「データが送れなくて開発が進まない」――ホンダがハイブリッドクラウドを導入したワケNTT Communications Forum 2014 Report

NTTコミュニケーションズが開催している年次イベントで、ホンダが導入事例を紹介。ハイブリッドクラウドを利用してCADデータの高速共有を実現し、コストダウンにも成功したという。

» 2014年10月10日 07時00分 公開
[池田憲弘,ITmedia]
photo 本田技研工業 IT本部システムサービス部 藤田幹也氏

 NTTコミュニケーションズが開催している年次イベント「NTT Communications Forum 2014」(10月9日〜10日)では、各パートナー企業が自社の導入事例を紹介している。中でも本田技研工業(ホンダ)が先日発表した「クラウドを利用したCADデータの共有基盤」は、導入の効果が高かったこともあり、注目を集めていた。

 今や欧米、中国、北南米など世界23カ国で製品を生産するグローバル企業となったホンダ。開発拠点も世界中に展開しているが、自動車や二輪車のトレンドやニーズというのは各地域で異なる。そのため、「各地域のニーズに迅速に答えるため、各地域で開発の“自立”を目指している」(本田技研工業 IT本部システムサービス部 藤田幹也氏)という。

 しかし、その際に部品や原材料を提供するサプライヤーとの連携が問題となった。自動車を開発する際には、サプライヤーとデザインや部品の3D CADデータなどを何度もやりとりを重ねて調整していく。部品調達もグローバル化していくなか、CADデータの転送が“壁”となった。「北米や欧州、日本ではデータ転送インフラが整っているが、中国や南米、アフリカなどではサプライヤーのオンライン環境が整っていないケースも多い」(藤田氏)。

 そのため、データ転送に時間がかかったり、中には紙面の図版を郵送で2週間かけて送付するケースもあり、それが開発の遅れにつながっていたという。またオンライン環境を維持するために、プロバイダーへ支払う費用が重荷になり、オンライン環境を断念するサプライヤーもあったという。

photophoto ホンダが抱えていた課題は、CADデータの転送に時間がかかり、地域ごとの開発が遅れてしまうことだった

 こうした課題を解決するため、ホンダは製品や部品のCADデータなどを共有、加工できる基盤「Global Supplier Network」(GSN)を構築した。

 NTTコミュニケーションズのクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」および「Bizストレージトランスファー」を導入、従来はグループ内の各社でバラバラに構築していたクラウドサービスを一元化したのだ。「弊社が複数のクラウドサービスを使い分けていたため、サプライヤー側も煩雑だと思う部分があったはず」(藤田氏)。

photophoto 旧システム(左)と新システム「Global Supplier Network」(右)の比較。Global Supplier Networkではホンダのプライベートクラウドに、「Bizストレージトランスファー」を導入するハイブリッドクラウドを採用した

 GSNの導入によって、サプライヤーの負担もゼロになり、データ転送にかかる運用コストは3割減ったという。データ転送に承認機能を実装したり、CADサーバと連携して、多拠点の複数ユーザーによる同時送受信に対応するなど機能も強化しており、今後は中国、欧州、南米などで導入を進めていくそうだ。

 「良いものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする、というホンダの2020年ビジョンを確かなものにするためには、グローバルでの製品開発、調達、生産強化が急務となっている。今後もグローバルなサプライチェーンマネジメントを推進していく」(藤田氏)。

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