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» 2009年10月08日 08時00分 公開

クラウド普及のカギアナリストの視点(4/4 ページ)

[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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IaaS普及を左右する「ガバナンス」「プライベートクラウド」

 IaaSはハードウェア機能の提供が主であり、開発言語やフレームワークなどの複雑な要素が絡まない分、PaaSよりも受け入れられやすい傾向にある。IaaSの最大のメリットは、迅速かつ低コストにサーバやストレージをスケールアウトしたり、プロビジョニングしたりできることだ。特に多くのハードウェアを抱える大企業では、これらのメリットがもたらす恩恵は大きい。

 だが、IaaSの普及にも課題は存在する。それは、自社のセキュリティポリシーとの整合性を始めとするガバナンス(統制)面をどう整備するかという点だ。そして、これを解消する手段が「プライベートクラウド」である。

プライベートクラウドの定義

クラウドに関連する技術を活用しながら、ITリソースを自社の管理下に置くことで、サービスレベルやセキュリティポリシーなどのガバナンスを自社で保持したまま、クラウドのメリットを享受する情報システムの構築/運用形態、またはその情報システムそのもののこと


 今回の市場規模試算において、パブリッククラウドの延長線上という位置付けで提供されている米Amazonのプライベートクラウドサービス「Amazon VPC」は、「クラウド」として扱っている。一方で、自社内のサーバ統合を進めた結果、プライベートクラウドと同等のシステム環境を構築したというケースは、試算した市場規模に含まれていない。IaaSがPaaSよりもユーザー企業に受け入れられやすいサービスであることは確かだが、市場規模全体に占める割合が最も低いのは、こうした理由にある。

 今後は、IaaSの市場規模を拡大すると期待されていた大企業が独自のプライベートクラウドを構築することで、IaaSのメリットを享受することが多くなるだろう。

「境界線」をどこに置くか?

 クラウドはITリソースを構築、運用するための手段の1つにすぎない。本当に「elastic(伸縮性のある)」なITリソース環境を構築するには、特定のクラウド環境だけで考えるのではなく、自社内とクラウドを行き来したり、複数のクラウドをまたがったサービスの利用を考える必要がある。

 その場合に重要なのは、「クラウドを利用するために業務システムを変更する必要はない」という状況を実現することである。自社内であろうとクラウド環境であろうと、違いを気にせずに業務アプリケーションを使えるようなシステムを整備するのが理想だ。

 だが、セキュリティやスケーラビリティ(拡張性)を実現する上で、ある程度の制約が課されるのはやむを得ない。今後は「クラウドであること」を意識しなければならない境界線がどこに引かれることになるのか、という議論が巻き起こってくるだろう。

 新たなフレームワークが登場し、自社内運用とクラウド利用の差を吸収するのか。それともインフラの発達により、ユーザーごとに隔離されたハードウェア環境を安価に提供できるようになるのか――。これによって、冒頭に挙げた市場規模の区分も大きく変わってくるだろう。

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著者紹介:岩上 由高(いわかみ ゆたか)

ノークリサーチ

ノークリサーチのシニアアナリスト。早稲田大学理工学部大学院数理科学専攻卒。ジャストシステム、ソニー・システム・デザイン、フィードパスなどを経て現職を務める。豊富な知識と技術的な実績を生かし、各種リサーチ、執筆、コンサルティング業務に従事。著書は「クラウド大全」など。


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