
勤怠管理は従業員の出退勤を記録する基本的な業務、しかしそれだけでは不十分──とお考えだと思います。給与計算や経費精算、会計処理にデータを「手作業」で転記するような手間が残っていると、業務負担やミスの温床になってしまうためです。クラウド型の勤怠管理システムは、外部システムとの連携によってこれらの問題の多くを解決します。
本記事では、勤怠管理データを各システムと連携させ、さらなる効率化や成果を得たいと考える企業に向け、なぜ連携が重要なのか、どのような連携方法があるのかを解説します。機能と製品比較を通じてあなたの会社に適した課題解決の方法を一緒に考えていきましょう。
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目次
勤怠管理システムにおける「連携」の重要性
まずは、なぜ「データ連携」が現代の企業運営に不可欠なのかを確認しましょう。
勤怠管理システムで記録・管理する「データ」は、出勤日や勤務時間の記録だけに留まらず、その後の給与計算や会計管理のような工程にも使われます。「Aさんの今月の勤務時間は●時間」→「給与計算システムで、今月の給与は●時間×時給で▲円」→「会計システムで、自社の今月の人件費は▲円×人数で*円」といったようにデータ(情報)が連携され成り立っています。
もし「→」の工程が「手作業でデータ転記する」運用だと何が起こるかも想像しやすいと思います。入力ミスや二重作業のようなリスクが高まってしまいます。担当者の手間、時間もかかります。もっと俯瞰してみると、例えば法令への適切な対応、テレワーク・多様な勤務形態のようなニーズへの対応が遅れがちになる課題も挙げられます。
勤怠管理と他システムを連携しない現場の主な課題は以下の通りです。
- 勤怠データ転記による手間とミスの発生
- 労務管理・法改正対応の遅れ
- テレワークや多様な勤務形態への対応不足
勤怠データ転記による手間とミスの発生
従業員数が多いほど、勤怠データを手入力で給与システムへ転記する作業は膨大になります。これにより作業時間の増大や誤入力の発生リスクが顕著です。
労務管理・法改正対応の遅れ
労働時間管理や残業規制など、法改正に応じた対応は迅速性が求められます。連携がないとアップデートや対応遅れが業務リスクにつながります。
テレワークや多様な勤務形態への対応不足
クラウドと連携しない場合、テレワーク中の従業員の勤怠把握が難しく、柔軟な勤務形態への対応も不十分になります。
代表的な連携先と得られるメリット
勤怠管理システムは、給与計算や会計、経費精算、人事評価など外部システムと連携することで、バックオフィス全体の効率化を実現します。ここでは連携先ごとに「どの勤怠データを活用するのか」「いつ、誰が使うのか」を踏まえ、実務担当者の目線で具体的に説明します。
- 給与計算システムとの連携で自動計算を実現する
- 会計システムとの連携で仕訳・集計を効率化する
- 経費精算システムとの連携で申請フローを自動化する
- 人事・労務管理との連携で従業員データを一元管理する
- BIツールとの連携で労働時間や残業状況を可視化する
給与計算システムとの連携で自動計算を実現する
勤怠管理システムから出退勤時刻、残業時間、深夜勤務時間、休日出勤データを給与計算システムへ連携することで、毎月の給与計算業務が大幅に効率化されます。これにより人事担当者は月末に膨大な時間を費やしていた手作業入力や残業代の算出から解放されます。
打刻した勤務時間が自動で反映され、深夜勤務手当や時間外手当がリアルタイムで計算されるため、給与明細の精度が高まります。従業員からの問い合わせや修正依頼も減少するでしょう。結果として、業務負担を削減し担当者のストレスを軽減することができます。
詳細はこちら!給与計算と勤怠管理を連携させるメリット|その方法とおすすめ製品
会計システムとの連携で仕訳・集計を効率化する
勤怠データから集計された労務費や残業代を会計システムに自動で連携させることも多くの企業にニーズがあります。「コストの正確性」の担保とともに、仕訳作業や月次・年次の集計業務がスムーズに行えます。従来は経理担当者がExcelに勤務時間データを取り込み、手作業で勘定科目ごとに仕訳を作成していたところ、連携により作業が自動化され、入力ミスや計算間違いを防止します。
部署やプロジェクト単位で人件費を管理している企業では、勤怠情報を即時に会計システムへ反映できることで予算管理やコスト分析などもリアルタイムで可能になります。これにより、経理部門は集計作業に追われることなく、分析や改善提案といった付加価値の高い業務に時間を割けるようにもなります。
経費精算システムとの連携で申請フローを自動化する
勤怠管理システムに登録された出勤・退勤データや出張日数のデータと経費精算システムを連携すれば、交通費や宿泊費の精算も効率化かつ適正化できます。従業員も、経費申請時に自身の勤怠内容を参照/振り返り確認しやすく、入力内容の不備や申請忘れを防止できます。承認者は正しい勤怠データをもとに申請内容を突き合わせることで、虚偽申請のようなリスクも低減できます。
例えば、出張に伴う宿泊日数が勤怠情報に反映され、そのまま経費精算に利用できる仕組みがあればどうでしょう。経理担当者は確認作業の手間を削減でき、従業員にとってもスムーズな申請が可能になります。結果的に不正防止と業務効率化を同時に実現できます。
人事・労務管理との連携で従業員データを一元管理する
勤怠管理システムの労働時間、残業時間、休暇取得状況などのデータを人事・労務管理システムと連携させることで、従業員の勤務実態と人事評価を一元的に管理することも可能です。人事部門は、勤怠データを基にした労務管理や評価資料を自動生成でき、評価の客観性や公平性を高められます。
例えば、ある従業員が計画的に有給休暇を取得しているか、残業時間が長期的に増えていないかといったこともリアルタイムに把握できる体制を整えることも想定できます。この連携は従業員の健康管理や働き方改革への対応にも直結し、組織全体の健全性を高めることに貢献します。
BIツールとの連携で労働時間や残業状況を可視化する
勤怠データをBIツールに取り込むことで、従業員の労働時間、残業時間、部署ごとの勤務実態などをグラフやダッシュボードで可視化できます。管理職はリアルタイムに労務状況を把握し、長時間労働の早期発見や改善策の立案に役立てられます。
例えば、ある部門の残業時間が急増していることをBIツールが示せば、業務量の調整や人員配置の見直しを迅速に行うことが可能になります。経営層にとっても、勤怠データに基づく分析は経営資源の最適配分や働き方改革の進捗確認に直結します。こうしたデータ活用により、勤怠管理は単なる“守り”の記録から経営判断に資する“攻め”のための戦略的な情報資産へと進化します。
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勤怠管理データ連携の方法
勤怠管理システムと外部システムをつなぐ方法には複数の種類があります。それぞれの仕組みや特徴を理解することで、自社に最適な連携方法を見極められます。ここでは主な方法に加え、近年利用が増えている手法も整理し、そのメリットと適用場面を解説します。
CSVインポート/エクスポート
最も基本的な連携方法で、多くのシステムが対応しています。勤怠データ(出退勤時刻、残業時間、休暇取得情報など)をCSVファイル(表形式のデータをカンマ(,)で区切って出力するファイル)として出力し、給与計算や会計システムにインポートします。システム同士の直接接続が不要なため作業そのものは容易です。小規模~中小企業で手軽に連携を始めたいケースに適しています。
一方で、手動操作(ファイルのダウンロード/アップロード、データ整理、行列の調整や入れ替えなど)が必要で、うまくデータをインポートできない(エラーが出る/はじかれてしまう)など、ここでつまづいてしまう例は意外と存在します。またリアルタイム性が低い課題を解消するには、頻度を上げる、作業者を増やすなど別の工夫が必要です。
API連携
APIを用いることで、勤怠管理システムのデータがリアルタイムで外部システムに反映されるよりリッチな運用体制を構築できます。従業員の打刻情報や残業時間、休暇情報が自動で給与計算や会計などのシステムでも取り込み/参照できます。二重登録などを防ぎつつ、データ反映の即時性と正確性に優れていることから、大規模企業や複数システムを運用する組織に適します。
一方で、「システム側でAPI対応している(機能が提供されている)」ことが条件になります。対応していない場合は原則として利用できません。
ネイティブ連携
一部の勤怠管理システムは、会計ソフトや給与計算システムとの標準連携機能を持ち、追加設定なしで利用できる場合があります。もっとも容易なのがfreeeシリーズやジンジャーシリーズのような「同一シリーズ内での連携」で、このほかにも、奉行シリーズや弥生シリーズなど業界で広く利用されるシステムに対応するケースもあります。利用開始までのハードルが低く、リソースが限られる中小企業にとって導入しやすい方法です。
SSO・ID連携
シングルサインオン(SSO)やID連携を活用する方法もあります。勤怠管理システムと他の業務システムで共通のアカウント管理を可能にします。従業員には一度のログインで複数システムにアクセスできる簡易性のメリットを、管理者は認証や権限設定を統一的に行えるため、利便性とセキュリティ向上の効果に寄与します。従業員数が多く、複数の業務アプリを日常的に利用する企業に効果的です。
ファイル連携(Excelや専用フォーマット)
CSV以外に、Excelやベンダーが提供する専用フォーマットでバッチ連携などを用いるケースもあります。手作業に近い仕組みで、一定の開発工数はかかりますが、カスタムフォーマット/方法であることから既存の環境や特有の業務フローに適合させやすいメリットがあります。独自形式の帳票を運用している企業や業種特化型の中小企業に向いています。
RPA連携
既存システムがAPI非対応だとしても、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使って画面操作を自動化し、勤怠データを外部システムに転記する方法もあります。自社・部門のニーズに沿って設計でき、既存環境を大きく変えずに自動化できることが特徴です。レガシーシステムを残しつつ効率化を図りたい中堅~大企業、あるいは上記ファイル連携工程の自動化を部門・チーム内の自力でカバーしたいシーンに有効です。
iPaaS連携
ZapierやWorkatoのようなiPaaS(Integration Platform as a Service)を利用し、複数のSaaSをつなぐ方法です。勤怠データを経費精算や会計に自動で橋渡しでき、専門開発なしで柔軟な連携を構築できることが魅力です。一定の設計・管理・運用の知識およびコストを伴いますが、機能や目的に応じて効果的なクラウドサービスを柔軟に多用/使い分けているスタートアップや成長企業に適しています。
勤怠管理と外部システム連携の注意点
便利なシステム連携ですが、導入や運用にあたって留意すべき課題も存在します。ここでは代表的な注意点を整理し、導入前に把握すべきポイントを示します。
CSV形式の限界
手軽で安価に始められる一方、CSVは手動操作が前提のためリアルタイム性に欠け、データ更新のタイムラグが発生します。大量の従業員を抱える企業では、入力ミスや作業負担が増大するリスクがあります。
API/SSO利用によるコスト増
APIやSSOは便利ですが、利用に伴う条件、場合によって利用のための追加費用や別システムの開発コストが発生する可能性があります。自社に必要な連携範囲を明確にした上で投資対効果を慎重に判断する必要があります。
セキュリティリスク
外部システムとの接続は情報漏洩リスクを伴います。内部不正や不正アクセスにつながる可能性があるため、API利用時のアクセス権限やログ監査体制の整備も必要となるでしょう。
運用体制
導入後のシステム更新や法改正への対応には、継続的な運用体制が求められます。また、場合によってデータ連携・活用に伴う契約修正や変更を要する可能性もあります。担当部署の体制を整え、外部ベンダーとのサポート契約を含めて検討していくことが望まれます。
データ連携ニーズをカバーする勤怠管理システム7選
ここでは製品選定の一例/近道として、勤怠管理と他システムとの連携を重視して幅広い規模やニーズに対応できる、かつ比較的リーズナブルに導入しやすい特徴を持つ勤怠管理システムを厳選・ピックアップしてみましょう。勤怠管理の基本機能とともに、いくつかの業態別に給与・会計・経費精算との連携性、クラウド対応、API機能の有無/シリーズ化製品を基準としました。(製品名 abcあいうえお順/2025年8月時点)
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