ソーシャルメディアで加速するビッグデータ利活用とガバナンス課題ビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/2 ページ)

» 2014年06月18日 08時00分 公開
[笹原英司ITmedia]
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インターネット広告のエコシステムに求められる透明性と説明責任

 2014年5月1日に米国ホワイトハウスが公表した「BIG DATA: SEIZING OPPORTUNITIES, PRESERVING VALUES」(関連PDF)では、民間部門としてビッグデータに関わる主要産業に、インターネット広告業界が取り上げられている。米国ではインターネット広告がテレビ広告を上回る市場規模に拡大しており、ソーシャルメディアやビッグデータ分析に代表されるイノベーションが成長促進の大きな要因となっている。その反面、プライバシー/個人情報保護対策など業界全体のガバナンス確保も課題になっている。

 インターネット広告は、消費者や直接的に消費者に関与する企業(例えばニュースサイト、ソーシャルメディア、ECサイト)、間接的に消費者データを利用する企業(例えば電子決済サービス事業者、マーケティング分析サービス事業者)から構成されるエコシステムによって支えられている。

 通常、Webサイトの発行者と広告主の間には、メディアレップ、アドネットワーク、コンテンツ制作会社、メディアプランナー、効果測定機関などが介在し、インターネット広告業界の自主規制ルールに従い、消費者に告知した上で、ユーザー情報を収集する。そのデータを生かし、行動ターゲティング広告やデマンドサイドプラットフォーム(DSP)、サプライサイドプラットフォーム(SSP)などアドテクノロジーを駆使した様々なサービスを提供している。

 インターネット広告では、プライバシー/個人情報保護対策の観点から、オプトアウト方式による行動履歴の追跡拒否(Do Not Track)機能の提供が欠かせない。しかしながら、複数の事業者が介在する中でいかに透明性を確保するかなど、エコシステム全体でのガバナンスが大きな課題となっている。ソーシャルメディアの場合、利活用の成熟度が高まるにつれてビッグデータの成長が加速する反面、コンテンツの送り手と受け手が頻繁に入れ替わってWebサイト上でのやりとりが複雑化したり、ユーザー本人が意識しないままプライバシー/個人情報が増加したりする。このため、透明性や説明責任の確保に対する配慮が特に必要である。

グローバル化するソーシャルデータの2次利用、ベネフィットとリスク

 TwitterやFacebookなどの代表的なソーシャルメディアでは、公開APIを介して投稿データを取得できる。間接的に消費者のソーシャルデータを利用する企業では、複数のソースからデータを収集・集約・分析しているケースが多く、投稿データの高度解析、リアルタイム監視など、企業による2次利用のための外部サービスも続々と登場している。ビッグデータを二次利用できることで、非構造化データの高度な自動識別技術、ソーシャルデータに特化した分析アルゴリズムなど、新たなイノベーションが生まれ、新規ビジネスや雇用の創出機会も拡大していく。

 しかしながら、ソーシャルデータの二次利用にかかわるユーザー本人による同意の取得、個人データの匿名化/暗号化など、プライバシー/個人情報保護に関する運用ルールは未整備であり、各事業者の業務プロセスにおける透明性や説明責任を担保する仕組みも発展途上の段階だ。ソーシャルメディアの中には、海外のクラウドデータセンターを利用してサービスを提供するケースも多く、ソーシャルデータが国境を超えて移転し、2次利用される場合の取り扱いなど、国際間ルールの整備も不可避である。

 政府の「パーソナルデータに関する検討会」では、パーソナルデータの利活用を促進する環境整備に向けた議論が行われてきた。だが、グローバル化したクラウド環境を基盤とするインターネット広告やソーシャルデータ分析の分野は、米国やEU諸国が推進するビッグデータ戦略、消費者保護政策との調和・整合性確保にも注意を払う必要がある。


 次回は政府・自治体が推進するオープンデータ戦略とビッグデータ分析に関わるプライバシー/セキュリティ動向について考察する。

著者者紹介:笹原英司(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)

宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所などでビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。

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