AWSがクラウドのハイブリッド利用を勧める理由Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年06月08日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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ハイブリッド利用はあくまでも通過点

 4つ目は「急拡大する企業のデータ活用」。企業のデータ活用が急拡大する中で、クラウドはそれを支えるIT基盤として当たり前になりつつある。AWSでもデータの収集から保管、分析、共有といった一連の処理を行うフルマネージドサービスを用意している。さらに効果的なデータ活用に向けて、機械学習サービスも新たに提供開始したという。

 5つ目は「古い足かせからの開放」。例えば、データベース。これまでオンプレミスでは高価で独自仕様の製品が広く利用されてきたが、クラウドでは安価なオープンソースソフトが使われるケースが多いという。ただ、オープンソースソフトは性能不足を指摘する声もあり、AWSでは自社ブランドで高性能ながら手軽に利用できるデータベースサービスを用意している。いずれにしてもオンプレミスの足かせから開放されるというのがAWSの主張だ。

 6つ目は「絶え間ない変革」。AWSではユーザーニーズに応える形で機能やサービスの改善・拡充に取り組んできた。そのために積極的な投資を行う一方で、2006年のサービス開始以来これまで9年間で48回もの値下げも実施してきたという。

 7つ目は「ゼロイチの判断ではないクラウドへの移行」。この点については後ほど取り上げる。

 8つ目は「増加するAWSクラウドへのオールインワン」。オールインワンとは、企業の業務システムをオンプレミスからクラウドへすべて移行することだ。「今やAWSウラウドへのオールインワンも当たり前のことになってきている」(長崎氏)という。



 これら8つのポイントの中で、筆者が非常に興味深く感じたのは7つ目。ゼロイチの判断ではないクラウドへの移行とは、すなわち「クラウドの効用は理解しつつも、既存のIT資産を移行するのはそう簡単にはいかない」という企業の悩みを代弁したものだ。

 長崎氏は「そう悩まれるお客様は少なくない。多くのケースは、中長期計画を策定し、一部処理のハイブリッド利用から始めて、オンプレミスシステムの更改などのタイミングを図りながらAWSへの移行を検討されている。AWSでもハイブリッド利用に向けたサービスを取り揃えており、強力に支援していく」と、ハイブリッド利用にも注力する姿勢を見せた。

photo ハイブリッド利用を支援するAWSサービス群(出典:同上)

 AWSはオールインワンに象徴されるクラウドシフトを勧める急先鋒というイメージが強いが、長崎氏が言うようにゼロイチの判断ではない企業が少なくないのも事実。そこは現実路線を踏まえたということだろう。ただ、同氏はキッパリとこう語った。

 「ハイブリッド利用はあくまでも通過点。われわれは、5〜10年後にはほとんどの業務システムがクラウドに移行すると確信している」

 これがまさしく、AWSがハイブリッド利用を勧める理由である。付け加えておくと、長崎氏は「ハイブリッドクラウド」とは一度も表現しなかった。これも「通過点」に通底する考え方だ。筆者も全く同感である。



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