デジタルマーケティングの時代

Webアナリストは企業を助ける「アクションヒーロー」を目指せ価値を生むためのWebアナリストの条件とは

膨大なデータから収益につながるような洞察を導き出し、実際の行動に促すことができれば、Webアナリストは企業を救う「ヒーロー」になる。

» 2012年07月03日 10時57分 公開
[山田竜司,ITmedia]

 アドビシステムズは2012年6月7日、「Adobe Innovation Forum 2012」を開催した。この記事ではジェネラルセッションで登壇した米アドビシステムズのエヴァンジェリスト、ブレント・ダイクス氏の講演とインタビューをまとめた。

 ダイクス氏はまずマーケティング部を取り巻く環境の変化に言及した。20世紀近代広告のパイオニア、ジョン・ワナメーカー氏は「マーケティングに関して広告費用の半分は無駄だが問題はどちらの半分か分からないことだ」という格言を残した。ダイクス氏によると現代のマーケターも同じ問題を抱えているという。ワナメーカー氏の時代と異なり、現在はあふれるほどのデータがある。しかし多くのマーケターはデータ重視の環境にいながら、どうデータを活用していいか分からないという。そのためデータをうまく使えないマーケターを救う人材が必要だが、誰でもマーケター支援ができるわけではない。デジタルマーケティングやテクノロジーを理解してデータを扱える、今までより多くの役割を担ったWebアナリストが必要だという。ダイクス氏はこのようなWebアナリストを「アナリティクスアクションヒーロー」と定義。「ヒーロー」としてどのように組織に貢献していくべきかを語った。

米アドビシステムズのエヴァンジェリスト、ブレント・ダイクス氏 

Webアナリストはレポートを出すためのロボットになってしまっている

 「ヒーロー」になるべきWebアナリストも現在、企業中の部署からレポートの提出を求められ、レポート作成業務に時間を使ってしまっている、とダイクス氏は話す。企業がデータ解析に関して行っているのは「データをレポートするだけで、分析を行わず、行動に落とし込まない」(ダイクス氏)こと。膨大なデータを取得してから、利益を導き出すには適切なステップが必要である。ステップを踏まずに利益を求めるとマーケターや経営陣を助けられず、Webアナリストの力が評価されない、と同氏は強調した。

 では組織のために結果を出すアナリストになるにはどうすればいいのだろうか。ダイクス氏は2つの領域に関して話した。ダイクス氏によると、まずは情報に価値を与えることであり、次にコミュニケーション能力を磨くことだという。

価値を手に入れるには1つ1つステップを積み上げる必要がある

情報に価値を与える

 情報に価値を与えるとはどういうことだろうか。会社のビジョン=戦略と、実際の行動の為の作戦=戦術にマッチする分析をすることだ、とダイクス氏は語る。前提として、データをレポートすることとデータを分析することは全く違うことだと周囲に理解してもらう必要がある。単にレポートするだけではなく、情報から洞察を導き、行動計画への落とし込むことが分析であるという。「事業戦略をすり合わせ、KPIや目標を測定し、レポートすることまではできても、実際に利益を確保する鍵となる分析ができていない企業が多い」とダイクス氏は語る。

 アナリストが実際のデータを分析する際は、社内の顧客である経営層やCMOと、ビジネス上のゴールをすり合わせ、ビジネス上の影響力が大きい順に優先順位を付けることが大切、とダイクス氏は話す。気をつけなければならないのは、経営層が示した戦略と中間管理職が描く戦術が合致しないケース。このような問題がある場合、ビジョンを戦術に落とし込むまでどのような制約、課題があるかを担当責任使者と協議することが必要だという。目的に合わせて優先順位付けをし、裏付け可能なKPIを作成する。こうして経営層のビジョンに合致し、事業責任者がマネジメントに実際使える分析をする準備に貢献する。さらに洞察を実行可能なアクションプランに落とし込み、分析の価値を証明し、最終的に収益化可能であることを示さなければならないとダイクス氏は語った。 

「アナリストはレポートを出すだけのロボットになってはならない」と語ったダイクス氏

コミュニュケーション能力を磨く

 ダイクス氏が繰り返し述べていたのはWebアナリストがいかに高いコミュニケーション能力を要求されているか、ということだった。経営層、事業責任者はもちろん、現場担当者とも主体的に良好な関係を築く必要がある。「マーケターや経営層を理解するためのビジネス的な洞察力や熱意がヒーローには重要だが、どんなに優秀な人であっても『環境』が伴わなければヒーローとして実力を発揮できない」と語った。環境を用意してもらうために会社の戦略を理解し、経営層の支援、信頼を得て分析に必要な環境、つまり、「必要なツール」や「クリーンなデータ」「スタッフのトレーニング」を用意してもらうことが重要だという。 

 また、アクションプランや啓蒙を受け入れてもらうためには相手を知り、伝わりそうな文脈を考える。根回しや前後の意思決定をサポートすることも必要で「洞察を伝える→洞察を最後までやりぬいてもらう→収益化」という流れを作り出し、きちんと循環させなければならない。さらにこうした行動を「俊敏に行える環境」こそが収益への早道だとダイクス氏は指摘した。このように分析能力とコミュニケーション能力、共に長けたアナリストは、アクション映画のように必ず現れる抵抗勢を味方につけ、マーケターと企業を助けることができる、アナリティクスアクションヒーローになることができるだろう、と語った。

 

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