NECが2025年4月28日に開いた決算会見では森田隆之氏(取締役 代表執行役社長 兼 CEO)と藤川 修氏(取締役 代表執行役 Corporate EVP 兼 CFO)が説明した。森田氏は2025年度に向けた思いとして、「現在進行中の中期経営計画の最終年度となる2025年度は、目標達成とともに2026年度以降の成長を見据えた“スタート台”をしっかりとつくる年にしたい」と述べた。
同社が発表したITサービスにおける国内受注状況は、通期で前期比12%増(第4四半期で前期比7%増)と伸長した。業種別では、パブリックが同31%増(第4四半期で同18%増)、エンタープライズが前期並み(同6%増)、その他が前期比5%増(同1%減)となった。エンタープライズの内訳では、金融が同9%減(同5%増)、製造が同9%増(同1%増)、流通・サービスが同5%増(同6%増)だった(表3)。
この受注状況について、森田氏は業種ごとの動きも合わせて次のように説明した。
「受注の動向については、全体として通期で前期比12%増となり、パブリック領域を中心に引き続き堅調に推移した。パブリックは自治体向けシステム標準化の案件増に加えて、中央省庁向けの案件が堅調だった。エンタープライズの各分野を見ると、金融は前期実績の反動減があったものの案件のパイプラインは引き続き旺盛な状況だ。製造は選別受注が一巡しDX関連の案件が増えた。流通・サービスも堅調に推移した。その他も子会社のアビームコンサルティングが引き続き好調だ」
NECはこうした受注状況を踏まえ、2025年度の業績予想を明らかにした。ITサービスでは、売上収益として前期比0.9%減の2兆150億円(うち国内は同0.7%減の1兆7000億円)、営業利益として同10.9%増の2630億円(うち国内は同4.5%増の2250億円)を見込む。森田氏によると、「国内は法人向けPCの販売機能移管に伴って減収するものの、継続的な収益性向上によって増益を計画している」とのことだ(表4)。
こうした業績見通しとともに最近の国際情勢も踏まえて、NECは2025年度の国内IT需要の動きをどう見ているか。
「2025年度の国内IT需要については、現時点でマクロ経済の動きがどうなるか見通せないので、まずは第1四半期(4〜6月)の状況を注視したい。業績予想の数字については、どんな状況になろうとも達成するつもりで示している。お客さまの業績への影響が大きくなれば、IT投資が抑制されるリスクはある。ただし、DXについてはどの企業も本業の競争力に関わる取り組みになってきているので、スローダウンするわけにはいかないのではないか」(森田氏)
以上が富士通とNECにおける2025年度の国内IT需要に対する見方だ。最近の国際情勢の不透明さもあってほぼ同様の懸念を示していることがお分かりいただけるだろう。その中でも印象的なのは、異口同音に「DXは今や企業の競争力に直結している」ことを強調している点だ。
これを踏まえて、最後に筆者からも一言。2025年度のDXの目玉は間違いなく「AIエージェント」だ。AIエージェントについては本連載でもこのところ頻度高く取り上げているのでそれをご参照いただくとして、なぜAIエージェントへの取り組みを急ぐべきかというとAIエージェントを「育成」する必要があるからだ。
どんなところからでも早く取り掛かって使い方を習得していけば、それだけ早く競争力に直結する可能性が大いにある。これまでの取材でその点を確信しているので、この機会に訴求しておきたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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