9万人超のIntel社員を支える6400人のIT部門、2011年の活動成果を報告

BIによる製造プロセスの改善やBYODへの対応、データセンターの効率化まで、その活動は多岐にわたる。

» 2012年03月27日 17時50分 公開
[國谷武史,ITmedia]
インテル 情報システム部の富澤直之部長

 半導体世界最大手のIntelの社内ITインフラを支えるIT部門はどのような活動を展開しているか――インテルが3月27日、2011年の活動実績を報告。同社情報システム部の富澤直之氏が国内外の取り組み成果を紹介した。

 2011年現在、Intelに在席する社員は約9万1500人、企業買収などで約1万人増加した。事業拠点は62カ国164カ所。IT部門は約6400人で、54拠点で業務を行っているまた社員1人当たりのIT支出額は約1万5500ドル、同社売上高に占めるIT支出額は2.6%で、「一般的な日本企業に比べると多いといえるが、米国企業では標準的」(富澤氏)という。

 IT環境だが、データセンター(DC)数は2011年時点で87カ所、総面積は4万1000平方メートル。企業買収などで施設が増えてはいるが、DCの集約によって拠点数は3年連続で減少している。総面積は2009年とほぼ同規模である。一方、データセンターのリソース(完全子会社などは除く)ではストレージ容量が2009年の18.6ぺタバイトから2011年は38.2ぺタバイトに、ネットワーク帯域が3Gbpsから6.2Gbpsに増加。半導体設計に要する処理能力は2008年に比べて159%増加している。

 「サーバの70%を半導体設計に用いており、非常に多くのストレージを必要とする。データセンター数などは過去数年で大きな変化はないものの、処理能力は非常に増えている」とのことだ。

Intelの社内ITの概況(インテル資料より抜粋)

 富澤氏によれば、同社のIT部門は、以前に半導体製造工場などの現場でIT業務を担当していた組織を統合してきた経緯から、製造工程に関わる業務を始め、クライアントマシン管理やデータセンター、セキュリティ対策に至るまで、その担当領域は非常に広いという。同社におけるIT活用の成果を次のように紹介した。

  • 業務における社員個人の端末の利用率:59%
  • プライベートクラウドから提供されるITサービスの割合:80%
  • マルウェア感染の減少率:30%(検出は50%増)
  • ビジネスインテリジェンス(BI)活用に伴う需要予測業務の時間短縮:22%

 また、IT業務の効率化では以下の成果を達成したという。

  • ITサービスでの重大なインシデント発生件数を37%削減
  • プライベートクラウド活用に伴い600万ドルのコストを削減
  • BIおよび設計業務に要するITリソースの最適化により1990万ドルのコストを削減
  • シンプロビジョニングや階層化技術の活用でストレージコストを920万ドル削減
  • ノートPCの支給に要する時間を1時間半から1分半に短縮

 特に製造プロセスにおける取り組みは、BIによって異常の発生を迅速に検知できるようにしたことで、生産の中断や不良品の発生を抑止するようにしている。また、製品設計にかかわる取り組みではIT部門が「NUMA Booster」という独自のコンピューティングアルゴリズムを開発して、ITリソースの稼働効率を大幅に高めることができるようになったという。

 日本の情報システム部でもこうしたグローバル共通の活動を行ってきたが、2011年は特に東日本大震災に伴う対応が記憶されるという。

 大震災で、同社はつくば本社(茨城県つくば市)の施設が損壊する被害に遭ったが、ITサービスの提供に影響は無かった。震災直後は在宅業務を社員に命じたが、同社では全社員がモバイルPCを利用しており、情報システム部がソフトフォンやソーシャルメディアなどのコミュニケーション手段を迅速に構築したことから、事業が中断することはなかった。このほかにフリーアドレスを基本とするオフィスのリニューアルも実施した。

被災したつくば本社の内部(左)とリニューアルした執務室(インテル資料より抜粋)

 2012年もUltrabook PCの導入やデータセンターの統合など数多くのプロジェクトを予定しているという。同社IT部門の2011年の具体的な取り組みは下記を参照されたい。

ビジネスの効率化

  • 5人のBIチームが半年間で1000万ドルの価値を創造
  • 開発環境の標準化、セルフサービス化など開発期間を5〜12%短縮
  • 中国拠点でWebベースの請求書発行システムを導入し、発行件数を90%削減
  • ベトナム拠点で電子税関システムを開発し、通関業務を効率化
  • 45分で利用を開始できる社員向けIaaSを実現
  • Webベースのサービスデスクによるセルフサポートの実現

ビジネスの拡大

  • Webコンテンツの掲載プロセスの改善(数日から即時)
  • オンラインセールスセンターの構築。240万人の訪問者240万人に対し、10万人の見込み客と8000件の案件を獲得(日本向けも近日予定)
  • 買収企業の統合コストを削減

ITのコンシューマ化

  • 私物端末の持ち込み(BYOD)対応の強化。社員は1日当たり47分の業務時間を節約、全社では年間200万時間に相当
  • メッセンジャーや会議室予約など7種のモバイルアプリを提供。28種を開発中
  • エンタープライズ向けソーシャルメディア、Wiki、RSSを導入、ビデオポータルは試験導入
  • ビデオ会議の導入推進で、出張に伴う移動時間で43万5000時間、経費で7300万ドル相当を削減
  • Windows 7およびIntel SSDの配備を完了

セキュリティ対策

  • BYOD対応に伴うセキュリティの信頼度計算手法を開発
  • 複数ソースの情報を統合するセキュリティインテリジェンスの導入
  • 企業内権限管理ソフトウェアの展開(2万人)
  • eDiscovery(米国民事訴訟での電子証拠の開示義務)システムの導入による360万ドルの対応コストの削減

クラウド化

  • データセンターの64%を仮想化、2012年は75%に
  • オンデマンドポータルの導入により、サービス提供時間を4分の1に短縮
  • データセンター内の複数リソースプール間でのキャパシティの共有化
  • 完全なオープンソースベースのクラウド環境を試験導入
  • データセンター数を26%削減、さらに35%の削減を実施中
  • ブレードサーバの導入によりハードウェアの総所有コストを29%削減
  • データセンターの消費電力を2年間で100万キロワット削減

IT部門の効率化

  • サービスカタログの約60%をITILベースに移行、2012年に完了予定
  • リーンシックスシグマの採用により、IT部門で2400万ドル、全社で約8億8300万ドルのコストを削減
  • 承認プロセスの簡素化など半年で21の改善プロジェクトを実施し、5万6000時間相当の業務時間と55万ドルのコストを削減
  • 仮想化を用いたサーバ統合で900万ドルのコストを削減
  • ネットワークを10GbEにより高速化

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