これまでレンズ交換が可能なデジタルカメラといえば、ファインダーは光学式(OVF、Optical View Finder)であり、撮像素子の上に反射鏡を置いた「ミラーボックス」が必須とされていた。撮像素子に光を入射させる構造上、ミラーボックスの小型化には限界があり、それが小型化やコストダウンの足かせとなってきたとされる。
その状況を一変させたのが、電子式ファインダー(EVF、Electric View Finder)だ。撮像素子から取得した情報をファインダーにそのまま映すため、ミラーボックスは不要となり、大胆な小型化が可能になった。2008年9月発売のパナソニック「DMC-G1」を皮切りとした「ミラーレス一眼」は、レンズを交換できるという長所を残しつつ小型化を実現したことから、一気に人気カテゴリへと成長を遂げた。
一方のデジタルビデオカメラは、高倍率ズームレンズを搭載することが一般的なこともあり、レンズ交換のニーズは低いと考えられてきた。2001年発売のキヤノン「XL1S」など、レンズ交換可能なデジタルビデオカメラもこれまでに存在したが、一般消費者向けに発売されたことはない。
そこに到来したのが、前述したミラーレス一眼の波だ。レンズ交換式カメラは、メーカーによってレンズとボディーを接続する「レンズマウント」の規格が決められ、原則として同一規格のレンズにかぎり接続できる。どのマウント規格を採用するかは、将来にわたりメーカーが発売する製品に影響するため、重要な戦略といえる。
今回ソニーが発表した「NEX-VG10」も、メーカーのマウント規格に対する戦略と無関係ではない。ソニーが展開するミラーレス一眼のNEXシリーズには、新しい「Eマウント」が採用され、最初の製品である「NEX-3」と「NEX-5」が発表された時点からビデオカメラの発売も予告されていた(→ソニー、「Eマウント」のクリエイティブ指向ビデオカメラを秋発売)
ビデオカメラは、デジタル化される以前からEVFが広く採用されてきた。ここにきてデジタル一眼レフカメラにも同じEVFが採用されるようになったことで、デジタルカメラとデジタルビデオカメラの構造はより近づいたといえるだろう。例えば、同じEマウントを採用したNEX-3とNEX-5は、共通のCMOSセンサーを搭載するうえ、動画の撮影に対応するなどNEX-VG10と機能に重複が見られる。NEX-VG10にも、マニュアル操作が可能な静止画撮影モードが用意されるなど、デジタル一眼レフカメラ的な利用が可能になっている。
それだけに、メーカーには両者をどのように区分するか、適切な機能の配分が求められるといえる。実際、NEX-VG10には2種類の手ブレ補正機能のほか、高い指向性を備えたマイクなど、動画撮影に適した装備が用意される。消費者側も、動画と静止画のどちらを重視するか、十分な検討が必要だろう。
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