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» 2010年05月11日 08時20分 公開

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:グローバルクラウドの法的課題克服に向けた展望 (2/2)

[水越尚子,ITmedia]
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3.世界と日本の国際的合意への参画状況

 グローバルクラウドの普及における法的課題の解決に向けて、世界各国はすでに動きを見せ始めている。

 1月28日、欧州委員会 情報社会・メディア担当委員 ビビアン・レディング氏がデータ保護の日のスピーチにおいて、「SNS」「RFIDの使用」「ターゲティング広告」におけるプライバシー問題を取り上げ、EUで1995年に制定されたデータ保護指令を改正するべきと指摘した。現在、EUでは約160の改正案を受け、新たなルール作りを進めている。

 2009年11月、スペインで「データ保護・プライバシーコミッショナー第31回国際会議」が開催された。米Facebookや米eBayなどの法務やプライバシーカウンセルがEUなどの政府とともに、SNS上の個人情報の扱い、グローバルクラウドと個人情報保護に関する準拠法などについて、意見を表明している

 一方、日本ではこうした動きは鈍い。個人情報保護に関するWebページでは記述が限定されており、国際的協調の検討についての記載はない。英語による情報公開も少なく、諸外国が日本のプライバシーの検討状況を知るのは難しい状態だ。

4.国際的合意形成に向けた今後の課題 

 グローバルクラウドの法的課題について、日本が迅速に国際的合意を形成するための課題は3つある。具体的には、(1)国内のプライバシー保護および統制関連の優先順位を上げ、適切な人員を確保できるか、(2)(1)を規定する法およびガイドラインの改正やプライバシーに関して、バランスの取れた救済案を提示できるか、(3)国内外の議論に積極的に参画できるか――という点だ。

 (2)の救済に関連して、中間とりまとめでは「データセンターが所在する国の法制度により、当局に対して情報提出が求められる場合、その旨を契約書(クラウドサービス利用者)に通知するとともに、異議の申し立てを行うことができるような仕組み作り」という内容がある。これはHigh Level Contact Groupがまとめた「情報共有およびプライバシー・個人データの保護に関するレポートの透明性・通知、救済の項目に類似している。

 グローバルクラウドの普及と法的課題についても提言した中間とりまとめは、6月に完成予定だ。だが現在は、記述が短いこともあり、国民に伝わりにくい内容となっている。政府は国民が理解できる情報を更新し、国内合意を形成することが求められる。今後出される報告書は、政策とともに具体的な法改正の提言、国民および利用者の意見、EUなどの海外の法改正の動きを取り入れた内容になっていくだろう。

フィードバックの重要性

 中間とりまとめでは、「クラウドサービスの普及に向けた基本三原則」が挙げられている。ここでは、多様なクラウドサービスの活用を促進し、政策の最優先目的に利用者のリテラシーを向上させることを第一原則としている。これはクラウドサービスを企業側が迅速かつ合理的に選択できるという点で評価できる。

 クラウドコンピューティングは、これまでの情報処理の方法や蓄積したデータの価値に変化をもたらしている。こうした中、各種報告書にクラウドサービスの活用を促進する基本政策が示されていることで、企業のクラウドサービス利用の意欲は上がるはずだ。そして、ユーザー企業の声に呼応したクラウドサービスプロバイダーが、情報を開示・提供していく。

 このフィードバックによって、グローバルクラウドの法的環境の見晴らしは格段に良くなっていくだろう。

 基本政策に示されたクラウドの多様性の確保。それは民間事業者の熾烈(しれつ)な競争と事業努力によって初めて確保される。政府はクラウドサービス利用企業のフィードバックを意識して取り入れるべきだ。クラウドサービスのモデル契約約款の策定などが事業者の足かせにならないよう、留意すべきである。

 また、各省庁によるガイドライン策定の重複を避け、新しいクラウドサービスに即して、違法や適法、ベストプラクティスの例示を明確にすることが求められる。

著者プロフィール 水越尚子(みずこし なおこ)

水越尚子

2010年3月1日にエンデバー法律事務所を設立。日本およびカリフォルニア州の弁護士資格を有し、IT企業での社内弁護士の経験を生かして、情報通信、セキュリティ、知的財産権、国際取引を専門に、企業法務に関するアドバイスを行う。一橋大学卒業。




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