Tweetieの買収に怒る開発者たち――沈静化に努めるTwitter

Twitterによる人気クライアントの買収や公式クライアントのリリースなどの一連の動きが、サードパーティーの不安を呼び起こしている。

» 2010年04月13日 18時11分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 米Twitterのプラットフォームディレクターが4月11日(現地時間)、Twitterアプリの開発者に対して、同社が各種のTwitter用ツールを買収するのは、競争を不可能にすることによって開発者の生計の手段を奪うためではないと説明した。

 ベンチャーキャピタルのUnion Square VenturesでTwitterへの投資を担当しているフレッド・ウィルソン氏は4月7日、自身のブログに「開発者は、Twitterが買収あるいは自社開発する可能性があるアプリを作成するのをやめるべきだ」と記している。

 ウィルソン氏が具体的に名前を挙げたのは画像アップローダーの「TwitPic」とiPhoneアプリの「Tweetie」だ。「開発者はソーシャルゲームや分析ツールなど、Twitterプラットフォームの欠落部分をまだ埋めていないバーティカルアプリの開発にフォーカスすべきだ」と同氏は主張する。

 この指摘が開発者の間で大きな不安をかき立てる一方で、Twitterが4月9日、Tweetieを買収すると発表したことが火に油を注ぐ結果になった。Twitterはさらに、BlackBerry向けの「公式の」Twitterクライアントもリリースした

 これらの動きはウィルソン氏の指摘を裏付けると同時に、そこに何らかの策略があったのではないかという疑念を呼び起こした。Twitterの経営幹部たちは、この件について記事を書かせることで衝撃を弱めるために、事前にTweetie買収のことをウィルソン氏に教えたのだろうか。

 それが狙いだったとしたら、結果は逆効果だった。Twitter開発者たちは「#unionoftwitterapps」というハッシュタグを使った会議で大騒ぎしている。Twitoasterの創業者のアルノー・ムーニエ氏はその中で「@fredwilsonは欠落を埋めるのをやめるよう言っている。われわれは新しい穴を掘って、それを埋めればいいということなのだろうか」と書き込んでいる。

 こういった雰囲気は、4月14日に開幕するTwitter初の開発者カンファレンス「Chirp」の直前の状況としてふさわしくないと考えたのか、同社のライアン・サーバー氏は、Twitter開発をテーマとしたGoogleグループに、「Twitterを初めて利用するiPhoneユーザーが混乱することのないよう、TwitterはTweetieを“Twitter for iPhone”と改称した」と書いている。

 「ユーザーがApp Storeに行ってTwitterを検索すると、Twitterとは無関係な多数のアプリと関係がある少数のアプリが含まれる結果が表示されるだろうが、Twitterを初めて使うユーザーは自分の探しているのがどれなのか分からずに、あきらめてしまうかもしれない」とサーバー氏は説明する。「これはわれわれにとってユーザーを失うことだ。つまり、エコシステム全体の健全な発展につながるユーザーベースの拡大の機会を失うということだ」

 このためTwitterでは今後、Twitterクライアントに対して「公式」という呼び方をするのをやめるという。公式でないTwitterクライアントは信頼性に欠けるという印象を与えるからだ。

 「BlackBerryに“公式”というラベルを付けるべきではなかった。この点は改められ、今後Twitterクライアントにそういった言葉が使われることはない」とサーバー氏は記している。

 これは開発者にとって多少の慰めになる(少なくとも自分たちの置かれている立場が分かるという意味で)かもしれないが、サーバー氏は今後も買収を行うつもりだと述べており、開発者の怒りがさらに高まるのは間違いなさそうだ。

 「ユーザーそしてエコシステム全体の利益になるのであれば、われわれは製品の改善、新機能の追加、買収の実施に向けて努力するつもりだ」とサーバー氏は言い切る。

 「これらの取り組みはどれも、その分野で開発に携わってきた企業や開発者を困惑させる可能性があり、彼らはユーザーに価値を提供する新たな手段を探さなければならないかもしれない。わたしが約束できるのは、われわれはユーザーとエコシステム全体にとって最善となることに常にフォーカスし、誠実かつ正直に開発者とのコミュニケーションを図るということだ」(同氏)

 サードパーティー開発者に致命的な影響を与えかねないのが買収だ。TwitterがTweetieを買収したとき、TweetDeckなどのiPhoneアプリは見捨てられたように思われた。

 Twitterの方針に対する不信感は広がっている。サーバー氏の投稿の後に続けて、デウォールド・プレトリアス氏は同氏の説明に感謝しながらも、次のように付け加えている。

 「率直に言って、“Appleのアプリストアの混乱”という主張は非常に耳障りだ。それはTweetieを買収した理由の1つなのかもしれないが、それが唯一最大の理由だというのは大きなまやかしだ」

 Twitterにとっては、約7000万人のユーザーベースが拡大するのであれば、開発者の不満も気にならないのだろう。Twitter開発者はこの状況に適応するか、座して死を待つかしかなさそうだ。

 AllThingsDigitalによると、Twitter開発者たちはChirp前日の4月13日に“ガス抜き”セッションを開催する予定だ。サーバー氏もそれに参加するようだ。

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