それから数時間後。そこには、某ボクシング漫画の主人公のように、何もかも真っ白に燃え尽きて、たたずんでいるわたしの姿があった。
プライドも体力も脳みそもすべてがズタズタになって、やっとのことでデスクに戻ったわたし。同僚A子が入れてくれたインスタントコーヒーは、おいしいやら苦いやら。新入社員には申し訳ないが、6時間もの間、何をしゃべったか、まったく覚えちゃいない。それでも、新入社員からも人事部からも苦情がなかったから、きっとわたしは“何か”をしゃべっていたのだろう。
それにしても、心身ともに、こんなに疲れたのって久しぶり。普段いろいろなトラブルに巻き込まれているので(そういう仕事なんだけど)、多少のことなら動じなくなったし、めったなことでは精神的に疲れるということもなくなった。しかし今日は違う。ずっと立ちっぱなしだったので、ふくらはぎも痛い。仕事の内容が違うと、こんなにも使う神経と筋肉が違うものなのか。
「今日はまっすぐに家に帰るぞお〜!」と心の中で叫びながら、それでも新人研修に穴が空かなくてよかったと、心のどこかで思うわたし。結局、本来の担当講師は急性盲腸だったらしい。急病なら仕方ないけれど、こんな思いはもうイヤだ。
しかし、新入社員研修の講師って、よく考えたら面白い、いや大変な仕事だと思う。新入社員研修って、いわば「季節労働」でしょ? この時期、どこの会社も講師が出入りしているはずだ。この時期にだけ増殖(?)する研修講師……彼らは普段、どこで、どんな仕事をしているんだろう? 新入社員研修と同じぐらいの分量の研修が、年中あるとは思えない。
もちろん普段から講師業をしている人もいるんだろうけど、たいていの人は、普段はSE、4月だけ新入社員研修講師、というような働き方をしているのではないだろうか。もちろんSEが、抱えているプロジェクトをほったらかして研修にかけつけるなんてことはないから、ずいぶん前からスケジュールを調整しているはずだ。となると、緊急時に代わりの講師を探すことも難しい。今回のように講師が急病になったりしたら、みんなどうしているのかしら?
まさか、IT機器同様、二重化されているのかな? 研修会社には常に替わりの講師がスタンバイしていて、万が一のことがあったらすぐにスイッチ……いや、それはちょっと考えにくい。IT機器の場合は、業務に支障が出る可能性のある部分は二重化したり、ネットワークなんか経路を多重化したりしておくことで対応できるけど、ヒトの場合はそうはいかない。これは講師業に限らない。業務においても、「このヒトがいなければ先に進まない」というような仕事が存在するのは確かだ。何かの本に「属人化はできるだけ避けることが大切」だって書いてあったけど、実際に属人化を完全になくすのは不可能だ。
機械はともかく、「ヒト」という資源は二重化できない。そういえば、昔の漫画で赤い鼻を押したらその人そっくりになるコピーロボットなるものがあったっけ。現実にはそんなものないしなあ。となると、その「ヒト」に対するリスクってどのように回避すればいいのだろう? しかも、「ヒト」に対するリスク対策って、一番ないがしろにされている部分じゃないかしら。LANケーブルみたいに。
え、LANケーブルとヒトの扱いって、同程度ですか? やっぱり、LANケーブルをもっといたわってあげようよ……。
ああ、考え出したらまた疲れてきちゃった。今日はもう帰って寝ようっと。
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“標準化”って、ムズかしい。
食らうど、もといクラウド化するとヘルプデスクも変わる?
あれ? このマウス“線”がないんですけど。
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