セイコーエプソンの高温ポリシリコン液晶パネル「D4」技術は、0.7インチサイズで720p/開口率50%という数値を達成することで、昨年、720pプロジェクター御三家と呼ばれる、エプソン、三洋電機、松下電器の低価格液晶ハイビジョンプロジェクターを生み出した。“実売20万円前後の720pプロジェクター”が人気を集めた背景として、この3社の功績は計り知れない。
しかし、一方でD4パネル量産直後に製品を出荷するというタイトなスケジュールの中で、各製品の完成度を高める時間が少なかった事は否めない。上記三社の新製品をこれまでにレポートしたが、いずれも同じデバイスを使っているにもかかわらず、紡ぎ出す絵の完成度は大きく上がっている。
日立製作所の「PJ-TX100J」は、“御三家”の昨年モデルと今年新製品との狭間となる今年の6月に発売されたエプソンD4 720pパネル採用モデルである。
発売時期からすると、今秋登場した御三家の最新機種には劣るのでは?と頭の中だけで想像しがちだ。
では実際にはというと、パネル量産から製品化までにじっくり時間をかけたこともあり、なかなかの高い完成度は最新モデルに迫る、いや部分的には超えるところもある。
これまでにレビューしてきた松下AE700、エプソンTW200H、三洋Z3との比較を交えながらレポートしたい。
個人的なやり方として、ファーストインプレッションで注目するのは、色とトーンカーブといった部分である。これがうまくハマッていないと望んだような絵が出てこない。だがTX100Jの場合、初めからスッキリとした“写り”が印象的だった。
本機はデザイン面でもF1.7という大口径の明るいレンズが大きなアクセントになっているが、そうしたレンズの大きさを確認するまでもなく、他の同クラスプロジェクターとは一線を画すシャープさ、諸収差を感じさせないクリアな投影像は、まさに“レンズの力”を感じさせる。
このレンズはED(超低分散)レンズ4枚、非球面レンズ1枚と、硝材、加工形状ともに優れたレンズを組み合わせて設計されており、これらが諸収差を良好に抑え込んでいるようだ。
もちろん、“大口径、明るいF値”は必ずしも高画質を意味するわけではないが、これだけの明るいレンズを電子制御アイリスで絞り込んで使うことで、なおさらコントラスト比やシャープさに優れた絵を出せているようだ。
電動アイリスは10段階だが、アイリスとランプモードの組み合わせで最大1200ルーメンから最低400ルーメンまでの幅広い輝度調整幅がある。絞り最小時のシャープさは、実売で20万円を切る低価格プロジェクターとは思えない。
「透過型液晶パネルでシャープな投影像」というと、画素間のブラックマスクが目立つのではないか? と思うかもしれない。もちろん、松下電器のAE500/700のように複屈折板を用いてブラックマスクを消すテクニックを使っているものよりは気になるが、かといって通常の同パネル採用製品と比べて目立つわけではない。スッキリした投影像の美しさの方が、よほど重要である。
このレンズはしっかりした像を投影するだけでなく、設置性や操作性にも優れた面がある。左右方向こそ1.5画面分の調整幅だが、垂直方向には2.5画面分もシフトする。しかも投影中のレンズを注視してみると、シフト最大時でも大口径レンズの中央に近い位置しか使われておらず、見た目にも画質劣化を感じない。サイドテーブルからの投影は辛いが、テーブルや棚置き、天吊りなど上下方向のシフト量が重要な設置方法ならば十分である。
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