連載
» 2005年06月30日 12時00分 公開

オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(10):ベトナムを徹底分析! 中国とどっちがいい? (3/3)

[幸地司(アイコーチ有限会社),@IT]
前のページへ 1|2|3       

日本のシステム保守・運用を知るベトナム人が興した会社

 ベトナムのホーチミンに、日本の開発現場を熟知する1人のベトナム人が立ち上げた会社があります。社員数40名の小さなソフトハウスですが、売り上げの大半は、日本とのオフショア開発から生じており、今後、急成長が見込まれる会社です。その会社は、フジネット(FUJI COMPUTER NETWORK Co., Ltd.)です(筆者注:社名の「フジ」は富士山に由来しており、富士通や富士フイルム、フジTVは一切関係ありません)。

 社長のフォン(Nguyen Dang Phong)氏は、いまから15年以上も前にベトナム人研修生として日本にやって来ました。その後、横浜市のソフトハウスに就職して日本式開発アプローチや日本の商慣習を体で覚え、10年前にベトナムに帰国しました。帰国後、ハードウェア販売などを経て、1996年にソフト開発会社のフジネットを設立しました。

 フォン氏の経歴で特徴的なのが、日本企業でシステム保守・運用の経験を持っていることです。業務系アプリケーションをオフショア拠点で開発するとき、すべてのプロジェクトマネージャが頭を抱えるポイントがあります。それは、「異常・障害処理」への対応が不十分であることです。システム運用経験のない者が作ったシステムは、いざというときの障害対応が「生ぬるく」なりがちなのです。その点、日本式開発を知り尽くしたフォン氏は根っからの技術者。そこが、フジネットの最大の魅力だと感じました。

 フジネットの社員数は40名(すべて大卒)。内訳は、ソフトウェア開発が32名、ハードウェア・ネットワーク構築が4名、日本語通訳が3名です。社内のコミュニケーション言語はベトナム語と日本語ですが、現在のところ日本語が堪能なキーマンはフォン氏のみ。日本企業と開発現場では、通訳を介して会話するそうです。ただし、「開発資料はすべて日本語で大丈夫」とのことでした。

 開発実績はパッケージ開発やエンハンスなど多数の日本企業やベトナムに進出した日系企業数社と、完全に日本市場をターゲットにしている会社です。また、フォン氏に日本市場について聞いたところ、「これからも最重要顧客として市場開拓したいが、まだ規模が小さいので、いきなり大量に受注するのは難しい。小さなパイロット発注を通して、徐々に信頼関係を構築していきたい」と語ってくれました。さらに、「うちは、完全に日本式スタイルで開発します」と語り、ホーチミンの韓国料理店でフォン氏は決意を表していました。

 こういった企業の情報は、ベトナムで小規模ながら、安定した開発拠点を持ちたい企業には耳寄りな情報でしょう。現在は、社長のフォン氏の目が行き届く範囲なら、比較的安心して任せられるといえます。開発体制を強化して、フォン氏1人に頼らなくても済む組織作りのお手伝いができる日本企業があれば、互いにメリットが大きいでしょう。

ベトナム最大のソフトウェアパーク Quang Trung Software City

 ベトナムにも、中国と同じような発展計画を持つ官民一体のソフトウェアパークが存在します。ホーチミンの国際空港から約15分、市内中心部から約40分離れた場所にあるのが、今回筆者たちが訪問したQuang Trung Software Cityです。

欧米の仕事で力を伸ばし、第2の柱として日本市場を狙う

ALT ホーチミン市の一般的な街並み。バイクが多いのが特徴だ

 ベトナム最大のソフトウェアパークを訪問した際、出迎えてくれたのは、2人のベトナム人女性でした。マネージャのハ氏と日本語通訳です。余談ですが、ベトナムIT企業には、女性社員の割合が非常に高いです。中国・上海と同等、あるいは、それ以上だという印象を受けました。

 Quang Trung Software Cityの総面積は、43万平方メートル(東京ドーム9.2個分)に及び、ソフトウェアパークとしてはベトナム最大の規模を誇ります。2010年までに、技術者2000名体制を目指すとのことです。概要を知るには、同社サイトからプレゼン資料(PDF:2.8MB)をダウンロードするとよいでしょう。

 これまで10名以上のベトナム企業関係者から話を聞いてきましたが、1つ明らかになったことがあります。それは、従来はベトナムにとって、最重要顧客はアメリカをはじめとする欧米企業でした。しかし、これら欧米に続いて、1兆円規模と目される日本市場を開拓したいというのが、ベトナム全体の狙いであるということです。

 最後に、Quang Trung Software Cityのハ氏から、日本企業がベトナムに進出する際に留意すべき点について、「人事・労務管理をしっかりすること」と「ベトナム人社員との関係を良くすること」という2点のアドバイスをちょうだいしました。

Quang Trung Software City進出の勘所

 オフショア開発以外の分野では、日本語が使えない地域でも立派に活動して収益を伸ばしている日本企業が存在します。過去にオフショア開発で失敗した事例と、成功する他分野の事例との違いをあらためて分析するとよいでしょう。



profile

幸地 司(こうち つかさ)

アイコーチ有限会社 代表取締役

沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門 〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手がける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。

http://www.ai-coach.com/


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ