勝ち残れ! 中堅・中小企業

経営革新は市場と顧客の「観察」から中堅中小、勝利の方程式

「経営革新など、われわれ中堅・中小には縁遠い」と思い込んでいる経営者は多い。しかし、経営革新の本質は決して難しくない。「市場や顧客を観察し、次の手を考える。この繰り返しがイノベーションだ」とクレディセゾンの林野社長は話す。

» 2011年06月15日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「中堅中小、勝利の方程式」と銘打ったこの短期連載で前回は、「ゴホンといえば〜」でお馴染みの龍角散を取り上げた。200年ものあいだ日本人のノドを守り続けてきた老舗だが、そのイメージとは異なり、絶え間のない経営革新に支えられてきた。それは8代目の現社長、藤井隆太氏が「一代として同じことをやってこなかった。会社を新しくつくるよりもたいへん」と話すほど難しい。

 もちろん難しいことに違いない。しかし、「うちのような会社に経営革新なんて無縁だ」と思い込んでしまう前に、経営革新、すなわちイノベーションとは何かを考え直してみたらどうだろうか。

 「仕事は熱心に取り組み、努力すれば成功のチャンスがめぐってくる。しかし、社会はどんどん変化していく。ひとつの成功体験が落とし穴にならないようにするために、市場や顧客を観察し、次の手を考える。この繰り返しがイノベーションだ」と話すのは、クレジット業界大手のクレディセゾン社長、林野宏氏だ。

 200年の老舗、龍角散とは正反対の同社は新興だが、次々と業界をリードするサービスを繰り出し、トップクラス入りに成功した。月賦百貨店だった緑屋がセゾングループ傘下に入り、西武百貨店でマーケティングの手腕を発揮した林野氏が転籍したのが1982年だから、わずか30年。老舗、新興の違いはあっても成功のカギはイノベーションだ。

 クレディセゾンが業界に先駆けたサービスはたくさんある。VISA、MsterCardブランドの付いたカードを年会費無料、American Expressブランド付きも年会費3150円と安さを武器に会員を獲得、キャッシングの金利も常に他社を下回る低金利を打ち出してきたが、強みは何も安さばかりではない。スピーディーな「即日発行」、期限を設けない「永久不滅ポイント」やスーパーのレジでも気兼ねなく使える「サインレス」など、顧客にとってありがたいサービスはどれもクレディセゾンから生まれている。

パートナーシップで広がる可能性

 流通を中心に幅広く提携しているのもクレディセゾンの特徴だ。こうしたコンビニ、スーパー、百貨店が成長著しいアジアに出店していけば、同社にとってもそれだけ可能性が広がる。

 また、2006年に立ち上げたポイントサイト「永久不滅.com」では、500以上のショップと提携する。このポイントサイトは2010年にリニューアルし、対象ショップでの買い物だけでなく、アンケート、オークション、共同購入型クーポンなどでもポイントが貯まる仕掛けだ。また、ポイントを集めるためには必ずしも同社のクレジットカード会員である必要はなく、16歳以上であればだれでも永久不滅ポイントを貯めることができる。クレディセゾンでは2012年度までにネット会員1000万人の会員獲得を目指している。Yahoo!、楽天、amazonなどの有力プレーヤーが牽引し、拡大を続けるオンラインショッピング市場に独自の立ち位置で橋頭保を築きつつある。

 この10年、改定出資法や改定貸金業法によって上限金利規制が強化される中、ほとんどのクレジットカード会社がメガバンクの傘下に再編されてしまったのはご存じのとおりだ。

 「ビジネスにおいて困難な状況は遅かれ早かれ必ず来る。むしろナンバーワンになるチャンス」と林野社長は話す。次はどんな手を打ってくるのか。

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