Isilonは今年、ようやく黒字経営を果たしたが、急成長中のストレージ市場にあっても、ほかの多くの新興企業と同様、ここに至るまでには財政的な苦難を乗り越えねばならなかった。
2007年に株式を公開したIsilonの収支報告によると、9月30日を期末とする2010年第3四半期の売上高は5380万ドルで、直前の第2四半期の4510万ドルから19%増加した。2009年第3四半期の売上高3050万ドルと比べると、77%という大幅な成長を記録した。
Isilonの利益率は60%以上という素晴らしい数字になっているが、研究開発と営業経費も高い水準であるため、同社は2年間にわたって赤字経営から脱出するのに苦労した。
しかし2010年第3四半期、Isilonは400万ドルの純利益を確保した。昨年同期の490万ドルの純損失と比べると大きな前進だ。これがEMCに買収を促した主要な要因であることは間違いない。
米調査会社Pund-ITのストレージアナリスト、チャールズ・キング氏は「EMCとIsilonの相乗効果は大きい」とeWEEKの取材で語っている。
「IsilonとEMCのAtmosクラウドプラットフォーム/サービスとの間には、明らかな相乗効果がある。それどころか、この組み合わせが、企業のプライベートストレージ資産とパブリッククラウドサービスプロバイダーが運用するストレージ資産をシームレスに結合する“接着剤”を提供するとともに、米Ciscoや米VMwareといったEMCのパートナーのクラウド戦略を補完することにもなると同社は考えているのではないか」とキング氏は話す。
「NASに関するIsilonのノウハウ、そして同社の革新的な技術は、EMCが次世代のNASソリューションを開発する上で貴重なリソースとなるに違いない。これによりEMCは、米NetAppをはじめとするNASベンダーとの競争でも効果的な戦いができるだろう」(同氏)
キング氏によると、総合的に見てEMCとIsilonは「絶妙な組み合わせ」だという。
「これは戦略的にも望ましい組み合わせであり、両社の個々の製品および両社の戦略が効果を発揮する部分は幾つか存在する」とキング氏は述べる。「EMCの規模、経験、リソース、市場浸透度、業界リーダーシップは、活力にあふれながらも未熟なIsilonが次のレベルに達するのに必要なものを与えるだろう」
一方、独立系ストレージベンダーとしてEMCの最大のライバルであるNetAppは、この買収について言いたいことがあるようだ。
「既にNetAppは仮想化環境、クラウドサービス、Big Dataへのトレンドを見据え、10年近くにわたって市場シェアの持続的拡大に注力してきた」――NetAppで製品とソリューションのマーケティングを担当するクリス・カミングス副社長は、eWEEKへの電子メールでこのように述べている。
「何十億ドルもの金額でIsilonを買収するという今回の発表は、EMCがIT業界の大きな変化に追い付く手段をまだ模索中であることを改めて証明するものだ」(同氏)
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