三浦さんによれば、スマートフォンやタブレットの普及によって、スポーツ界における映像の活用は一気に進んだという。カメラが固定ではなくなり、大型のディスプレイとの連携も簡単にできるようになった。競技映像に加えて、指導者育成用の映像や選抜の課題といった動画も増えているとのことで、データを蓄積するプラットフォームが整った今、映像をどう活用するかという点が重要になりつつある。
例えば柔道では、対戦者の競技映像を練習相手に見せ、選手の癖なども踏まえた動きで実践的な調整を行っているという。競泳ではレース展開の分析に使われており、スピードスケートやウェイトリフティングといった競技でもデータベースが使われているそうだ。「今後はトップアスリートから学生、ジュニアへと活用の幅を広げていきたい」と三浦さんは話す。
そして、ITの進化も映像活用の幅を広げる一因になる。三浦さんが注目しているのはビッグデータとディープラーニングの組み合わせだ。
「人工知能やディープラーニングといった技術が発展すれば、今は手動で入力している選手名や試合展開(ポイントなど)、そして技の名前といった情報も、映像の中から取り出せるようになりそうです。4K、8Kと画質が上がれば、会場全体を一気に撮影でき、撮影に割く人員を減らせるはず。自動化によって、試合に勝つための分析に注力できるようになるでしょう」(三浦さん)
トップアスリートを科学とITで支える――それが三浦さんが所属するスポーツ科学部のミッションだ。リオデジャネイロオリンピックを超え、東京オリンピックが開催される2020年には、競技映像がスポーツの世界にどんな影響を与えているのだろうか。
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