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3Dテレビの“鉄則” ソニー編麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/2 ページ)

» 2010年05月17日 09時01分 公開
[ 聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]
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photophoto HX900シリーズの画質を入念にチェックする麻倉氏

 先月取り上げたパナソニックのプラズマVIERAでは、3D対応のために緑の蛍光体を改善したり、サブフィールドの重みを変えたりしていましたが、液晶のクロストーク対策はもっと単純です。クロストークが出るときは画面を消せばいいのです。

 液晶パネルは、画面の上から順次描いていくため、その消し忘れが二重像(クロストーク)の原因になります。ソニーでは、240Hz駆動で画面を“2度描き”して、1度目はバックライトを消灯、2度目に点灯させることでクロストークを抑えています。またローカルディミングに関しては、エッジ型と直下型では、理論的にいって直下型のほうがより細かな制御が行えます。エッジ型ではコントロールが甘くなる可能性はありますね。

 HX900シリーズを見て驚いたのは、昨年10月の「CEATEC JAPAN」で見た試作機に比べて、すごく良くなっていたことです。あのときは、CCFLバックライトと120Hz駆動パネルの組み合わせで、フリッカー、(画面が)暗い、クロストークも多いという“3重苦”でした。それをLEDバックライトと4倍速駆動(240Hz)に変えたことで実用域に達しました。また、輝度についてもCEATECのときはメガネの光透過率がかなり悪かったのですが、今回はとても明るくなっています。

――画質面の課題はありますか?

麻倉氏: 画面のチラツキに関しては、まだ課題といえます。例えば24pの映画コンテンツに対しては、倍速となる48Hz処理を行いますが、まだ足りないのではないでしょうか。映画がフリッカー気味になってしまいます。これが72Hzや96Hzにすることができれば印象は変わってくるでしょう。

 また、3D視聴時には、4倍速パネル(240Hz)といっても2D時の倍速、4倍速のように疑似中間フレームは入りません。先ほど説明したように、同じ絵を2枚描き、最初の絵は混じるから(クロストークの原因)消灯する仕組みです。バックライトを消すので、実質的な黒挿入となりますが、クロストーク対策がメインで、(4倍速を生かした)動画ボケ対策とはいえません。いずれ8倍速(480Hz駆動)に進化して、動画ボケ対策とフリッカー対策、クロストーク対策に充てられると良いでしょう。ソニーにはまだまだ頑張ってもらいましょう。

 もう1つはメガネの傾きクロストークです。ソニーは環境光によるフリッカー対策、そして輝度向上策としてメガネから偏光膜を外しています(→見た目も美しいソニー“3Dブラビア”で観るリアルな奥行感)。これは、ソニーの開発者が試作機をある部屋に持っていったとき、実際にフリッカー出て、視聴者にストレスかかるのは良くないと判断して外したそうです。これには視聴時の画面輝度低下を防ぐ意味もあります。ただし、蛍光灯には強くなりましたが、顔を10度くらい傾けるとクロストークが出てしまう。3D映像の視聴は姿勢を保つのが基本ですが、やはり映画を1本見れば疲れてしまいますよね。問題といえば問題かもしれません。

photophoto 3Dメガネは偏光膜を外している(左)

 3Dメガネに関しては、パナソニック製品がメガネしている人を考慮して顔から少し離れる作りなのに対して、ソニーは顔に“はまる”感覚です。そのぶん、後ろの明かりなどがメガネに反射することは少ないのですが、“メガネをかけた”と強く意識してしまうことも否めませんね。

 というわけで、一部に気になるところはありますが、“3Dの映像再現としてはしっかり作ってきた”という印象です。また、HX900シリーズには、2D表示の画質的なアドバンテージもあります。

 さて、今後はソニーに続いてシャープや東芝からも液晶の3Dテレビが登場する予定です。中でもシャープは、3D表示時の輝度低下やクロストークに対して斬新なアプローチを発表しました(→4つの技術で“明るい”3Dテレビ、シャープが製品化へ)。同社の強みは、液晶パネルの研究開発から液晶テレビのアセンブリーまでを一貫して行える垂直統合モデルですが、3Dテレビでは、それが有効に働くはず。製品発表に期待しましょう。

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