エプソン製透過型液晶パネルを採用したホームシアター向けプロジェクターの中にあって、日立製作所の「PJ-TX200J」は、前モデルと比べて外観上の違いは少ないものの、その中身は前モデル比で長足の進歩を遂げたモデルである。新型パネル採用によるコントラスト向上もあるが、むしろ映像出力機器として全体的なクオリティの向上が図られたことの方が大きい。
スペック面で秀でた部分は少ないが、しかし自慢の大口径レンズが投影する抜けがよく明るい映像、それに細やかな画質調整機能には、それだけで大きな魅力がある。アイリスを2個配置した点も、環境に合わせた明るさの調整と動的なアイリス制御(アクティブアイリス)の両立を果たす上で重要だ。
しかし、本モデルから導入されたアクティブアイリスは、効果的な半面で、まだ熟成し切れていない部分も残っている。
本機を語るとき、必ず登場するのがデザイン上も大きなアクセントとなっている大口径レンズ。この1.6倍ズームレンズは、外せないポイントだろう。広角端ではF1.7の明るさを誇り、上下2.5画面、左右1.5画面分のシフト範囲において、画面全体にフォーカス感の高い高解像度の映像を映し出す。
厳密に見ると、周辺部でやや色収差が目立つ部分もあるが、輝点のにじみが少なく透明感のある描写はメーカーのうたい文句通り。160ワットとやや出力が大きめのランプに、高コントラストで明るくクリアなレンズが組み合わさり、予想以上にハイライトの元気が良い投影像となった。加えて100インチ投影で最短2.8メートルという単焦点レンズは、テーブル置きで手軽に利用したいユーザー層にうってつけと言える。
レンズ鏡筒に取り付けられたフォーカスリングとズームリングは、適度にダンピングが施されており実に操作感が良い。使用後に片付けるといった使い方をする場合でも、フォーカスの合わせ直しにイライラすることはない。像の精細感が高いため、ピントの山もつかみやすい。
ただし、前作の「PJ-TX100J」は、上記すべての特徴は備えていたものの、パネル自身のコントラスト不足から黒浮きが目立っていた点や、全黒の領域にやや色付きが見られたことなどで印象を悪くしていた。内蔵映像チップの問題からか、パッと見たときの色数の少なさ、I/P変換チップ未搭載、スケーラチップの力不足といった面もあり、ややもったいなさを感じる作品だったと記憶している。
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