東芝は11月2日、デンマークのデザイナー、ティモシー・ヤコブ・イェンセン氏を迎えて記者会見を行った。REGZA冬モデルにおいて、東芝のインハウスデザインチームと協力して“REGZA”のスリムモデル「F1シリーズ」を手がけた同氏は、集まった報道関係者に自らのデザイン哲学を語った。
ティモシー・ヤコブ・イェンセン氏は、北欧を代表するデザイナーとして知られるヤコブ・イェンセン氏の息子であり、現在は父親とともにヤコブ・イェンセンブランドの中核として革新的なデザインを発信している。
笑顔で登場したイェンセン氏だが、デザインという仕事については「ハードワークだ」と話す。父親から受け継いだデザイン手法は、アイデアをすべて形にして、その1つ1つを何度も見直していくというもの。例えば25年前に作った製品では、1つのデザインを仕上げるまでに76回もモデル(模型)を作ったという。「毎朝、何が違うのかと考え続けた。モデルを作り、翌朝にはまた何が違うのかと問い直す。でも、77日目の朝に、何も直すところがないと気付いたんだ」。多数のモデルを作るうちに、光るディティールが出てくる。それができるまでにいくつものモデルが作られるが、それも決して無駄ではないという。
「例えば、トマトスープを作りたいとする。スーパーに行って買ってくれば早いことは分かっているが、われわれの方法はそうではない。市場にいって最高の食材や調味料を選び、手間暇かけて仕上げる。何かを作るのであれば、難しい方法を選ぶ。これがわれわれの仕事だ」(同氏)。
昨年、東芝から声をかけられたときは、うれしかったと語るイェンセン氏。「全く違う場所にある大きな会社(東芝)と小さな会社が協力したら何ができるのか、わくわくした」。その後、東芝から製品の概要を知らされ、5つのコンセプトを提出した。残念ながらその詳細は語られなかったが、1つ1つの要素、あるいは組み合わせてチューニングしていき、最終的に最高のものが出来上がったという。ちなみに、難しかった部分は「すべて」で、最も苦労したのは「時間的な制約だった」と話していた。
F1シリーズは、ムダをそぎ落としたスリムベゼルと、まるで画面が空中に浮いているようなフローティングスタンドが特長だ。ディスプレイの前面を強化ガラスが覆い、タッチパネルの採用によってスイッチやボタンも省略されたスタイルはあくまでもシンプル。「テレビは、コンテンツが映って初めて存在するもの」というイェンセン氏の考えが反映されているようだ。これは同時に、かねてより東芝が掲げている「スリムミニマルデザイン」にも通じる。
イェンセン氏と一緒に作業を進めた東芝デザインセンター、映像機器デザイン担当グループ長の広木慎一氏は、「お互いに刺激を受けながら、形にすることができた」と振り返る。インハウスデザイナーの活性化も狙ったという今回の協業は、両者によい刺激を与えたという。
なお、今回のイェンセン氏来日にあたっては、東芝側から「次のステップの話」という言葉も聞こえた。発売以来、売れ行きは好調というF1シリーズに続き、今後の製品でも両者のコラボレーションが期待できそうだ。
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