クラウド化が加速するERP、市場規模は前年比4.4%増矢野経済研究所調べ

矢野経済研究所が、国内ERPの市場動向調査結果を発表。2016年のERPパッケージライセンス市場は前年比4.4%増で、伸び率はやや減速傾向だったが、クラウド化は本格的に進展する見通しだという。

» 2017年08月08日 14時20分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 矢野経済研究所は8月7日、国内のERP(Enterprise Resource Planning)パッケージライセンス市場に関する調査結果を発表した。

 2016年のERPパッケージライセンス市場は、エンドユーザー渡し価格ベースで1130億4000万円と、前年比4.4%増になった。「ここ数年の伸び率と比較するとやや減速傾向」(同社)という。

 2015年はマイナンバー(社会保障、税番号)制度施行を契機とした販促活動により、一部のERPパッケージベンダーが人事給与分野を中心に業績を伸ばしたが、2016年は法制度の改正やトレンドといった要因がなかったことが影響したと同社は見ている。

 一方、ユーザー企業の景況感は底堅く、ERPへの投資は継続しているが、単なる老朽化対策によるシステムリプレースにとどまらず、デジタル変革による経営環境の変化に対応するため、経営基盤であるERPを見直すユーザー企業が増えており、ERP市場の成長を支えていると分析。この傾向は今後も続き、2017年の同市場は、前年比4.8%増の1185億円(エンドユーザー渡し価格ベース)になると予測している。

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 ERPパッケージベンダーの2016年の動向は、前年比2桁増など、市場平均以上の成長を遂げた企業と、特にマイナス要素がなくても売上高が横ばいやマイナスになった企業とに、二分したという。

 昨今、主要ERPパッケージベンダーは、クラウド化やデジタル変革への支援などをコンセプトに、高速処理やAI(人工知能)搭載などの機能を持つ「モダンERP」と呼ばれる新タイプの製品をリリースし、ユーザー企業の評価を獲得。経営環境やITの大きな変化に伴い、ERPを進化させている。

 さらに、今後はERPのクラウド利用が本格化すると分析。早くからクラウドにシフトしたCRM、SFAやその周辺システム(就業管理、タレントマネジメントなど)と比較し、基幹システムであるERPはクラウド化が遅れていたが、その風向きは変わったと同社は見ている。

 1〜2年前までは、ERPでクラウドを利用するのは、ITの活用に積極的な大手ユーザー企業と、手軽なサービスを求める中小零細企業に両極化し、保守的な姿勢が強い中堅企業はクラウド利用に踏み切れない傾向が見られたが、現時点では企業規模を問わず、クラウド型が採用され始めているという。導入スピードの早さ、運用コストの削減、コンプライアンスを確保しやすいといったクラウド利用のメリットが、ユーザー企業に幅広く評価されるようになったと同社は見ている。

 調査は2017年4月から7月にかけて、ERPパッケージベンダーへの直接面談で実施。調査対象としたERPパッケージは、基幹業務データを統合して情報システムを構築するための基幹業務管理パッケージソフトウェアを指し、基幹業務の一部機能のみを持ち、ERPパッケージのモジュール(構成要素)となるパッケージソフトウェアも含めた。

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