ただのビデオ会議システムにあらず、Zoom日本法人トップが語る「Zoomの正体」Weekly Memo(1/2 ページ)

コロナ禍による在宅勤務の急増で一気に普及したビデオ会議システム「Zoom」。ただ、運営会社の日本法人トップによると、その機能はビデオ会議にとどまらないようだ。果たして、その正体とは――。

» 2020年08月03日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]

Zoomの開発者兼創業者はCisco Webex開発の中心人物

 ビデオ会議システム「Zoom」を提供する米Zoom Video Communications(以下、ZVC)といえば、今注目されている急成長中のITベンダーの一つだろう。Zoomは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてテレワークによる在宅勤務が急増したのに伴って、一気に普及した。

 なぜ、Zoomはユーザー数を急激に伸ばせたのか。今後のポテンシャルはどうか。直近の事業の状況はどうなっているのか。こうした疑問から同社をぜひ取材したいと思っていた筆者は、日本オラクルが2020年7月29日に開催した顧客向けオンラインセミナーで、ZVCの日本法人ZVC Japanのカントリーマネジャー、佐賀文宣氏の講演を聞いた。

Photo ZVCの日本法人ZVC Japanのカントリーマネジャーを務める佐賀文宣氏

 佐賀氏が日本オラクルのセミナーに登壇したのは、ZVCがサービスのクラウドインフラとして2020年4月下旬に「Oracle Cloud」を採用したからだ。この点については後ほど説明しよう。まずは上記の疑問を踏まえた上で、佐賀氏の講演から筆者が注目したポイントを3つ挙げてみたい。

 1つ目は、「ZVCの成り立ちとZoomの特長」についてだ。同社は2011年にカリフォルニア州サンノゼで、今もCEO(最高経営責任者)を務める中国系米国人のエリック・ユアン氏を中心に設立された。

 佐賀氏によると、ユアン氏はCisco Systems(以下、Cisco)がかつて買収した企業のビデオ会議システム「Webex」を開発したエンジニアの中心人物でもある。同氏はCiscoに幹部としてしばらく在籍したが「もっと利用者がハッピーになれるものをつくりたい」との思いから、Ciscoを辞めてZVCを創業した。

 それから9年。ZVCが全世界で抱える従業員数は2800人超、顧客社数は75万社以上になり、2020年2〜4月期の売上高の伸びは前年同月比2.7倍、2021年1月通期の売上高はおよそ18億ドルで、前期比およそ3倍と見込まれている。

 とりわけコロナ禍が同社の事業に与えた影響は大きく、2020年4月には1日当たりの利用者が3億人を超え、2020年に入ってから4カ月で30倍に急増したことは語り草になるつつある。また、図1は3月から4月にかけてグローバルでのミーティングアプリケーションのダウンロード数の推移を描いたグラフだが、競合製品との勢いの差は一目瞭然だ。

Photo 図1 3月から4月にかけてグローバルでのミーティングアプリケーションのダウンロード数の推移(出典:Bloomberg Opinion、ZVC 佐賀氏の講演より)

 さらに、図2は佐賀氏がZVCの主要な顧客として挙げたものだが、記載された20社のうち半数が製品の連携パートナーと見て取れる。これは意図的だろう。実はこの点が、次に注目するポイントにも関係してくる。

Photo 図2 Zoomの主要な顧客(出典:ZVC 佐賀氏の講演より)
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ