「α380」は現在、ソニーのエントリー向けデジタル一眼レフカメラの中では最上位に位置する製品だ。レンズキットで8万円を切る程度という実売価格だけで比較すると、ライバルはキヤノン「EOS Kiss X3」やニコン「D5000」、オリンパス「E-620」などになるが、実際にある程度長時間、利用してみるとどうも違う気がしてきた。まずはそのあたりの話から始めよう。
そのα380の主要なスペックとしては、APS-Cサイズ/1420万画素のCCD、シャッタースピード約2.5〜3.5段の効果を持つボディ内手ブレ補正機能、ペンタミラー切り替え式ライブビュー「クイックAFライブビュー」などが挙げられ、前モデルに当たる「α350」とほぼ変わらない。
最も変更が行われたのはボディデザインだ。肩に「α」の文字が入る意匠はシリーズ製品の伝統でα350からも引き継がれているが、サイズはα350の130×98.5×74.7ミリ/約582グラムから128×97×71.4ミリ/約490グラムへと小型軽量化され、グリップもシャッターに近い部分が大胆にえぐられた形状に変更されている。
実はこのグリップを握った際の違和感が、「違う気がする」と感じた最初の気づきだった。筆者は男性しては手の小さい方だが、α380をほかのデジタル一眼レフカメラのように握るとどうしてもシックリこなかった。親指の腹まで使って握り込むようにホールドしないと安定せず、人差し指もかなり手前に寄せないとシャッターボタンへかからない。正直、最初は使いにくいと思った。
あれこれ握り方を試行錯誤しているとき、知人の女性へα380を渡してみると「握りやすく、シャッターも押しやすい」という。彼女が言うに、ツメを伸ばしている指(というか手)では、「物を持つ」という行為について、指の腹を意識的に使うようになるなど、さまざまな注意を払う必要があるのだという。
ある程度重量のあるデジタル一眼レフカメラについていえば、男性が無意識にするよう“中指/薬指/小指でグリップをしっかりと握りこみ、浮いた人差し指でシャッターを押す”のではなく、“手のひらと指の関節を中心に固定したうえで、指の腹でシャッターを押す”のが自然なスタイルとなる。
このことを理解した上でα380を眺めるとなるほどと思わされる。他製品に比べて外側に位置する親指用グリップや、右手のひらがフィットするようにえぐられたボディとあわせ、このグリップデザインとシャッターボタンの位置が“手のひらと指の関節を中心に固定したうえでシャッターを押す”には最適なのだ。
また、先ほどの女性が感心していたのが軽さ。最近ではデジタル一眼レフカメラでも手ブレ補正は欠かせない機能となっているが、α380は手ブレ補正機能を搭載しながら本体のみで約490グラム。キットレンズ「DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM」を装着した状態でも762グラム(実測値)しかない。この軽さと独特のグリップ形状もあり、片手一本での操作でもかなり安定した撮影が行えることは付け加えておきたい。
α380では液晶が上下に稼働するチルト機構を搭載してるが、液晶を上向きにするローアングル撮影時には握り方を変え、親指でシャッターボタンを押すスタイルとした方が操作しやすい。そうした撮影スタイルを可能にしているのも、独特な形状をしたグリップを採用したためだ。既存一眼レフ製品のグリップデザインとシャッター位置は長年の時間をかけてそこへたどり着いたものであるが、「女性ユーザー」と「チルト液晶」この2要素を加味した製品してソニーが示した回答がこの形状なのだろう。
ここまではほぼ外装のみに触れてきたが、グリップひとつをとっても単純な「エントリー機」を指向していないことが垣間見えた。次回は操作インタフェースを確かめてみたいと思う。
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