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“赤”が鮮やか、絵作りも楽める――BRAVIA「KDL-32V2000」レビュー(3/3 ページ)

» 2006年05月17日 00時21分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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出荷時は“赤”重視のクッキリ・ハッキリ画質だが、画質調整の幅は広い

 それでは、気になる画質をチェックしてみよう。

 幸いなことに筆者宅では既に地上デジタル放送を視聴できる環境が整っているので、まずは購入した直後の状態で地上デジタル放送を視聴してみた。まず目を引いたのが、コントラストの高い、クッキリとした映像。昼間や蛍光灯をつけた状態でも十分な画面の明るさが確保されており、ブラウン管テレビの置き換えでもそれほどの違和感なく楽しめる。

 視野角も十分に確保されているので、極端に真横からのぞき込むような視聴姿勢を取らない限り、色合いや濃さに変化は感じられない。スポーツ中継などを快適に楽しむ際に重要になる応答速度も問題なし。打席から走り出すバッターや、ドリブルで切り込んでいくサッカー選手など、激しい動きをする対象もクリアに映し出す。

 ただ、地上デジタル放送を視聴している限り、“明るすぎる”と感じたのも事実。NHKの大河ドラマや各局のニュース番組などを見ていると、人物の肌が不自然なほどに血色が良くて明るい、ともすれば白っぽいとも形容できる色に映し出される。画質設定を出荷時の「ダイナミック」から「スタンダード」に変更してみたところ、あまり気にならなくなったので、通常のテレビ番組視聴に限っては、「スタンダード」画質にしておいたほうが自然な気がする。

 アナログ放送の映像は可もなく不可もなくといったところ。本製品は1366×768ピクセルのハイビジョン対応パネルを搭載しているので、アナログ放送を映し出すとどうしても拡大表示になってしまい、荒さやシャープネスの甘さに目が行ってしまう。視聴距離を1.5メートルほど取れば気にならないレベルなのだが、アナログ放送の受信をメインとするには不向きといわざるを得ない。

 D端子を使って接続したDVDの映像も見てみた(利用したプレーヤーは東芝 RD-XS53)。全体的に赤みが強く、肌の血色が良く映し出されていたのが印象的だった。暗部の表現力は高く、画面が暗転する場面でもそこに何かがあるような存在感を伝えてくる。コントラストの高い、クッキリとした映像が好みならば標準状態でも満足できるかと思うが、個人的には若干明るさを下げるか、映像設定を「スタンダード」に変更した方が好みの映像となった。

 画質設定だが、プリセットで用意されているのは「ダイナミック」「スタンダード」の2つで、8つの設定項目を自由に調整可能。バックライドの明るさを調整する「バックライト」(10段階)、明暗差を調整する「ピクチャー」(100段階)、画面の明るさを調整する「明るさ」(100段階)、色の濃淡を調整する「色の濃さ」(100段階)、赤から緑にかけての色合いを調整する「色合い」(100段階)、「色温度」(2段階)、映像の鮮明さを調整する「シャープネス」(30段階)、ノイズリダクション(オフを含めて4段階)がそれぞれ調節できる。

photo プリセットで用意されている「スタンダード」の初期設定

 さらに詳細な設定が行える「カスタム」も用意されており、選択時には上記8項目に加えて、黒を強調する「黒補正」(オフを含めて4段階)、暗い場面で映像の明暗をはっきりさせる「コントラストエンハンサー」(オフを含めて4段階)、明暗バランスを調整する「ガンマ補正」(オフを含めて4段階)、白を強調する「クリアホワイト」(オフを含めて3段階)、色の鮮やかさを強調する「ライブカラー」(オフを含めて4段階)色再現域を切り替える「カラースペース」(オン/オフ)、MPEGノイズリダクション(オフを含めて3段階)の調整が行える。プリセット項目の各標準パラメータと、カスタム選択時に設定可能な項目は以下のようになっている。

設定項目 ダイナミック スタンダード カスタム 調整可能幅
バックライト 最大 3 3 10段階
ピクチャー 最大 最大 最大 100段階
明るさ 50 50 50 100段階
色の濃さ 60 50 50 100段階
色合い 標準 標準 標準 100段階
色温度 低2 2段階(カスタム選択時は4段階)
シャープネス 18 15 15 30段階
ノイズリダクション オフを含め4段階
黒補正 調整不可 調整不可 オフを含めて4段階
コントラストエンハンサー 調整不可 調整不可 オフを含めて4段階
ガンマ補正 調整不可 調整不可 オフを含めて4段階
クリアホワイト 調整不可 調整不可 オフを含めて3段階
ライブカラー 調整不可 調整不可 オフを含めて4段階
カラースペース 調整不可 調整不可 ノーマル オン/オフ2段階
MPEGノイズリダクション 調整不可 調整不可 オフを含めて3段階

 「カスタム」まで活用すれば15の設定項目が用意されており、かなり設定の幅は広いといえる。また、各項目は各入力別に設定することも可能で、地上デジタル放送は「スタンダード」、HDMI接続したハイビジョンレコーダーは「カスタム」、D端子接続したDVDプレーヤーとS端子接続したゲーム機は「ダイナミック」など、ソースに応じたセッティングが行える。

 プリセットの「ダイナミック」「スタンダード」のいずれも、赤の発色を重視した、ぱっと見のキレイさを重視した設定となっているようで、アクション映画や環境映像を見る分には美しいが、ナチュラルさには欠けるようにも感じられる。NHK総合の地上デジタル放送を視聴しながら「カスタム」を筆者なりにセッティングしてみたが、色温度を「低1」、明るさを「40」、ガンマ補正を「弱」、クリアホワイトを「切」にするなど、コントラストと明るさをやや低めにしたほうが、気持ちよくテレビ放送を楽しめる画質になった。

ソニー入魂の新シリーズ

 駆け足ながらも、同社入魂の液晶テレビ“BRAVIA”を取りあげてきた。出荷時の状態で視聴する限り、前述したように、バラエティなどよりも映画や環境映像などの映像にマッチするようだ。画質調整の幅が非常に広いことも確認できたが、プリセットの設定を見るかぎり、多種多彩なソースを映し出すテレビとしては、味付けが少々派手目な印象も受ける。

 しかし、だからといって“テレビ”としての今ひとつなのかといえば、そうではない。HDMIをはじめとした入出力端子も十分に備えており、「メニュー」ボタンを中心とした操作インタフェースも使いやすい。画質についても「スタンダード」に設定するか、自分でカスタマイズすれば、柔らかい映像も映し出して奥深さを持っている。画質の設定項目は非常に多いので、好みの映像になるよう、設定を追い込んでいく楽しさもある。

 ヘビーユーザーにとっては、フルHD対応パネルやi.LINKを搭載しない点が気になるかもしれないが(上位機種のXシリーズは双方とも搭載している)、価格もこなれてきており、「6畳〜8畳のリビングに置く薄型テレビが欲しい」というユーザーにとっては検討に値する製品といえる。

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