
テレワークが当たり前になった今、従業員の勤務実態や生産性をどう把握するかは多くの企業が直面している課題です。勤怠の登録だけでは分からない「実際の働き方」を可視化し、労務リスクや情報漏洩を防ぐ仕組みがテレワーク管理ツールです。この記事では、その基本的な役割からメリット、主な機能、種類、選び方、導入時の注意点までをわかりやすく解説します。監視になりすぎない配慮や従業員の納得感も踏まえて、安心して活用できるヒントをまとめます。
この1ページでまず理解!勤怠管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイント|人気・定番・おすすめ製品をチェック
目次
テレワーク管理ツールとは
テレワーク管理ツールとは、オフィス以外で働く従業員の勤務時間や業務内容を、客観的なデータに基づいて把握するための仕組みです。単なる勤怠打刻だけでなく、PCの利用ログや使用したアプリケーションの記録などを活用し、一人ひとりの働き方を「見える化」します。
このツールの本質は、「監視する」ことではありません。データをもとに「適切な管理と支援を行う」ことにあります。集めたデータは従業員の生産性や健康状態の確認に役立ち、経営層や人事部門が労務リスクを抑えるための判断材料として活用できるからです。オフィス勤務では「どこにいるか」が管理の基準でしたが、テレワークでは「どんな業務をどのように行っているか」を把握することが求められるようになりました。
テレワーク時代の勤怠の基礎整理には「テレワークに有効な勤怠管理方法|効率的な手段と導入のポイント」をご覧ください。
テレワーク管理ツールと勤怠管理ツールの違い
勤怠管理ツールは、主に出退勤の時刻を記録することが目的です。出勤や退勤の打刻、休暇申請、残業の集計など、基本的な労働時間の把握と給与計算に直結した機能が中心となっています。つまり「いつ働いたか」を証明する仕組みです。
一方で、テレワーク管理ツールは「勤務中にどんな業務を、どのように進めていたか」まで把握できる機能も備えることがポイントです。
例えばPCの操作ログやアプリ利用状況の分析によって、自己申告では分からなかった実際の作業や、特定の業務にかかった時間、従業員ごとの業務負担の偏りまで明らかにできます。また、一部のツールでは、従業員がその日の体調やモチベーションを記録できる仕組みがあり、メンタルヘルス対策にも活用されています。
| 比較項目 | 勤怠管理ツール | テレワーク管理ツール |
| 目的 | 労働時間の記録/給与計算 | 業務プロセスの可視化/生産性分析 |
| 把握できる情報 | いつ働いたか(出退勤・休憩・残業) | 何を・どう進めたか(タスク・アプリ利用・成果) |
| 主な機能 | ●打刻 ●休暇申請 ●残業・勤務集計 |
●PC/アプリログの分析 ●タスク・会議の可視化 ●レポート・ダッシュボード |
| 解決する課題 | 法令順守/正確な給与計算 | 隠れ残業の抑止/業務改善/公平な評価 |
このように、勤怠管理ツールが労働管理の「土台」となるのに対し、テレワーク管理ツールは生産性向上や働き方の改善など、より戦略的な人事課題にアプローチする「応用」ツールと位置づけられます。
テレワーク管理ツールが求められている理由
テレワークが普及したことで、従来のマネジメントだけでは対応できない新たな課題が生まれました。その中でも、「勤務実態の把握」と「労務リスクの抑制」は多くの企業が悩んでいる重要なテーマです。テレワーク管理ツールはこれらの課題解決に欠かせません。
勤務実態の把握
テレワークでは、従業員の働きぶりを直接目で見ることができません。そのため、自己申告や日報だけでは本当の労働時間を把握しきれず、実態と報告のズレが生まれやすくなります。例えば「会議資料作成に想定より時間がかかっている」「単純作業が特定の人に偏っている」といった状況も、日々の報告では分かりにくいでしょう。
テレワーク管理ツールを使えば、PC操作やアプリ利用履歴など客観的なデータが自動で収集・分析され、正確な勤務実態を見える化できます。これにより、業務の偏りや非効率な作業が見つかりやすくなり、適切なサポートや業務改善のアクションへつなげられます。
勤怠の全体像は「勤怠管理システムの基本機能と導入メリット|従業員と管理者の課題を解決」をご確認ください。
労務リスクの抑制
テレワークは、仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちです。そのため、意図せず長時間労働やサービス残業が発生しやすくなります。これを放置すると、従業員の健康を損なうだけでなく、未払い残業代の請求や法令違反など、会社にとって大きなリスクとなります。
厚生労働省のガイドラインでも、テレワーク労働者の労働時間を適切に管理する必要性が強調されています。テレワーク管理ツールはPCのログオン・ログオフ記録などから正確に労働時間を把握し、不適切な打刻やサービス残業を早期に発見して是正できる仕組みを作ることができます。例えば、打刻時刻とPC最終操作時刻の差が大きい場合にアラートが出る機能は、隠れ残業の抑制に有効です。
制度・運用を含めた見直しには「【2025最新】労務管理システムのおすすめツールを徹底比較」をご覧ください。
テレワーク管理ツール導入のメリット
テレワーク管理ツールを導入すると、単にリスクを管理するだけでなく、組織全体の生産性や働きやすさの向上に大きなメリットがあります。
- 従業員の状況を把握できる
- 人事評価に活用できる
- 残業を防止できる
- チームマネジメントを改善できる
- 経営判断に役立てられる
従業員の状況を把握できる
部下の業務状況が見えないことは管理職にとって大きな不安材料です。テレワーク管理ツールは、誰がどの業務にどれくらい時間をかけているかを可視化するため、感覚や憶測ではなく、事実にもとづいたマネジメントができます。
この仕組みがあることで、「サボっていないか」といった疑念や、「一人で悩んでいるのではないか」といった孤立への心配も減ります。業務負荷が高い従業員やつまずいている従業員に、管理者がタイミングよく声をかけてサポートしやすくなるでしょう。
人事評価に活用できる
テレワーク下では「成果」だけが評価の中心になりがちですが、実際には成果に至るまでの過程や業務への取り組みも大切です。テレワーク管理ツールを使えば、成果物だけでなく、作業プロセスや時間配分なども客観的なデータとして評価材料にできます。
「効率よく質の高い仕事をしている人」「見えにくい業務改善に貢献している人」など、属人的な印象ではなく、事実に基づく公平な評価が可能となり、納得感のある人事評価を実現しやすくなります。
残業を防止できる
長時間労働の是正は、どの会社にとっても重要な課題です。テレワーク管理ツールには、設定した労働時間を超えると本人や管理者に自動通知するアラート機能があります。これにより、従業員は自分の働きすぎに気づきやすくなり、管理者もリアルタイムで労働時間超過を把握できます。結果として、未払い残業や長時間労働の抑制、健康リスクの低減につながります。
チームマネジメントを改善できる
チーム全体の生産性を高めるには、業務負担のバランスが大切です。テレワーク管理ツールのレポートやダッシュボードを活用すれば、誰に負担が集中しているかが一目で分かります。負担の多い人の業務を調整したり、手が空いている人に仕事を振り分けたりと、柔軟なリソース配分がしやすくなります。
また、プロジェクトごとの工数管理にも役立ち、各工程の進捗を正確に把握できるため、遅延リスクを早めに察知して対策を取ることが可能です。
作業配分や原価の可視化には「工数管理ツールの比較ガイド|進捗や原価を見える化」をご覧ください。
関連工数管理ツールの比較ガイド|作業の手間を減らし、進捗や原価を見える化する方法
経営判断に役立てられる
テレワーク管理ツールで蓄積されたデータは、現場だけでなく経営層の意思決定にも貴重な情報となります。部署やプロジェクト単位での稼働状況、生産性の比較や分析が簡単になり、組織全体の課題やボトルネックを早期に発見できます。
例えば、「この工程に工数がかかりすぎている」と分かれば、自動化投資や業務フローの見直しを検討するなど、根拠ある改善アクションが可能です。
テレワーク管理ツールの主な機能
テレワーク管理ツールは、多様な働き方に対応するために様々な機能を持っています。代表的な機能を見ていきましょう。
- アプリ利用ログの収集
- レポート機能
- アラート通知
- 情報漏洩対策
- コミュニケーション支援
アプリ利用ログの収集
この機能では、業務時間中にどのアプリケーション(WordやExcel、業務システム、Webブラウザなど)をどれだけ使っていたかを記録します。これにより、実際の業務内容や作業割合を具体的に把握できます。また、業務とは無関係なアプリの利用時間が長い場合には、生産性低下の要因を探る手がかりにもなります。
レポート機能
収集したログデータを自動で集計し、グラフや表で見やすく可視化する機能です。個人・チーム・部署単位などさまざまな角度から労働時間や業務傾向を分析できます。これにより、管理者が毎日の詳細なログを一つ一つ確認しなくても、全体の動きを短時間で把握でき、業務改善のヒントを得やすくなります。
アラート通知
あらかじめ設定したルールに基づき、残業時間が規定を超えそうなときや、打刻とPC操作の乖離など異常を検知した場合に、自動で管理者や従業員へ通知が送られます。これにより、長時間労働や不自然な勤務の早期発見と対応が可能となります。
情報漏洩対策
テレワークでは社外環境で機密情報を扱うため、情報漏洩リスクが高まります。多くのツールはUSBメモリなど外部デバイスへのデータ書き出しを制限したり、許可されていない外部へのファイル転送をブロックしたりする機能を備えています。万が一トラブルが起きた場合でも、誰がどのファイルにアクセスし、どう操作したかをログで追跡できるため、原因究明や再発防止にも役立ちます。
コミュニケーション支援
テレワークでよく課題になるのが、コミュニケーション不足による孤立感です。従業員が「集中中」「会議中」「休憩中」といったステータスを共有できる機能や、簡単なチャット・コメント機能を備えたツールもあります。これによって、オフィスでのさりげない声かけに近い感覚で、オンラインでも自然なコミュニケーションを保ちやすくなります。
テレワーク管理ツールの種類
テレワーク管理ツールには、その主目的や重点機能によっていくつかのタイプがあります。自社の目的に合わせて選ぶことが大切です。
専用タイプ
このタイプは、勤務状況や作業内容の「見える化」に特化したものです。PC操作ログやアプリ利用分析、作業時間のレポート作成などが主な機能となります。多くの場合、勤怠管理システムと連携でき、正確な残業管理を実現しやすい点が特徴です。機能が絞られていて導入も比較的簡単なので、まず働き方の実態を把握したい企業に適しています。
IT資産管理タイプ
元々は社内PCやソフトウェアなどの資産管理用ツールに、テレワーク管理機能を追加したものです。パソコンのインベントリ情報やソフトの配布、利用履歴やWeb閲覧履歴の監視、USB利用制限などセキュリティ機能も強化されています。セキュリティ担当者のニーズが強い会社で導入されることが多く、資産管理と情報漏洩対策を一体で行いたい場合に向いています。
コンディション管理タイプ
こちらは従業員の生産性だけでなく、心身の健康やエンゲージメントの管理に重きを置くツールです。日々の体調や気分をアイコンで入力する仕組みや、ちょっとしたアンケート機能を持っています。収集したデータからチームや個人の変化をいち早く察知し、マネージャーが適切なフォローを行えるようサポートします。働き方改善やメンタルヘルスの取り組みに活用したい企業におすすめです。
テレワーク管理ツールの選び方
ツール選定では「機能の比較」だけでなく、導入の目的や運用体制、従業員の納得感まで多角的に検討することが大切です。
目的に合った機能があるか
まずは「何のために導入するのか」をはっきりさせましょう。
- 法令順守や労務リスク対策が最優先なら、勤怠システム連携や残業アラート機能が充実したツール
- 生産性向上や業務改善が目的なら、アプリ利用やプロジェクト工数の分析・可視化が強いツール
- 情報漏洩防止を重視するなら、IT資産管理タイプや制御機能が豊富なツール
自社の課題を整理し、「これは外せない」という機能から優先して比較しましょう。
導入のしやすさ
高機能でも、導入や運用が大変だと現場に定着しません。
費用面は初期費用・月額費用だけでなく、設定代行やカスタマイズ費も確認しましょう。
また、操作性がシンプルで、ITが得意でない従業員でも直感的に使えるインターフェースかどうかも重要です。
無料トライアルができるツールも多くあるので、実際に複数の部署で使ってみて意見を募ることがスムーズな運用につながります。また、導入サポートや運用開始後の問い合わせ対応といったサポート体制がしっかりしているかも、選定の重要なポイントになります。
従業員の納得感
テレワーク管理ツールを導入するうえで、従業員の納得感を得ることは避けて通れません。PCの操作ログなどを記録する機能は「監視されている」と感じられやすく、心理的な抵抗感につながることもあります。
こうした不安を解消するためには、「従業員を疑うため」ではなく「公正な評価や長時間労働の防止、業務効率化のために導入する」という目的をしっかりと説明し、納得を得ることが大切です。
また、どのデータをどこまで取得し、誰が閲覧するかなどプライバシーへの配慮も明確に伝えましょう。業務時間外のログは取得しない、個人のプライベートに踏み込まない運用ルールを決めて開示し、従業員の信頼を損なわない工夫が求められます。
テレワーク管理ツール導入の注意点
便利なテレワーク管理ツールですが、導入や運用にはいくつかの注意点も存在します。とくに「監視しすぎ」「プライバシー配慮」「法令順守」の3つは重要なポイントです。
- 常時カメラONや業務外ログ取得など“過度な監視”はNG
- 目的/取得範囲/閲覧権限を明文化し、透明性と同意を確保
- PCログのみ過信せず、申告・修正の仕組みを併用
監視のしすぎに注意
ツールの導入目的が「管理・支援」から「監視」へといつの間にかすり替わってしまうリスクがあります。過度な監視は従業員に大きなストレスや不信感を与え、かえってモチベーションや生産性を下げる要因になりかねません。
テレワーク管理ツールはあくまで「信頼」を前提に、業務改善や公正な労務管理のための補助的な役割であることを明確に伝え続けることが大切です。
個人の粗探しや評価を下げるための利用ではなく、チーム全体の業務改善や業務負担のバランス調整など、建設的な目的に絞ってデータを活用しましょう。
スモールスタートで進めたい企業は「小規模事業者必見! クラウド型勤怠管理システムの導入メリットと選び方」も併せて確認ください。
プライバシーの配慮
テレワークでは自宅などプライベートな空間で働くことが多いため、プライバシーへの配慮はオフィス勤務以上に重要になります。
業務外の行動まで監視するような設定や、Webカメラを常時ONにする運用は、従業員のプライベートを侵害する恐れがあります。
法令順守
テレワーク管理ツールの利用は、労働基準法や個人情報保護法といった法令に基づいて行う必要があります。とくに労働時間管理については、厚生労働省のガイドラインに沿った運用が求められます。
PCログなどは客観的な記録として有効ですが、それだけですべての労働時間を正確にカバーできるとは限りません。例えば、PCを離れて紙の資料を読んでいたり、電話会議に参加していた時間も労働時間として扱う必要があります。
ツールによる記録を基本としつつ、申告や修正の仕組みも併用する柔軟な運用が必要です。
また、取得したログデータは個人情報にあたる場合もあるため、利用目的を明確にして本人の同意を得る、安全に管理するといった個人情報保護法のルールも必ず守りましょう。
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