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» 2006年03月20日 10時00分 公開

光学10倍なのにコンパクトな秘密――「LUMIX DMC-TZ1」の開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(3/3 ページ)

[永山昌克,ITmedia]
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新開発「ヴィーナスエンジンIII」を搭載

――新しい画像処理LSI「ヴィーナスエンジンIII」の特徴は何ですか?

山根氏: これまでとの大きな違いは、歪曲補正回路を搭載し、レンズの歪曲収差を抑えていることです。また色収差の補正量を従来よりも大きくしました。これらによって、レンズ設計の自由度が高まりました。レンズとLSI信号処理回路をうまく結合させたことで、商品レベルを上げることができたと考えています。

佐藤氏: また消費電力をさらに抑えたことや、ノイズリダクションを強化したことも特徴です。従来製品では、シーンモード内の「高感度」としてISO800や1600を実現していましたが、DMC-TZ1では通常撮影でもISO800を選べるようにしています。

――通常撮影モードのISO800と、シーンモード「高感度」のISO800とでは、ずいぶん画質が異なりますね。特に後者は、ノイズを消しすぎ、ディテールがつぶれすぎじゃないですか?

佐藤氏: 両者はお客様の利用シーンがまったく違うと考えています。まず通常撮影の場合に、できるだけ高い感度も選べるようにすることは、カメラとして当然の進化です。新開発「ヴィーナスエンジンIII」のノイズリダクションによって、ライカ基準の解像感を満たしながら、ノイズを抑えています。大きく印刷する可能性がある大切な写真を高感度で撮る場合には、通常撮影モードのISO800を利用してほしいと思います。

 一方、シーンモードの高感度は、画素混合によってS/N比をかせいでいます。隣の画素を利用してノイズを抑えていますので、ご指摘のとおり解像感はかなり落ちています。これは、あくまでL判に印刷して楽しむ用途を前提にしたモードです。パソコンのディスプレイによる等倍表示は、まったく想定していません。お客様によっては、実質はL判印刷でしか使用しない人もたくさんいらっしゃいます。そうした方には、高感度で明るく鮮やかな写真を残せるメリットになるはずです。

――DMC-TZ1のレンズ開放F値は「F2.8〜F4.2」で、従来機DMC-FZ7などは「F2.8〜F3.3」。ワイド側はこれまでと同じで、テレ側はやや暗くなったと思いますが、カタログ等で「明るいレンズ」と訴求する狙いは何でしょうか?

佐藤氏: 近ごろ、レンズのワイド化やズーム化、小型軽量化などを重視するあまり、開放F値が犠牲になっている傾向が少し見受けられる気がしています。DMC-TZ1は、自社比でいいますと確かに暗くなっていますが、ほかに比べるとまだ明るいほうだと思っています。「明るい」は、あくまで一般的な言い方です。「昨日より美人になった」という意味ではなく、「まだ美人でしょう」という意味でとらえて下さい。

 と同時に、最近「高感度」をうたうデジカメが増えていますが、ゲインアップしてISOの数字だけを大きくすることが、必ずしもお客様のメリットとはいえません。仮に、レンズの開放F値が一段暗ければ、結果的にはISO感度が一段低いことと同じになってしまいますから。つまり、レンズが明るいことは、感度が高いことと同等の意味を持ちます。そのことをお客様に再認識していただきたい、という願いもあります。

山根氏: 感度、レンズの明るさ、手ブレ補正の3要素は密接につながっています。我々がレンズを開発する際には、最近その差が縮まりつつあるとはいえ、他社よりも明るいレンズにすることを常に意識しています。

――旅行に役立つ機能をいくつか搭載しましたが、シーンモードの「空撮」はどんな効果があるのですか?

佐藤氏: 飛行機の窓から風景を撮る際に役立つモードです。AFのアルゴリズムを遠景優先にすることで、窓にピントが合うことを防げます。また空気の層が厚いため、メリハリのない絵になりがちですが、それをシャープに写る絵作りにしています。

photo 旅向け機能のひとつとして「トラベル日付」を搭載。出発日を設定しておけば、撮った画像が出発から何日目なのかを表示できる。従来からある「赤ちゃんモード」を応用した機能だ

――完成したDMC-TZ1の満足感はいかがですか?

山根氏: 薄型軽量と高倍率、手ブレ補正の3つを実現するために、手ブレ補正のアクチュエーターを改良したことや、動画撮影中にもズームができるように、低速で静音性の高いズーム制御を搭載したこと、高速起動と高速AFのためにリニアモーターを採用したことなど、個人的なわがままを通させてもらった部分が多く、これまでに自分の担当したデジカメの中でも、DMC-TZ1は特に思い入れが大きな機種になりました。

佐藤氏: わたしは商品企画のほかに、ライカとの協業を担当している関係で、ドイツに出張することが多いんです。その機会を利用して「空撮」モードなどの検証もしました。また、もともと旅行などで、いわゆる作品ではなく、スナップ的な写真を撮るのが大好きです。DMC-TZ1は自分自身にも使えるカメラになりました。わたし以外でも、ズームなんていらないという人は少ないはずです。DMC-TZ1は、これまで以上に高倍率ズームを手軽に利用できるデジカメとして、大勢の方に楽しんでいただけると思います。



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