2023年近年でもっともIT環境が変化した1年だったのではないでしょうか。今年読まれた記事を振り返りながら変化を振り返ってみます。
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2023年のIT環境は近年でもっとも変化した1年だったかもしれません。IT戦略を担う皆さまにとっては新たな技術の登場で「攻めのIT」も「守りのIT」も大きく見直す必要に迫られたのではないでしょうか。本稿ではこの1年でよく読まれた記事から2023年を振り返ってみたいと思います。
IT領域では何といっても生成AI(人工知能)の急速な普及に触れないわけにはいかないでしょう。2022年末に「ChatGPT」が公開されてから約1年しかたっていませんが、現在、すでに多くの企業が生成AIを含むAIビジネス利用に向けて準備を進めている状況です。過去、データ可視化やデータドリブン経営を目指してBIツールやデータカタログ整備を進め、「データ活用組織」を目指してきた企業は、この下地を生かしてより積極的にAI活用を進め始めています。
特にOpenAIに投資したMicrosoftが「Microsoft Copilot」や「Azure OpenAI Services」でいち早く、われわれがすぐに使える生成AIを公開したことはこうしたトレンドを強く後押ししました。
選外ですが、生成AI開発をリードしてきたOpenAIのサム・アルトマン氏解任をめぐる一連の騒動は、AI開発がはらむ危うさや汎用人工知能(AGI)開発と倫理の問題にあらためて注目するきっかけになりました。
2024年に入って各国がAI倫理に関する議論を急速に深めていましたが、2023年12月9日(現地時間)に欧州連合(EU)域内で一律に適用されるAIの包括的な規制枠組み規則案(AI法案)に関して、暫定的な政治合意に達したと発表しました。EU議会はこれを「世界初のAI法案」と位置付けており、今後のAI規制の基準となると目されています。今後、何らかのAIを使ったサービスやアプリケーションを提供する場合、リスクや透明性の評価が必須となります。エンジニアリング重視でどんどんと開発してきた企業もAI倫理に対するコストを掛ける必要が出てくるでしょう。
人材不足の一助としてAIの力を借りたいと考える企業は多いようで、「業務の自動化」を検討するに当たっても従来のRPAやiPaaSに加えて複数の生成AIエンジンを組み合わせたマルチモーダルなAI活用を目指した検証も進んでいるようです。
ただし、IT人材そのものの不足はまだまだ解消していません。IT知識が豊富でビジネスドメイン知識があり、上流工程でIT企画を立案できるような高度な人材は「取り合い」の状況が続いています。IT人材はスキルのアップデートができれば比較的良い待遇で企業に招かれることが多いようです。こうした事情を反映してか、今後、高収入を狙えるIT資格は何かを調査から示した記事は大変多くの読者の関心を呼びました。
ITベンダーやITコンサルティング企業が企業のデジタル企画担当者のように協力するサービスを打ち出したことも今年の特徴と言えるでしょう。もともとマネージドサービスなど、企業のIT環境の運用を代行するようなサービスはありましたが、より上流の工程から入り込む体制を取るケースが目立った一方で、内製化を進め企業が主体的なIT戦略を組み立てて企業を強くする目的を明確化し始めたのも2023年の特徴と言えるでしょう。
2024年のIT環境はどう変わるでしょうか。AIの本格的な利用が進む中、調査会社のガートナーはコンピュータープログラム同士をつなぎ合わせたビジネスプロセスの自動化を予測しています。今後は、いっそうマシンリーダブルなデータを持つことの価値が高まることでしょう。OT領域と呼ばれるIoT関連のデータは、ビジネスアプリケーションのデータとは分けて考えられることが多かったのですが、今後はそうした垣根を越え、ビジネスアプリケーションユーザーが積極的にOT領域のデータを活用するケースが出てくるでしょう。事業ドメインごとに個別に実装されてきたOTシステムも、いよいよIT部門が一括してガバナンスを効かせて活用するために、全社的な環境整備が求められます。
こうした環境変化を考えると、企業のIT戦略部門とITベンダー、ITコンサルタントとの関係も従来の枠組みを越えた新しいものに変化していくことでしょう。2024年もITmedia エンタープライズは企業IT戦略立案のヒントとなる情報を紹介していく考えです。ぜひ編集部に皆さまのご意見をお寄せください。
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