まずプロジェクトの実行に必要となる情報整理、前ページのDについての話から。DはBと異なり、進捗確認に加えて対策を講じることも目的に入ります。これはCにある「何を取り入れるか」とほとんど同じ作業となります。
「情報収集」と「情報整理」をする目的とタイミング | ||
---|---|---|
プロジェクトの計画 | プロジェクトの実行 | |
情報収集 | A.計画を立てるため(計画立案・アイデア出し) | B.計画通りに進めるため(進捗報告) |
情報整理 | C.計画を立てるため(何を取り入れるか) | D.進捗の確認や対策を検討するため(遅れていないか、何を取り入れるか) |
例えばプロジェクトが予定より遅延していたとしましょう。現場の意見を聞くと「人が足りなくて開発のスピードが滞っている」「過重労働が続いて、現場のモチベーションが下がっている」「そもそも無理な納期設定だった」などとさまざまな情報が入ってきます。
これらの情報を整理し、優先順位を付けて解決にあたっていくのがマネジャーの仕事。順位をつける際には“マトリクス”のフレームワークを使うと便利です。「緊急度」と「重要度」の2軸で4カテゴリのマトリクスを作り、出てきた項目1つ1つに対してマッピングをし、緊急度と重要度両方が高いエリアに入った項目から採用していくというものです。下の図をご覧ください。
1〜4は着手する順番です。2番目に「重要度が高く、緊急度が低い」カテゴリがあることに対して意外に思われた方もいるかもしれません。しかし、これこそが対策やアイデアを計画に入れる際のポイントです。
3番目の「緊急度が高く、重要度が低い」カテゴリについては、緊急さは考慮すべきものではありますが、1と3のこと(緊急度が高い)だけを考えて行動していると、そのうち2の緊急度が高まって1に入ってきます。そうなってしまうと結果として、さらに追い詰められる結果になりがちです。
ここは中長期的にタスクを捉え、2のエリアを先に取り掛かることを常に考えておくとよいでしょう。目の前のことに意識が割かれるのは、各メンバーも同じこと。特に進捗報告で2に入る情報は出づらいもので、現状把握(遅れてないか)だけではなく、今後起こりそうなリスクなど先を見越した情報を丁寧に聞いていく必要があります。
この作業に慣れないうちは、多くの項目が緊急かつ重要なものに見えてくるかもしれません。そういうときは各軸で強引に順番を決め、相対的な位置関係で配置するのが良いでしょう(5個中3番目であれば真ん中に置く、など)。
今回は2つの軸を「重要度」「緊急度」としましたが、このほかにも「効果」「コスト」「取り組みやすさ」など、さまざまなものが考えられます。プロジェクトやその時々の状況に応じて要素を選ぶと良いです。
情報の収集と整理は切っても切れない関係にあります。決めた結果はきちんとメンバーに伝え、その都度軌道修正をしていきます。この際、軌道修正や間違いがあるのは仕方がないこと、むしろ普通のことだと思うようにしましょう。最も悪いプロマネは「何も決められないプロマネ」なのですから。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.