富士フイルムから登場した3Dデジカメ「FinePix REAL 3D W1」(以下、W1)。3D写真(以前はステレオ写真、あるいは立体写真と呼ばれていた)の理屈は簡単。人間の目にものが立体的に見えるのは、左目と右目それぞれで見た絵(左右の目は少し離れているので、両方の目に写る画像は少し違う)を脳内で合成してるからであり、3D写真もそれに合わせて、左目用の写真と右目用の写真を撮るのである。
以前、一眼レフ用のステレオ写真アダプタがペンタックスから出ていたが、あれは、レンズの前にミラーを置いて左右にほどよく分割し、1枚の写真に左目用と右目用の写真をとるという代物だった。
それをデジタル一眼レフにつけて撮った立体写真がこれ。こんな風に撮れる。平行法(右目で右の写真を、左目で左の写真を見る方法)で見るとカキワリのように立体にみえるはず。
立体写真自体の歴史は古く、最初に流行したのはなんと19世紀。1990年代にもランダムドットステレオグラムとともに立体写真が流行し、立体写真用レンズ付きフィルムが出ていたくらいだ。
あの頃のステレオ写真は上の例のように、左目用と右目用の写真をそれぞれ用意し、左の写真を左目で、右の写真で右目で見る(平行法)というものだった。一度コツをつかむと、写真がぐぐっと立体的に見えてくる感覚が楽しく、いろんな立体写真を撮って遊んだものだ。
で、21世紀になり、最新技術を使って登場したのがW1である。立体写真は、撮るのは比較的簡単だが、問題は見る方にあった。特殊なコツや装置なしでさっと楽しめるかどうかだ。
W1は見て分かるとおり、左右2つのレンズとCCDを持った3D写真用デジカメ。カメラユニットが2つ入っているのである。理屈はシンプルだが、実際には両者のユニットをまったく同一に仕上げる精度が必要だし、微妙な視差の調節も必要。見た目以上に大変な1台だ。
それぞれのカメラは3倍ズームレンズで1000万画素CCDとシンプルなもの。基本的に立体写真をとるためだが、モードを切り替えると、左右のレンズでズーム位置をかえたり、ISO感度を変えて2枚撮るというデュアル機ならではの技も持っている。
左右のレンズの間隔は77ミリ。人間の目の間隔(瞳と瞳の距離)がだいたい6〜7センチなので、ちょっと広めだ。広めの方が立体感は強く出るからだろう。また、レンズの向きは変わらないので、近距離(いわゆるマクロの距離)では立体写真は無理。3Dで撮るときは1メートル以上離れた被写体をメインにするのがいい。
で、W1がそれまでのステレオ写真と違うのは、背面の液晶モニター。これが3Dの秘密といって過言ではない。
「ライトディレクションコントロールシステム」なるものを採用したモニターで、「真正面」から見ると、左右の目にそれぞれに違う画像を投影し、液晶モニター上の写真がそのまま立体に見えるのだ。本当に近くのものは飛び出て見える。これは楽しい。視野角が狭いので正面から見ないとダメなのが残念だけど、うまく立体に見えた瞬間の楽しさは格別だ。
さらに、別売りの立体映像対応の液晶モニター「FinePix REAL 3D V1」と、立体写真プリントも用意した。従来のステレオ写真は、見る側にコツが必要だったり、専用のメガネが必要だったりしたが、誰でも簡単に立体写真を楽しめるシステムを投入してきたのが新しいのである。
W1は3Dの動画も撮れる。動画を長く見ていると目が疲れるけれども、短時間のビデオクリップなら3Dならではの面白い表現を楽しめるのだ。
これは面白い。
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