最新鋭のUltrabookでPCの運用管理はどう変わる?

新しいクライアント端末の選定ではモバイル性やパフォーマンス、省電力などのユーザーの希望が重要になるが、IT管理者側ではサポートや保守のしやすさなどの運用管理性もポイントだ。最新鋭のUltrabookがPCの運用管理にどのように貢献するのかをみていこう。

» 2012年05月30日 08時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]

PC刷新で重視したい管理性

 本連載は、インテル Core i プロセッサの搭載で軽く・薄い本体による高いモバイル性とパフォーマンスを両立するUltrabookに焦点を当ててきた。メーカー各社の製品ラインアップが充実し、ビジネス用のクライアントマシンとして選ばれる場面も広がりつつある。これまで4回にわたって、「外回り営業担当者の業効率化」、「経営層の視点で節電」、「OSからみた管理性」、「マルウェア防御」について利用場面を想定しながらUltrabookの可能性を掘り下げてきた。今回は、業務PCの更改を目前にしている情報システム部担当者A氏の視点で、IT資産管理と保守運用におけるUltrabookの効果を確認してみたい。

ユーザー側の2つのリクエスト

 わが社にとって今年は、クライアントPCを更改するタイミングだ。本社で使われている約500台のPCが対象になる。来年には各支社・支店のクライアントも更改しなければならない。

 5年前に現行のクライアントPCを導入した時は、業務アプリケーションとの親和性を優先したため、Windows XPのデスクトップPCを選択した。だが、この5年間で業務アプリケーションをクライアント/サーバ型からJavaベースのWebアプリケーションに作り変えた。そのおかげで今回は業務アプリケーションとの親和性を考慮する必要がないから選択肢を広げることができるのだ。

 更改にあたっては、情報システム部に二つのリクエストが寄せられた。一つは社長室直下の「職場改善委員会」から出されたもので、フリーアドレス制を導入したいからデスクトップPCではなくモバイルPCを採用してほしいというものだった。もう一つは経営陣と総務部から出されたもので、この先しばらく続くと思われる電力不足に対応できるように、できるだけ消費電力の少ないPCを選択してほしいということだった。

PC管理の負担低減も狙う

 クライアントPCの更改を機に、情報システム部は運用管理業務を効率化したいと考えている。クライアントPCの運用管理を担当するチームは主任のB君とその他の業務を兼任している数人だけだ。基幹業務システムや情報系システム、Webシステムを担当するチームに比べると、その業務は大きな負荷になっている。B君は時折、「A部長、また地方営業所でトラブルが発生しました。クライアントPCの問題が起こるたびに現地に行かなければならないので本当に大変です」とこぼす具合である。今回のクライアントPCの更改は、チームの人数を増やすことなく業務の負担を軽減できるチャンスだ。

 さらに、数年内にはクライアントPCをVDI(仮想デスクトップ基盤)環境に移行する構想もある。セキュリティ対策と管理性の向上がその目的だが、VDI環境への移行でシンクライアント端末としてもそのまま使い続けられるPCであることが重要だ。

タブレットのメリットはまだ小さい

 これらの要件に従って情報システム部で機種選定を始めた。フリーアドレスに対応するには、簡単に持ち運びできるモバイルPCという選択肢が外せない。モバイルPCの多くは省電力設計でもあるので、経営側からのリクエストに“一石二鳥”で応えられる。

 とは言え、モバイルPCにはいろいろな種類がある。モバイル性を最優先に挙げれば、タブレット端末も有力な候補に入ってくるだろう。わが社の業務システムのほとんどがWebアプリケーションになっているし、グループウェアなどの情報系システムもWeb化されているので、Webブラウザさえあればほとんどの業務ができる。だが入力作業の多い人にとってタブレット端末は、本体を立てかけるドックやキーボードを別に用意しなければならず、むしろモバイル性が損なわれてしまう。

 ドキュメント作成に使うオフィスアプリケーションにも課題がある。社内で利用している文書作成ソフトや表計算ソフトは、タブレット端末で広く採用されているAndroid OSやiOSといったWindows以外の環境では動作しない。ファイルの互換性がある別のアプリケーションを導入するという手もあるが、全社員に操作方法をトレーニングしてもらうのは非常に負担がかかる。

 情報システム部はAndroid OSやiOSの管理にも慣れていないので、こうした新しいOSを採用することはセキュリティ対策の観点からもリスクが高い。課題の多いタブレットの採用はわが社ではもう少し先になりそうだ。やはりノートPCが最善の選択肢といえる。

ノートPCの中からUltrabookに到達

 さて、選択肢はWindowsが稼働するノートPCに絞られた。導入コストを重視すればエントリーモデルだが、ネットブックは性能や小さい画面への不満などがあり、すぐに別の課題が出てくるはずだ。最低でも今後5年間の使用に耐えるPCであることが望ましいので性能にも余裕がほしい。

 ハイエンドモデルも検討した。機能や性能では申し分ないが、現在のほとんどの業務にはいささかオーバースペックであり、費用対効果を出しにくい。営業部以外は外出先にPCを持ち出すようなことがないものの、社内だけでも持ち歩く機会がそれなりにあるのでモバイル性は大事にしたいところだ。

 そうして絞り込んでいった結果、最有力候補となったのがUltrabookだった。薄くて軽いUltrabookなら、モバイル性に問題はない。消費電力も少ないし、性能面でも現時点では十分すぎる能力がある。Windowsと使い慣れたオフィス系アプリケーションをそのまま利用できる。

高い管理性で業務負荷を低減

 ユーザーにとってのメリットが多いUltrabook。だが、使い勝手だけでなく管理性も採用の決め手になった。Ultrabookには「インテル vPro テクノロジー」が搭載され、vProの「インテル アクティブ・マネジメント・テクノロジー(AMT)」など、運用管理業務を支援する機能がチップセットに組み込まれている。

 例えば、PCの電源がオフの状態でもリモートから電源を入れて管理やメンテナンス、サポート作業ができる。AMTにはOSに障害が発生した場合にリモートから回復させるアウトバンドマネジメント機能がある。この機能に対応した運用管理ソフトウェアを利用すれば、ネットワーク経由でリモートから電源を投入し、ブルースクリーンなどOSを起動できないような障害に対応を実施できる。通常の保守ではOSやアプリケーションのアップデートモジュール、セキュリティパッチを遠隔操作でPCに適用できる。

 これまでわが社ではアプリケーションのアップデート作業を、各部署の担当者にメディアを配布してお願いしていた。だが作業のたびに大なり小なりの問題が発生し、情報システム部が現場に急行しなければならないこともあった。インテル vPro テクノロジーを搭載したPCなら、クライアントPCが稼働していない夜間などに情報システム部が遠隔操作で一括してアップデート作業をできるようになる。かつてB君が、「本社から一括して管理できるので、“より早く・より正確”な管理ができますよ」と言っていたのを思い出した。

 B君にインテル vPro テクノロジーを搭載するUltrabookを挙げて相談したところ、「これらの機能はUltrabook以前のvProでも利用できたのですが、UltrabookのvProはもっと進化しているみたいですね。インテルのグループ企業のマカフィーは「McAfee ePO Deep Command」というセキュリティ対策を最新のvProに提供しているそうですが、この機能を活用すればマルウェアや不正アクセスからPCを保護できるそうです」と推薦してくれた。

最新鋭のvPro対応Ultrabookで期待される導入効果

 これだけ高い管理性を備えていれば、近い将来にVDI環境へ移行したとしても、安心して使い続けられるだろう。来年に支社・支店のクライアントPCをUltrabookにすれば、情報システム部の負担はもっと軽減されるかもしれない。社員にとっても、性能や使い勝手の面で十分に満足できるはずだ。


 こうしてA氏の会社では新しいクライアント端末にUltrabookを選択することになった。

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