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「CEATEC JAPAN 2010」総括(2)、麻倉怜士的“CEATECベスト3”麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/4 ページ)

» 2010年10月21日 16時55分 公開
[聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]

InstaPort S

photo InstaPort Sのデモシステム

麻倉氏: 第2位は、CEATEC JAPANの展示会場ではなく、周辺のホテルなどクローズドな場所で見せていた新技術です。面白かったのは、まずシリコンイメージ。「InstaPort S」でHDMI入力の切替がさらに早くなります(→HDMIの“切替”がさらに早くなる「InstaPort S」)。

 HDMIには2つの流れがあります。1つはデジタル化というDVIからの流れ。もう1つは、信号の整理という意味の流れです。映像だけでなく、マルチチャンネル音声を伝送しようと思えば、9本(7.1ch+映像)もケーブルをつながなければなりませんから、それを1本でまかなえるHDMIは合理的です。

 ただ、最近のハイエンドBDレコーダーなどで採用されているAVセパレート出力は、すごく性能がいい。パナソニック「DMR-BWT3100」で試したところ、画質も音質もまったく違いました。映像はベールを1枚はいだようになります。音のほうはもっと分かりやすくて、映像の有無でAVアンプのボリュームを45度くらい動かさなければなりませんでした。利便性のもとにクオリティーが犠牲になっていたことがよく分かります。やはりHDMIには、AVセパレートの規格も必要ですね。とくに音声インタフェースに映像を皆無にすることが求められます。

DiiVA(ディーバ)

 “中国版HDMI”といわれる「DiiVA」(Digital Interactive Interface for Video & Audio)のコンソーシアムも、近隣のホテルにプライベートな展示スペースを設け、プロトタイプの機器でデモンストレーションを行いました。

 DiiVAは、シリコンイメージから分かれたシナジーチップ(Synerchip)と中国家電メーカーの団体である中国電子視像業界協会(CVIA:CHINA VIDEO INDUSTRY ASSOCIATION)が中心になって規格化しているもので、非圧縮のハイビジョン映像やマルチチャンネル音声を伝送できるのはもちろん、徹底的にホームネットワークを優先して考えられているのが特長です。デイジーチェーンで機器を直列につないでネットワークを組めます。

 昨年まではプロモーター企業が9社だったのですが、今年はソニーやサムスンなど3社加わりました。コントリビューターも9社から14社に増え、その中にはニコンや東芝といった日本のメーカーも含まれています。今後、中国市場が大きくなるので、「ひょっとしたらデファクトスタンダードになるかもしれない」と予想したのでしょう。ただ、現状では中国市場でもHDMIは必須になっていますから、そこにDiiVAをプラスできるのか、といった疑問は残ります。つまりそれだけのスペースがテレビの背面に残っているかということです。

DTS Neo:X

「DTS Neo:X」のデモシステム

 DTSの「DTS Neo:X」は、“ドルビープロロジックIIz対抗”といえるマトリックス技術です。5.1chもしくは7.1chのソースに対し、ワイドとハイトのスピーカーを加えた11.1chに拡張できます。

 今回は試作機を用いたデモでしたが、良いところ悪いところありました。良いところは、高さ方向の音場表現でリアリティーが出てくること。しかし、限られたリソースの中から新しいチャンネルを作るわけなので、1チャンネルあたりの音が、薄くなることは否めません。れはプロロジックIIzにもいえることですね。このような技術はユーザーの使い方次第。新しい挑戦としては多いに期待できると思います。

 昔はBDでもドルビーTrueHDを採用するタイトルが多かったのですが、今はDTS-HD MasterAudioのほうがひじょうに多くなっています。DTSは、DVD時代に“プレミアムコーデック”というイメージだったので、制作者もそれを使って差別化したいのでしょう。DTSにとっては追い風だと思いますし、ドルビーも頑張って欲しいと思います。

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