秋山さんも赤木さんも、「人事制度やオフィスは作って終わりではない」と、強く思っている。使いながらさらによくしていけるよう、変化の余地を残しておこうという意識がある。
7月に移転が完了してオフィス移転プロジェクトは解散したが、新たにオフィス改善委員会が立ち上がった。オフィスの使い方や改善点について社員から意見を集め、対応を進めていく予定だ。
現在は赤木さんが設計時の意図をインプットしながら議論しているが、「ゆくゆくは私も抜けて、設計の意図は知らなくても改善がうまく進んでいる状態、さらには委員会がなくても現場で工夫して面白い働き方が生まれるような、そんな形になるといい」という将来像を描いている。
このような話から、「同僚を信頼して任せる」というネットプロテクションズの社風が感じられる。
赤木さん自身、学生時代にデザインを勉強していたものの、オフィスづくりの実務は未経験。移転プロジェクトに手を挙げたところ、大きな役割を任された。プロジェクトチームに参加していた執行役員に適宜相談はしていたが、物件の選定なども含め、かなりの部分を「自分で判断する」という経験を経て、自らの成長を感じられたという。
任せてもらえるというのはうれしい半面、場合によってはプレッシャーになるだろう。しかし、赤木さんは、「社長すらほとんど口を出さずに信頼してくれて、のびのびやることができた」と振り返る。
「うまくいかなかったり悪用されるような可能性もなくはないですが、それを心配するよりも、間違いが起きないようにルールをガチガチにして自由度が減り、社員の幸福度が下がってしまうことの方がデメリットが大きいと考えているのです。うちの会社は、性善説がベースになっていますから、プロジェクトを進めやすかったですね」(秋山さん)
リスクは織り込み済みで、一貫して社員の自律を促すやり方を選択するのがネットプロテクションズ流のやり方であり、それができるのは、ビジョンに共感できる人が集まる状態を努力して作ってきたことが大きい。あらためて、共通のビジョンを持つことの重要性や強さを感じさせられる話だった。
【聞き手:後藤祥子、やつづかえり】
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