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つややかな色が魅力のソニー「VPL-VW85」で観る「それでも恋するバルセロナ」山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.44(2/2 ページ)

» 2010年03月17日 11時00分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 この2つの映像モードに対して、ソニーのマスターモニターBVMの画調を目指したという「シネマ3」のデフォルト画質は、じつに安定していてどんな映像作品を再生しても間然するところがない。赤の発色が弱いなど気になるところがないではないが、ソースに応じてこの「シネマ3」のデフォルト画質をスタート地点にして、画質調整を施して自分の求める画調を得たいと思った。

 そう考えると、本機の懐の深い画質調整機能はじつにありがたい。とくに驚いたのが10パターンも用意されているガンマ補正機能。映像作品それぞれに階調表現に独自のクセがあるが、これだけのガンマ・パターンがあれば、作品に応じて自分の感覚にジャストフィットした、違和感のない階調感が表現できるパターンを選べると思う。

 また、カラースペースについても、sRGBに準拠した「ノーマル」、フィルムの色をターゲットにした「ワイド1」、デジタルシネマの色域に合わせた「ワイド2」、このプロジェクターで出せる色域すべて表示する「ワイド3」の4つが用意されており、あらゆるニーズに対応できる構えだ。実際にそのカラースペースを切り替えて色表現をチェックしてみたが、じつに面白かった。ソニーのうたい文句通りの色味の違いがリアルに実感できるからである。

アレン監督らしい軽妙かつシニカルなタッチ

 さて、この3月6日にWOWOWで放映されたウディ・アレン監督の「それでも恋するバルセロナ」(なかなかうまい邦題だ)をパナソニックのBDレコーダー「DMR-BW970」で録画して観たが、内容の面白さとともに画質がじつに素晴らしかった。そこで、BD-Rにダビングしたこの映画を本機で観てみることにした(本作のパッケージソフトはDVDで発売されている。ぜひBD ROMでも発売してほしい)。

photo 『それでも恋するバルセロナ』
DVD発売中/3990円(税込)
発売:アスミック
(C) 2008 Gravier Productions, Inc. and MediaProduccion, S.L.

 舞台は現代のスペイン、バルセロナ。この地を訪れた2人のアメリカ人女性の一夏のアヴァンチュールがアレン監督らしい軽妙かつシニカルなタッチでつづられた作品だ。アメリカ人女性を演じるのが、最近のアレン作品でおなじみのスカーレット・ヨハンソンとレベッカ・ホール(「フロストニクソン」)。二人の恋のお相手役、プレイボーイの画家ファン・アントニオを演じるのは、「ノーカントリー」のサイコキラー役が記憶に新しいハビエル・バルデムだ。

 前半はこの3人の恋愛模様が淡々とつづられるが、後半になって登場し、貫禄(かんろく)の演技で場をさらうのが、アントニオの元妻役のペネロペ・クルスである(第81回アカデミー助演女優賞を受賞)。前半は、じつによくできたスペイン観光映画としても楽しめるが、エキセントリックで情熱的な元妻を演じるペネロペの登場とともに、そんな長閑なムードは雲散霧消、映画は一気にスリリングに、面白くなるのだった。

 しかし、アレン自身が今いちばんのミューズ(女神)と言ってはばからなかったスカーレット・ヨハンソンに、かなり微妙な役柄をあてているのが、ぼくには興味深かった。才能なんかないくせに、自分は特別と信じきって“自分探し”を続けようとする愚かな女を演じさせているからである。それから、女たらしの快楽主義者のスペイン人、アントニオ(ハビエル、じつに楽しそうに演じている!)との対比で、スクエアなアングロサクソン的価値観に縛られたアメリカ人男性をコケにしているところが、ひねくれ者のアレンらしくて面白かった。

 スペインの陽光によって照射された映画のトーン・カラーは暖色系のオレンジ。それをバックに3人の美しい女性が描き出されるのだが、北欧人の血を引くと思われるスカーレットの抜けるように白い肌とブロンドの美しさを引き出し、そばかすがチャーミングなレベッカ・ホールとラテン美女のペネロペ、それぞれのスキントーンに違和感を抱くことなく、彼女たちの女っぷりのよさを味わえるようにVPL-VW85を調整してみよう。

 映像モードは「シネマ3」、それをベースに「ガンマ補正」を黒側階調の表現を重視しつつ、ローライトのトーンカーブを寝かせた「ガンマ6」とし、カラースペースをフィルムをターゲットにした「ワイド1」にすることで、ソニー製最新プロジェクターならではの、女優さんたちの美しさを十全に引き出せる画質が得られた。この調整値で観る本作は、まさに目のごちそう。AV趣味の醍醐味(だいごみ)だと思った。

 映像と対話しながら、じっくり映像調整を施してアレン作品に触れる喜び。浮ついた3Dブームに流されることなく、大人の映画ファンはこういうAVの王道的たのしみこそ大事にしてほしいと思う。

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