茨城県笠間市が、介護事業用のクラウド基盤を導入した理由とは?データを集約してリアルタイム共有(2/2 ページ)

» 2014年11月05日 08時00分 公開
[池田憲弘,ITmedia]
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「本業に専念できるようになる」ことが最大のメリット

 まずは「市役所に通わなくてよくなったことがうれしい」というケアマネージャーの声が多かったそうだ。これまで介護事業者が、市の窓口や要介護者の自宅に出向いて入手する必要があった要介護認定に関わる資料などを、PCやタブレット端末で入手できるようになったためだ。「データ集めにかかる時間が短縮されたことで、打ち合わせにかかる時間が減り、本来やるべき業務に時間を使えるようになった、という反応が多かった」(北野氏)

 また、要介護者の容態が悪化して救急車が出動する際に、救急隊員が速やかに対象者のこれまでの健康状態や介護状況、緊急連絡先などの基礎情報を把握した上で、病院や家族へ迅速に連絡することが可能となる。「要介護者の急変に気付くのはヘルパーさんというパターンは多い。医療関係者や救急隊員にリアルタイムで状況を共有して相談するといったこともできるところはいい」(北野氏)

 予算を投じてシステムを本格的に導入することを決めたのは、実証実験を行っている最中だという。3月に実験が終わった後に、実験を通じて得られたフィードバックを基にシステムに改修を加えるとともに、予算やランニングコストの精査を行い、10月の本格導入に踏み切った。現在は笠間市と家族をはじめ、笠間市内の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などとの情報共有をしているが、救急隊などとの情報共有も検討しているという。

 「同じような取り組みを介護事業者が始めている例はあるが、自治体がデータを管理するのは珍しいと思う」と北野氏は話す。

 扱う情報が個人のプライバシーに関わるため、情報のセキュリティが重要になるが、TLSなどの標準化された暗号化方式に日立独自の技術を組み合わせた二重暗号化技術や、GPSを使ってシステムを利用できる場所を設定できるなど、公衆回線であっても安全性が高い情報共有を実現した。日立は笠間市での実績を基に「地域包括ケア支援自治体クラウドソリューション」を2014年7月から全国の自治体向けに提供している。

 今後は市内全域の介護、医療関係者を対象に「介護健診ネットワーク」の導入を推進し、利用機関数を拡大していくとともに、同システムに蓄積される要介護者に関するケアプランや介護・医療関係者のサービス提供計画などの情報を活用して、要介護者への新たなサービスも創り出していく考えだ。「市内には約100の介護事業所があるが、セキュリティの問題をクリアした事業所から徐々に導入していきたい」と北野氏はアピールした。

photo 日立の「地域包括ケア支援自治体クラウドソリューション」
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