WiFiやBluetoothなど、われわれの身近な存在となっている無線通信規格。とかく「ワイヤレス」とひとくくりにされがちだが、無線LAN規格のうちIEEE802.11bは2.4GHz帯でIEEE802.11aは5.6GHz帯、などと使用される帯域が異なる場合もある。これは、周波数帯によって電波の特性が異なることが大きな理由だ。
一般的な傾向でいえば、周波数は低いほうが直進性は弱く、伝送容量は小さい。反対に周波数が高いと直進性は強くなり、伝送容量は大きくなる。
これまで「ミリ波」(EHF、Extra High Frequency)と呼ばれる30GHz〜300GHzの周波数帯は、扱いが難しく利用は進んでいなかったが、大容量データ通信の需要の高まりと長距離伝送技術の進歩、無線装置の小型化/低価格化を受け、今後が期待されている。なかでも注目は、世界的に免許不要で利用可能な「60GHz帯」だ。
WiGigは、ミリ波に属する60GHz帯を使用する無線通信規格。現行の無線LAN規格では難しい、7Gbps(理論値)という高い転送速度を実現できることが最大の特長。IntelやMicrosoft、Nokiaなどの企業で構成される「Wireless Gigabit Alliance」(WiGig Alliance)により、2009年12月には最初の規格となる「WiGig 1.0」が策定されている(関連記事)。
60GHz帯には、「WirelessHD」という無線通信規格もある。米SiBEAMが主導するこの規格は、HD品質の映像データを圧縮なしに伝送できる10〜28Gビット/秒という高速性により、ワイヤレスHDMIと目される存在だ(→関連記事)。
一般的に、WiGigはPC向け、WirelessHDはAV機器向けと認識されている。同じ60GHz帯を使用するワイヤレス通信規格なだけに、消費者の立場としてはどちらが優勢か気になるところだ。
今年7月にWiGig AllianceはWi-Fi Allianceとの提携を発表(→関連記事)、IEEE802.11a/b/g対応デバイスとの互換性を持たせる方針を打ち出した。さらに11月には、表示装置関連規格の標準化を担うVESAと、次世代ワイヤレス技術「Display Port」の実現に向けた共同開発を行うことも発表している。
しかし、チップメーカーであるSiBEAMは両規格に対応するICを開発するなど、必ずしも両規格は競合関係にあるわけではない。互いに補完しあう方向へと仕様が整備される可能性もあり、今後の動向に注目したい。
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