「4つのITパワー」はテクノロジー活用のチェックリスト(2/2 ページ)

» 2013年04月26日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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ガートナーの長谷島眞時グループバイスプレジデント

 しかし、「課題解決型」で情報システムを整えてきた多くの企業にとっては、新しいテクノロジーを自社の競争優位へと昇華させるのは一筋縄ではいかない。

 ガートナージャパンでCIO向けのプログラムを統括する長谷島眞時グループバイスプレジデントは、「静かなるIT危機」と表現し、CIOに変革を求めている。同社が2000社を超える世界の企業のCIOに聞いた2013年の「CIOアジェンダ」で、IT戦略の優先度において日本と世界で相変わらず大きなギャップがあることもさることながら、ITの潜在力を引き出せていない企業の姿が浮き彫りになったからだ。具体的には、「ITの潜在力をどの程度引き出すことができたか?」という問いに、約半数のCIOが50%未満しか引き出せておらず、平均すると43%にとどまった。

 繰り返しになるが、「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」、そして「クラウド」といったテクノロジーは、新しいビジネスモデルを創造する潜在機会をもたらそうとしている。ガートナーでは、こうしたテクノロジーに長けたCIOやIT部門もその役割を大きく見直すべきだとしてきたが、「この数字はあまりにも低い」と長谷島氏。

 「新しいテクノロジーの登場は、ビジネスのさらなるデジタル化を可能とする。それを主導すべきCIOへの期待はますます高まっているが、大多数のCIOはIT部門の役割が今後も変わらないと考えている。その考え方や価値観にとらわれる限り、活用能力と進化するテクノロジーのギャップは広がるばかりだ」とソニーでCIOも務めた長谷島氏は警鐘を鳴らす。

CIO/IT部門の新たな役割

 ガートナーでは、これからのCIOは次の3つの役割を担う必要があるとし、ビジネスのデジタル化に向け、従来の「Tending」(手入れする)から「Hunting」(追い求める)や「Harvesting」(収穫する)へその役割をシフトさせていく必要性を強調する。

  • Tending:既存のITシステムやITオペレーションの徹底した改善・効率化
  • Hunting:さまざまな「デジタルビジネス」機会の渉猟・発見
  • Harvesting:直接的な貢献を示せるIT投資収益率 (ROIT) の収穫・刈り取り

 「柿が熟して落ちてくるのを待つの同じ。ITの改善や効率化は受け身でもその役割を果たせる。しかし、ビジネスのさらなるデジタル化が予測されている中で、その準備を怠るのは背信行為に近い。今からでも遅くない。CIOやIT部門は、自身を縛っていたルールや考え方を見直すべき時だ。テクノロジーのビジネスインパクトを見極め、それらを自社のビジネスに適切に取り入れ、新たな価値を創出していく役割を担うべきだ」と長谷島氏は話す。

ガートナーの鈴木雅喜リサーチディレクター

 ガートナーのリサーチ部門でITインフラストラクチャーとセキュリティを担当する鈴木雅喜リサーチディレクターも、IT部門がこれまで以上に視野を広げ、組織を変革すべき時だとする。

 「モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、そしてクラウドは、一つひとつ見ても大きなトレンドであり、企業にとっては成長のための明確なドライバー。これらが組み合わさると、さらにこれまでのITを超える大きなインパクトをもたらすはずだが、その潜在力にIT部門自身が気づいていない」と鈴木氏は話す。

 もはやITはコスト削減のためのツールにとどまらない。ビジネスのデジタル化は、商品やサービスの価値を高め、顧客の体験をも変えていく。

 「4つのITトレンドは、いわばテクノロジー活用のチェックリスト。これらを掛け合わせていけば、さらなる可能性が開けてくるはずだ」(鈴木氏)

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