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「CREAS 2 plus」で進化したソニー「BDZ-EX200」でバロック・オペラ「ジュリオ・チューザレ」に親しむ山本浩司の「アレを観るならぜひコレで! 」Vol.38(2/2 ページ)

» 2009年09月16日 10時23分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 スムージングAとクロマアップサンプリングAの“A”はアドバンスト(Advanced)のA。スムージングAは、カラーバンディング(疑似輪郭)の発生している領域の周辺を解析し、スムーズにつなぐ再構成技術。参照画素を約1万画素とケタはずれに多く採っているため、疑似輪郭がほとんど気にならない滑らかな階調を得ることができる。クロマアップサンプリングAも同様、タップ数を増やし参照画素を従来の10倍ほど多く採っているため、より正確なクロマ信号の復元が可能になった。BDZ-X100でエアチェックしたBD-RをBDZ-EX200で再生してみたが、画質の向上は誰の目にも明らか。暗部のディティールがより明瞭になり、色ギレがよくなることで、自分の視力が上がったかのような錯覚に陥る。うーん、BDレコーダーにもまだまだやることがあったんだなあと実感した。

 テレビ放送されるアニメを熱心にごらんになっている方は、アニメCGリマスターに注目だ。これは放送波に乗せられた映像信号に含まれる伝送ノイズを抑える回路。ノイズが発生している映像部分にノイズのない平坦部の情報をピックアップし、それを貼り付けて再構成するというもの。実際にデモ映像を見たが、その効果は明らかだった。

 また、自室で実際に画質をチェックしてみて、大きな感銘を受けたのは「モニター別画質プリセット」のチューニングの見事さだった。1.液晶テレビ(明るい部屋) 2.液晶テレビ(暗い部屋) 3.有機EL  4.プロジェクター 5.プラズマテレビというふうに接続されるディスプレイに合わせてソニーの画質エンジニアが5種類の画質モードを設定しているのだが、この味付けがじつにうまい。

 ぼくの部屋では、プラズマモニター(パイオニアのKRP-500M)とプロジェクター(ビクターのDLA-HD750)を使用しているが、漆黒の闇が表現できるプラズマの場合は、先述したクリアブラックを−2に設定して階調重視の画調に、またスクリーン大画面で観られるプロジェクターは、映像が甘く見えてしまうきらいがあるので、エンハンスを+3に設定するなど、ディスプレイの持ち味をじゅうぶん生かし、弱点を補うようなきめ細かな設定が施されているのである。

 そして、本機の「モニター別画質プリセット」を生かして観て大感激したのが、オペラのBD ROM「ジュリオ・チューザレ」である。

photo 歌劇「ジュリオ・チェーザレ」グラインドボーン音楽祭2005(輸入盤)は、クリエイティヴ・コアから7140円で販売中。日本語解説書付き

 本作は、ハイビジョン収録のBDオペラを積極的にリリースしている英国のレーベル「オーパス・アルテ」から今年の5月に発売されたソフト。収録は2005年8月、ブラックタイ着用のドレスコードがある英国グラインドボーン歌劇場である。ヘンデルが作曲したこの「ジュリオ・チューザレ」、紀元前1世紀、ローマの独裁者カエサル・シーザー(=ジュリオ・チューザレ)とエジプトの女王クレオパトラとの波乱に満ちた恋を描いたもの。

 なんといっても興味深いのが、デイヴィッド・マクヴィガーの斬新な演出。演奏は由緒正しきバロック・オペラという趣なのだが、LA育ちのダニエル・ドゥ・ニースにクレオパトラ役を充て、彼女のコケティッシュな魅力をじゅうぶんに引き出した、ちょっぴりエロティックでモダンな舞台に仕上げられている。スリランカ人の血を引く浅黒い肌のニースにインドのボリウッド映画もかくやのダンスをさせたり、ミニの黒いドレスでコメディエンヌふうの演技をさせたりと、もうやりたい放題。彼女も張りのある美しい声とキレのある動きでその演出に見事に応えている。

 牛のように体格のよい女性が朗々と声を響かせ、悲劇のヒロインを演じる荒唐無稽さについていけないという旧来のオペラのイメージにとらわれている方にこそ観ていただきたい、じつに楽しい作品なのである。

 EX200の「モニター別画質プリセット」をプラズマテレビに設定してKRP-500Mで観る本作の画質はとても素晴らしい。クレオパトラ役のニースが身にまとう装飾品のきらめき、衣裳のゴージャスさ、光が回りきらないステージ暗部の、HDカメラの増感ノイズの少なさなどに本機の14ビット高画質回路CREAS 2 plusの恩恵を実感した。

 また本機の音質が目が覚めるほどよい。BDZ-EX200はBDレコーダーで初めてHDMIセパレート出力を実現。オーディオ出力系専用クロック生成回路を搭載した「AV 独立ピュアモード」を搭載しているが、オーケストラのきめ細かな響き、ニースのよく伸びる美しい声を聴き、なるほど丁寧に音質チューニングしていることがよく分かった。

 また、本機のルックスのよさは、BDレコーダー随一といえるもので、4ミリ厚のアルミ天板とサイドパネルを設けたずっしりと重い2層構造の筐体には確かな安心感を覚える。

 性能はBDZ-EX200に勝るとも劣らないパナソニックDMR-BW970だが、そのオモチャチックなルックスで、見た目で大きくBDZ-EX200に負けていると思った。ぼくのメインのAVシステムに組み込むなら、音のよさと見た目のかっこよさで絶対BDZ-EX200だなと思う。

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