「2020年までに全ての学校で1人1台のタブレットを導入したIT授業を実現する」――。文部科学省がそんな目標を掲げていることもあり、近年、小学校や中学校におけるタブレット導入が進みつつある。しかしその一方で、タブレット用の教育ソフトやメソッドはその流れに追い付いていないのが現状だ。
そんな流れを変えようというのが、大手楽器メーカーのヤマハが手掛ける音声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」を使った小中学校向け教育パッケージ「VOCALOID Education」だ。タブレットのタッチ操作で作詞作曲ができるソフトで、楽譜が読めない子供でも簡単に音楽が作れるという。
VOCALOID Educationは子供向けのソフトであるため、一般ユーザー向けのVOCALOIDよりもシンプルな画面UIが特徴だ。画面左にピアノを模した鍵盤があり、ドラッグ&ドロップでノート(音符のようなもの)を譜面上に並べていく。1つ1つの音に文字を入力し、再生ボタンを押すとボーカロイドが歌ってくれる仕組みだ。旋律は複数入力でき、合唱(合奏)も可能。音楽記号が読めなくても直感的に作曲でき、楽譜に対する苦手意識を軽減できるとしている。
iOS向けのVOCALOIDアプリや、既存のVOCALOIDを授業に導入している学校は既にあり(参考記事)、本社のある静岡県浜松市を中心に事例が増えてきているとのこと。同社の調査によると、授業で学級歌を創作した7割以上の児童が「今後も曲作りを続けてみたい」と答えた小学校もあるなど、満足度は高いようだ。
「作曲を通して子供たちに音楽の楽しさを知ってもらい、自信を持ってもらいたいですね。今まで音楽創作の授業がしづらいと感じていた若い先生を中心に、VOCALOIDへの注目が集まってます」(説明員)
現在のところ発売時期は未定で、今夏以降、試験導入を進める計画。「1ライセンスで1万円を切るくらい」(説明員)の価格を想定しており、学校導入の場合はボリュームライセンスも検討しているという。
VOCALOIDで作成した音楽がWeb上で有名になったり、カラオケに導入されるなど、ITの進化で昔に比べて格段に音楽創作のハードルは下がっている。教育向けタブレットとVOCALOIDが音楽の授業を一変させる日も遠くはなさそうだ。
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