットプレイス的なサービスの利用だ。参加企業からデータを集めることでシステムの価値が上がり、それを参加企業が享受するモデルに適している。

 SaaSというと、既存の業務アプリケーションをインターネット経由で利用することのみをイメージしがちだ。すでに稼働している業務アプリケーションをSaaSに移行することで相応のコスト削減効果は見込めるか、それに加えて新たな付加価値が得られる場合でないと、実はユーザー側にとってはメリットが少ない

 一方で、上記に挙げた業務はいずれもSaaSとして提供されることにメリットがある。これらはGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を持たない場合が多く、ユーザーはSaaSを利用していることを意識せずに活用できる。いわば「GUIを持たないSaaS」と呼べるだろう。今後は、「GUIを持たないSaaS」が数多く登場し、仮想化やスケールメリットを追求する一部のベンダーがクラウドを有効に展開できるようになると予測される。

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