背面の円形十字キーの周りにはIXY DIGITALやPowerShotでお馴染みのコントローラーホイールがある。こちらはかなり残念。他モデルのホイールはクリック感のあり感覚的に操作しやすいが、S90のホイールはクリック感がないタイプなのだ。しかも普段は露出補正に割り当てられるので、気づかずに不用意に回してしまう可能性もある。なぜ他モデルと同様にクリック感のあるタイプとしなかったのかナゾである。
このリングとホイールは再生時にも便利に使える。もうひとつ凝っているのは内蔵ストロボ。ポップアップ式なのだが、しまうときも自動的なのだ。自動的に引っ込む様はちょっと面白い。
2番目は新開発の撮像素子。S90と同時発表された「PowerShot G11」(レビュー)と同じ1/1.7型の1000万画素CCDで、このサイズと画素数とはリコー「GR DIGITAL III」(レビュー)とも同じだ。
1/1.7型のハイエンドコンパクトデジカメ用CCDは、2008年秋の段階で1400万画素に達していた(「PowerShot G10」(以下、G10)がそれを搭載)が、あえて画素数を落として来たのである。その分、高感度特性が抜群によくなった。
G10とS90で撮り比べてみると、ISO400の時点ですでに差が出はじめ、ISO1600ではもう違いは明らか。高感度時の画質は1段以上違う。ISO800までは十分常用できるレベルだ。画像処理エンジンの違いもあるが、撮像素子の差もでかい。
3番目はレンズ。35ミリ換算28ミリ〜105ミリ相当の3.8倍ズームレンズで、明るさはF2.0〜F4.9。テレ側はちょっと暗いが、ワイド側でF2.0という明るさは素晴らしい。スナップをよく撮る人は、高感度時の特性向上とあいまって、昼から夜まで便利に使えるはずだ。
機能面では、動画がハイビジョンではないのが残念だが、キヤノンの2009年モデルが持つ、自動シーン認識機能のこだわりオートや、サーボAF、暗部補正を行う「i-コントラスト、顔検出などはすべて持っている。こだわりオートのヒット率は結構高いので、普段はオートで気軽に、細かくセッティングしたいときはプログラムやマニュアル露出を使って、と使い分けるのがよいだろう。
そういう意味では、このデザインが気に入った初心者が気軽に使ってもよい結果を得られるはずだ。S90はそんな気軽さと操作する楽しさの両方を併せ持つなかなか優れたハイエンドコンパクト機である。
だからして、小さくて高画質な広角ズームコンパクトが欲しい人へのおすすめ度は高い、というか、2009年秋の大本命かもしれない。デジタル一眼のサブ機としてもいい。多少画素数が少なくても、1/2.3インチCCDを搭載した普及機に比べると価格が高くても、それだけの価値はあろう。
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