デジモノ家電の分野で今年最初のビッグニュースは、やはり東芝のHD DVD撤退だろう。家庭用ビデオレコーダーのみならず、PCやゲーム機向けのHD DVDドライブも追って生産中止が決まり、HD DVDは完全に姿を消すこととなった。Blu-ray DiscとHD DVDが市場の覇権を争う、いわゆる次世代DVDを巡る2陣営間の競争は、BD陣営の勝利で終わった。
以降、家電メーカー各社は次々とBDレコーダー/プレーヤーを投入。順調に販売台数を伸ばし、9月には地上デジタル放送受信機器の国内出荷実績で、初めてDVDレコーダーを上回った。続く11月には、家電量販店における販売台数もDVDレコーダーを上回り、BDへの移行が堅調に進んでいることを伺わせる。ただし、機能面についてはダビング10やAVCRECといったトピックはあったものの、全体的なインパクトには乏しかった印象だ。
ビデオカメラの分野でもBD対応が進んだ。日立製作所のBDカム Woooシリーズは1月にシリーズ第2弾が登場するなど、ビデオカメラにおいてもBDは一定の存在感を示した。ビデオカメラのHD対応は着実に進行していることからも、BDがDVDに取って代わる日は着実に近づいているようだ。
しかし、世界規模で見ると、DVDからの移行はそれほど急速には進展していない。ロイターの報道によれば、年間500万台というソニーのBDプレーヤーの販売目標は、折からの景気後退もあり未達に終わる見通しとのこと。なかなか本体の低価格化が進まず、BDタイトルの不足や単価の高止まりもあり、本格的な普及期の到来にはまだ時間を要するとの見方も根強い。2009年は、この課題を解決するための対応が期待される。
2008年の薄型テレビ市場は、液晶一色だったと言っていい。プラズマは振るわず、パイオニアと日立製作所はプラズマパネル生産からの撤退を発表した(パイオニア、プラズマパネル生産から撤退、日立、プラズマパネル生産から撤退、松下から調達)。液晶の“次”として期待される有機ELもソニー「XEL-1」に続く製品は現れず、パナソニックが2011年度の量産化を発表した程度だった。
そのなかで家電メーカー各社は、液晶パネルの画質向上による差別化を推進した。その1つが「LEDバックライト」で、2008年冬モデルから採用事例が増えている。電力消費量に比べた輝度の高さ、「本物に近い黒」を出せる表現力を備え、かつ水銀不使用という時代の要請にも応えるこの技術、来年以降は廉価モデルでの採用が期待される。
高度な演算により補正を施すことで、単純なアップスケールとは異なり、情報の「質」を高める「超解像」を実装した製品も登場した。この技術を利用すれば、DVDに録り貯めたSD品質の映像をハイビジョンテレビで鑑賞する際にも、高精細な映像を楽しむことができる。まだ採用事例は「レゾリューションプラス」として搭載する東芝REGZAシリーズの一部にとどまるが、来年以降は他メーカーも追随するはずだ。
大手メーカーが共同でスタートさせた映像配信サービス「アクトビラ」も、今年の薄型テレビを語る際に欠かせないキーワードだ。STBもPCも不要、インターネットに接続する環境さえ用意できればOKというこのサービスは、PPV方式の「アクトビラビデオ」をスタートさせて以降、急速にユーザー数が増加。対応機種も順調に増え、いまやアクトビラ対応の有無が液晶テレビ選びの1つの基準となっている。
・松下、37型有機ELテレビ量産計画 2011年度、10万円台半ば
・デジモノ家電を読み解くキーワード:「LEDバックライト」――薄型テレビの新常識になるか
・デジモノ家電を読み解くキーワード:「超解像」――薄型テレビの注目技術
デジモノ家電を読み解くキーワード:「アクトビラ」――テレビだけでOKなハイビジョンVoDも
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