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» 2009年11月14日 08時00分 公開

東北でいちばん“学生に優しい”情報処理センターを見てきた――東北学院大導入事例(2/2 ページ)

[石森将文,ITmedia]
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学内統合DBも視野に

 ユーザーが端末にログインした際、通常であれば(Windowsなどの)デスクトップ画面に移行するはずだ。だが松澤教授は、起動メニューとして各種アプリケーションやサービスが一覧表示された、いわゆる「ランチャー」を表示させることを選んだ(一部デスクトップ上での操作が必要な講義を除き、デスクトップ画面が表示されることはない)。なお、このランチャーは独自に設計・開発したものである。その理由として松澤教授は「例えば“スタートメニューからフライアウトしてWordを起動しなさい”と学生に指示しても、できる学生とそうでない学生がいる。また履修状況によっては“スタートメニューの上から何番目に起動アイコンが表示されるか”がユーザーによって異なる場合もある。だが共通のランチャーで表示すれば、現場に混乱はない」と話す。

 起動メニュー上の言葉遣いについても、学生に対し配慮されている。通常であればアプリケーション名を大きく表示しがちだが、Wordではなく「日本語ワープロ」、Photoshopではなく「画像編集」という具合に、ユーザーが“したいこと”に合わせたワーディングとなっている。「高校を卒業したばかりで情報処理を選択した学生に、例えば“Borland C++を起動しなさい”と指示するのは酷だ」(松澤教授)

ランチャータイプの起動メニュー(左)と、各端末のステータスを表示する教員用画面(右、クリックで拡大)。教員が講義で利用を許可しているアプリケーションは、起動メニュー上で黄色く表示される(不許可は白。教員は自由に許可/不許可を切り替えられる)。右のステータス画面には、ユーザー(学生)が起動しているアプリケーションが表示されるため、指示されていないアプリケーションを起動しているとバレる。学生にとってはある意味、寒い時代だといえそうだ――

 「もちろん、価格が高い、安いという比較は必要だが」と前置きした上で「今回の情報処理センター刷新については、オープン系の機材であればどのベンダーのハードウェアでも大きな違いはなかっただろう」と松澤教授は話す。ベンダー選定においては、従来から東北学院大の教育向けに多くのソフトウェアを開発、改善してきたNECソフトウェア東北に対する松澤教授の信頼も、大きく影響したと考えられる。

 「学生に対する情報処理センターの役割は、大きな分岐点を迎えている」と松澤教授は指摘する。従来はITリテラシーの教育やアプリケーションの使い方といった「コンピュータそのもの」の教育を担うことが多かったが、近年は語学をはじめ、まったくコンピュータに関係のない講義が増えてきたという。「特に、インターネット上に公開されている膨大な情報を活用した授業がますます増えることが予想される」(松澤教授)

 このトレンドが強まれば“コンピュータ室を使うのはコンピュータに詳しい学生だけ”ではなくなるはずだ。松澤教授は、自身の“ユーザー本位”というこだわりの原点について「自分は小数点の文化を大切にしたい。1に満たなくても、0.8でも0.6でもいいじゃないか。学生は完璧でないからこそ、彼らが学びやすい環境を用意することが必要だ。何より自分は、研究者であると同時にプロの教育者。学生に対する責任があるのだから」と話す(ちなみに教授も学生時代は――遊んだり、お酒を飲んでばかりだったとのこと)。2009年4月には稼働していた今回のシステム導入事例について、公表を9月末まで控えていたのも「稼働実績や効果が見えていないのに、ただ“動いた”というだけで発表するのは無責任」という自戒があったのだという。

 既に多賀城キャンパスの情報処理センターでは200台規模のシンクライアントが、また土樋キャンパスの情報処理センターでは、150台規模のシンクライアントが稼働している。「スキルレベルがバラバラのユーザー(学生)に対し、これだけの規模でネットブート型シンクライアントを提供している事例は少ないのではないか」と松澤教授は指摘する。「多拠点にまたがり、学生に情報処理施設を提供している大学は数多い。昨年までのわれわれと同じ悩みを抱えているところを対象に、ノウハウを共有していきたい」(松澤教授)


 松澤教授は取材の中で、「失敗が許されない中で、過去に例の少ないシステム構築に挑む原動力は何か?」という問に対し「自分は本学のOBだ。東北大学 大型計算機センター時代(現在の名称は「サイバーサイエンスセンター」)の恩師からも、大変お世話になった。今度は自分が、受けた恩を学生に返す番だ」と笑う。

 情報処理センターの枠にとどまらない「学内統合データベース」構想についても話してくれた松澤教授。その目は既に、学生、教員、職員に対してのさらなるユーザビリティ向上を見据えている。

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